30 1月, 2013

エマニュエル・ムホーによる「巣鴨信用金庫 江古田支店」

 エマニュエル・ムホー (emmanuelle moureaux architecture + designによる東京の「巣鴨信用金庫 江古田支店」のプレス内覧会に行ってきました。場所は西武池袋線江古田駅から数分の場所。

敷地面積574m2、建築面積405m2、延床面積566m2。鉄骨造2階建て。既存店の建て替えで昨年の年末にオープンした。
エマニュエルさんが手掛けた巣鴨信金は4店舗目。うち最初の一つはインテリアやサインを担当し、建築設計全てを手掛けたのは今回で3店舗目。

今回のテーマは「レインボーシャワー」。一貫して色と光が溢れる「まったく新しい銀行の姿」を見せてくれている。

シリーズを通して街並みに楽しくなるような色を提供。銀行には必ずある大きな看板がないのも特徴で、ファサードそのものが看板の役割をする。

狭い歩道に接する敷地は2mほどセットバックし、街に余裕も提供している。
ステンレス製のパイプの高さは約9m。エマニュエルさんはスティックと呼び、他の作品でも重要なファクターにしている。

 エントランスの自動ドアを入るが、そこは庇がついただけの外空間で、奥に伸びる中庭に連続する。 

 中に入ると複雑に反射する光と影が踊る。

 中庭を横切るようにフリースペースへ。

 中庭にはスティックと呼応するように竹が植えられている。

 フリースペースは天井高約7.3mの吹き抜け。信用金庫の一支店でこの贅沢な空間は異例だろう。
巣鴨信金の理事長は「1秒でも長く居たくなる信用金庫」を唱えている。そのため通常待合コーナーと呼ばれるこういった場所は、巣鴨信金では「フリースペース」と呼ぶ。
因みにガラス面には電動のロールスクリーンが備わっている。

銀行と言えば閉鎖的で、中では職員と対峙するような独特の緊張感があるが、ここにそれはない。表通りからカラースティック、フリースペース、中庭+竹、と窓口との間にはいくつもの干渉エリアがある。

応接室。

2階。融資のコーナーや、事務スペース。


  
何も知らずにここを見たら銀行とはまず分からないだろう。
巣鴨信金の他の記事 >>志村支店 >>常盤台支店

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28 1月, 2013

メジロスタジオによるベトナム料理店「ECODA HEM」

メジロスタジオによるベトナム料理の店舗「ECODA HEM」 (江古田 ヘム) 。江古田駅南口の商店街の一角に1月17日オープン。

一見すると工事現場に設置されたアコーディオンフェンスとプレハブに見える。

HEMとはベトナム語で "路地" の意味。路地に佇む屋台をイメージしている。 

 屋台は3つありそれぞれ「麺の店」、「米の店」、「カフェ&つまみ」になっている。

 屋台同士は小さな通路で繋がってるので、実はどの屋台でも3つの屋台の物が注文できる。

 実際ベトナムでは屋台街で食事をすると別の屋台の物を注文できるそうで、屋台同士は後で売上を精算し合うのだとか。

こちらは「麺の店」。内装はRooviceによる。

「米の店」。一つの屋台に6〜7人が着席できる。

 筆者が注文した「牛肉入りフォー」。(男性には少なめか)

 そして「カフェ&つまみ」の屋台。 


 敷地奥のトイレ。

 

 夏にはオープンスペースにテーブルを出してビヤガーデンにする予定だそうだ。

お店の情報はこちらの写真で。東京都練馬区旭丘1-74-9。3軒隣のベトナム料理「Mai Mai」の姉妹店。

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24 1月, 2013

黒崎敏によるソウルの住宅「SBD 25」

黒崎敏 / APOLLO ( Satoshi Kurosaki / Apollo Architects & Associates) による韓国はソウルの住宅「SBD25」。

 敷地面積372m2、建築面積110m2、延床面積212m2。RC造地下1階、地上2階建て。
場所はソウル郊外の城北洞(ソンブクドン)。古くからの屋敷や各国の大使館や公邸なども並ぶ高級住宅地。
 敷地はかなりの傾斜地で、奥から手前に向けてすぼまる三角形をしている。正面を向いた開口は北東向き。

 北側のエントランスから1階と2階を見上げる。建ぺい率は30%、容積率60%とかなり厳しいので、傾斜地を活かし敷地をほぼ全面地下化した。

 反対の南東側から。

 エントランスを入ると出迎えてくれるのは韓国人アーティストBAE SE HWAによるウォルナットのベンチ。

 左を向くと大きなドライエリアと1階の庭に繋がる階段。左側には水回り、メイド室、ジムへと続く。地階には他に4台が収まるガレージがある。

 ドライエリアからの階段を上がって庭へ。韓国伝統のアンマダン(中庭)のように表現した。


 1階LDK。施主は北欧ヴィンテージファニチャーを扱う実業家。それらの家具やオーダーメイドの家具とを融合、かつデリケートな仕事を求められたため今回黒崎さんに声がかかった。

 また今後、複数の建築家住宅を展開することで城北洞周辺の住環境の底上げを行うことも託されているそうだ。
ちなみに手前は韓国人デザイナーBAHK JONGSUNによるダイニングセット。

 メインキッチンとその後ろにはセカンドキッチン、トイレが納まる。さらに奥は戸で仕切られベッドルーム、クローク、浴室などのプライベートゾーンになる。


2階へ。右下にはエントランス周りの空間が覗く。

 階段を上がって奥まで行き振り返る。15mほどもあるトップライトから左のゲストルーム(2部屋)に光が入るよう、ハイサイドウィンドウに向かって梁が斜めに架けられている。

 ゲストルーム。

 ゲストルームが並ぶ廊下を抜けるとファミリールームからは城北洞の街並みが一望できる。(photo: Masao Nishikawa)

 この螺旋階段は1階のプライベートゾーンとダイレクトに繋がる。

 西側の角にも屋外螺旋階段が。地下から屋上のルーフガーデンまでを繋ぐ。

夕景ではホテルのロビーのような空間が見える。
「この家ではアーティストやデザイナーによる家具や現代美術が並ぶため、その背景となる建築空間に求められたのは、作品を受け止めるためのニュートラルな意匠や心地よい余白。時を経ても生活や周辺環境の変化に順応できる物質としての強度と包容力が必要だと思います。」と黒崎敏さん

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18 1月, 2013

ヴェネチア・ビエンナーレ帰国展「ここに、建築は、可能か」レポート

1月18日よりTOTOギャラリー・間で開催される「ここに、建築は、可能か 第13回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 日本館帰国展 -Architecture. Possible here? "Home-for-All"」の内覧会に行ってきました。

2012年、ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展にて「金獅子賞」を受賞した展示を日本で再現。

 コミッショナー伊東豊雄さん (Toyo Ito) の呼びかけにより集まった作家は、写真家畠山直哉さん (Naoya Hatakeyama) と、若手建築家3人=乾久美子さん (Kumiko Inui)、藤本壮介さん (Sou Fujimoto)、平田晃久さん (Akihisa Hirata)。

 津波被害を受けた陸前高田に地域コミュニティの拠点となる「みんなの家」を作ることを媒介に「ここに、建築は、可能か」という建築本来の姿を問う。
「みんなの家」が生まれるプロセスが、模型、映像、写真を通して追うことが出来る。


津波による塩害を受けた杉の丸太が陸前高田より運ばれ、模型と共に会場を埋めている。


 壁面には畠山直哉さんが撮影した、津波によって何も無くなった陸前高田の"街並み"が大パノラマ写真で中庭まで続く。
中庭にはみんなの家を模した構造物とパノラマ写真により現場の光景を疑似体験できる。

 上階の展示室では被災地を記録した畠山さんの写真を見ることができる。畠山さんは陸前高田出身で実家や肉親も亡くされている。


下階に戻り模型を少し紹介。
3人の建築家はそれぞれ模型を持ち寄り話し合いを重ねていった。会場の手前から初期のアイデア、奥に行くに従って最終型に近づく様子が見られる。
当初全く意見がまとまらず、プロジェクトはできないのではという不安があったそうだ。

 初期には、3人の個性がよく見て取れるアイデアが並ぶ。こちらは乾さん。

 藤本さん。

 平田さん。


 模型の下には各アイデアのポイントがコメントされている。

 徐々に意見やアイデアがまとまっていく。

 「みんなの家」最終型。

 上から見ると19本もの丸太が使われているのが分かる。
「『ここに、建築は、可能か』という問いかけに対してみんなの家の形は重要ではない。それよりもそのプログラムやプロセスが重要で、これからの建築はそうあるべきではないかと思う。」と伊藤さん


 左は、みんなの家管理人の菅原きみ子さん。伊藤さんは「菅原さんに出会ったことでこのプロジェクトは完成した。」
「今回被災地の復興に関して建築家は組み込まれていないという現実がある。それは私にも責任がある。この展覧会を通じて建築家ができることを知ってもらい、建築家の社会的立場を取り戻したい。ここにいる3人の建築家を始め若い建築家にぜひ社会の役に立つ建築家になって欲しい。」と強く語った。
乾さん「始めこのプロジェクトの重みに押しつぶされそうになった。大きな経験をしたが建築とは何なのかと聞かれればまだ分からない。」
藤本さん「建築のはじまりとはこういうことなのか、という起源をみたようだ。プロジェクトの始まった1年半前の自分がよく思い出せなくなるような経験をした。」
平田さん「自分の建築感が揺さぶられた。今まで、ある投げ掛けに対して建築家が答えてきたが、投げかけのない建築を初めて体験した。」

TOTO出版より1月22日に発売される「ここに、建築は、可能か」。プロジェクトのプロセスが詳細に記されている。
またヴェネチアでの展示の様子はコチラから

【ここに、建築は、可能か 第13回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 日本館帰国展】
会期:2013年1月18日〜3月23日
場所:TOTOギャラリー・間

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