24 2月, 2014

浅利幸男による吉祥寺の集合住宅「朱合院」

浅利幸男 (Yukio Asari / Love Architecture) による吉祥寺の集合住宅「朱合院」のオープンハウスに行ってきました。(2013年12月)

 建築面積146m2、延床面積515m2。RC造地下1階、地上3階建て。地下にテナント2店舗、住は12戸からなる。南側は交通量の多い、井の頭通りに面している。

 二面接道で北側にもエントランスがある。朱のファサードは煉瓦で所々透かし積みされており、中からはどのように見えるか楽しみだ。


 左の二層吹き抜けは地階の店舗へのエントランスで、右のガラス引戸は住へ。


 入ると中はZ字型の通路と吹き抜け。アジアの繁華街の裏路地に迷い込んだような雰囲気だ。


 見上げると幾つもの渡り廊下(?)が掛かっている。



 通路はそのまま南側まで抜けられるので、今度は住部分へ上がってみる。


 階段を登りながら横を見ると渡り廊下ではなく各室から突き出たバルコニーだと分かった。 


 201。南北に面するこの部屋は両面に透かし積みがされている。収納、キッチン、水回りで部屋を二つに分けている。


 202。北側の部屋はしっとりとした光。右側の扉からバルコニーへ出られる。


各部屋にはオリジナルの照明が設置されている。シェードのガラスにはあえて不純物を取り除かないようにし、赤味や、青味掛かっていたりそれぞれ固有の色を持っている。写真は下の方がピンクになっているのが分かる。


 外壁に使用した煉瓦はこの建物の為に多治見で焼いた。ご覧のように色味は均一にならないようにしてもらい表情が豊かになっている。
「竣工のタイミングで一番キレイなのではなく、時代を生き抜いていくような、きっちり残っていくよう素材を大切にしている。」と浅利さん。

 301。201の上の部屋だが、機能を片側に寄せ一直線のレイアウト(奥は広くなっている)。


 バルコニーにはスレートが張られている。


 住部分への経路を、単なる経路ではなく住の一部として組み込んだ。


 店舗と住の関わり方を検討したという浅利さん。「建ぺい率の問題を吹き抜けを利用し、うまく関わりを持たせることができた。」


 304。南側は冬には部屋の奥まで透かし積みの光が届く。 


 吉祥寺の喧噪をシャットアウトし非日常を演出した。




 303。中心に機能を集約させたコの字型レイアウト。 


 水回りはまるで万華鏡のようだ。 


 303のバルコニーから見下ろす。


浅利幸男さん。「リゾートの雰囲気の集合住宅をということで依頼されました。リゾートは非日常です、ここでは非日常的な雰囲気に設計しました。吉祥寺のノイズを遮りながら、完全に外部との関わりをなくすというのではなく、所々眺望や光という取り込みの操作をしました。」

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21 2月, 2014

前見文徳による東銀座の「cafe634」

前見文徳 / 前見建築計画による東銀座にオープンした「cafe634」(カフェムサシ)を見学してきました。

 場所は東銀座の一角のオフィス、ギャラリー、喫茶店などもあるエリア。そこにcafe634は隠れ家のように立ち現れている。


 S造、地上3階建て。もともと印刷所として使われていたビルの1階部分のみを改装してカフェを営業していたが、今回建物全体をカフェダイニングとして建替えた。


 切り文字のロゴも前見建築計画でデザインした。
今まで女性客が多かったそうだが、男性客も増やしたいという思いもあり、黒色を取り入れて力強いイメージに。

 1階。テイクアウトできるカフェスペース。
右の壁には12mあるメニューや様々な情報を発信する「黒板壁」。左にはホワイトアッシュ材の作り付けテーブル。

 テーブルの上にはオーナー支給のペンダントライトが吊り下がる。
隣地はコインパーキングでもともと開口していなかったが、今回は自然光を取り込めるようにと8mの水平窓を視線が交錯しない高さで設けた。

 カウンターはオーナーと厳選した栗材を前板のナラ材はオーナー自らがコーヒーの煮汁で染めている。


 エントランス方向を振返る。扉は外側に開け放すとブラックボードと面一になる。


 トイレもブラックボードになっているのでサインはチョークで描いてある。


 階段を上がってメインのダイニングである2階へ。


 上がりきったところに厨房。


 振り返ると、天井高5.6mの吹抜けにより外観からは想像できないほどの開放感が生まれている。今回依頼を受けた際の一番の条件は、この2層分の吹抜け空間だった。


 ハイサイドライトで密集地の立地を感じさせない明るさを確保。


 梁のロックウール吹付け(アスベストではない)、デッキプレート、配管など。"見せる配管"は美しくなるよう職人さんと検討を重ねた。吹き抜け部分3階に見える窓はオフィス兼多目的空間。


 3階から。向かいの窓越しに見えるのはルーフテラス。左壁面の中のキャットウォークでつながっている。今後菜園として活用するそうだ。


左からオーナーの児玉さん、前見文徳さん、カフェスタッフの女性2名。
「こだわりのある食材や上質なコーヒー豆を提供するというお店のコンセプトと、店舗デザインの素材感を重ねあわせた。材料と材料が正直にぶつかるのを、正直にデザインしました」と前見さん。


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12 2月, 2014

菅原大輔による自邸「時の流れる家」

菅原大輔 (Daisuke Sugawara / SUGAWARADAISUKE) による自邸「時の流れる家」を見学してきました。場所は東京の調布市。

 敷地面積100m2、建築面積39m2、延床面積76m2。木造2階建て。


 ファサードは鉄板ではなくパンメタルの鉄仕上げ、事前に拝見した写真では黒かったが、大雪の後一気にレンダリング通りの錆色になった。


 ファサードの半分はエキスパンドメタルで半透明なボリュームを形作っている。このエキスパンドは防錆されていないので徐々に茶色になっていく予定。 


 敷地は法定建ぺい率40%と厳しい。ダイアグラムのように切り妻のヴォリュームを半分に割ってスライドさせることで東西に庭ができる。その庭と建物が重なる部分を内・外の中間領域としている。


 敷地全体には砕石が敷いてある。
実はこの住宅は親世帯との二世帯住宅。建物としては一つだが空間的にはセパレート出来るようになっている。

 砕石はそのまま玄関、室内を抜け東側の庭まで連続しており、敷地の対角を見通すことができる。



 玄関を入ると共有部の土間。内と外の中間領域だ。左のドアは予備室で国内外の下宿人が三世帯目として利用できることを想定している。その右が洗濯機置き場の扉。


 ここでは今後事務所主催のパーティーなども開催する予定とか。


 浴室からは東側の庭にヤマボウシが見える。


 子世帯の部屋は6畳程で、折れ戸を開けるとミニキッチンが現れる。普段はこの部屋と1階の共有部で生活するそうだ。
建具はシナ合板、床はバーチ材。天井高は2.1m、背の高い菅原さんが入るとさらにコンパクトに感じる。

 シンプルな暮らしをする菅原さんは翌日の引越にあたって、ご自身の物は衣類とダンボール箱4つだとか!


 東側の庭から見ると先に見た西側とほぼ同じデザイン。


 庭に張られたエキスパンドメタルは鉄骨を挟んで2枚張りで、目を縦横に使い星形に見える。外側のエキスパンドは防錆をしていないが、内側は白で塗装されている。


 渾身(?)の階段は、土間の空気感を邪魔しないように極力軽く抜けて見えるようにデザインした。


 2階では撮影中ですがお邪魔します。


 振り返ると外、庭、土間、吹き抜け、2階それぞれが軽快に繋がっているのが分かる。


 2階リビング・ダイニングは共用部。右がキッチンとトイレ。



 階段を上がった向こうが親世帯の部屋。セパレートする意味でも別なカギが付く。



 キッチンにはトップライトが設けてある。ハシゴを掛けて屋上にも出られ、夏には調布の花火も望めるそうだ。


菅原大輔さん。「 『時の流れる家』とは経年と気候による外観の変化、そして季節の移ろいによって変わる住み手の居場所の変化、さらに親との二世帯から始まり、将来的に私が家族を持ち住み手が増えたり減ったりしていきながら内部空間の使われ方が変化していく住宅です。」

設計: SUGAWARADAISUKE (担当: 菅原大輔、上赤坂典幸)


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