30 5月, 2014

新国立競技場基本設計案の画像と概要

独立行政法人日本スポーツ振興センター の「国立競技場将来構想有識者会議(第5回)」において新国立競技場 基本設計(案)が発表された。
その資料の画像やテキストを一部抜粋して掲載します。

スケッチは日建設計・梓設計・日本設計・アラップ設計共同体による作成

新国立競技場 基本設計の基本方針
 ①大規模な国際競技大会の開催が実現できるスタジアム 
・国家プロジェクトとして、世界に誇れ、世界が憧れる次世代型スタジアムを目指す 
・アスリートやアーティストのベストパフォーマンスを引き出す高性能なスタジアムを目指す 

②観客の誰もが安心して楽しめるスタジアム 
・世界水準のホスピタリティ機能を備えたスタジアムを目指す 
・開閉式の屋根や、ラグビー、サッカー及び陸上いずれの競技の開催においても、競技者と観 客に一体感が生まれる観覧席を備えた、快適で臨場感あふれるスタジアムを目指す 

③年間を通してにぎわいのあるスタジアム 
・コンサート等の文化的利用を楽しめる工夫が施され、特に音響に配慮された多機能型スタジ アムを目指す 
・各種大会や文化利活用がない時でも気軽に楽しめる商業・文化等の機能を備えたスタジア ムを目指す 

④人と環境にやさしいスタジアム 
・最先端の環境技術を備え、緑あふれる周辺環境と調和するスタジアムを目指す 
・震災等の災害発生時にも安全で、避難・救援等に貢献できるスタジアムを目指す 
・スタジアム内外及び周辺駅からのバリアフリーに配慮されたスタジアムを目指す 



基本設計での検討と本書の位置づけ 
基本設計では、フレームワーク設計(2013年6月~12月)に引き続きザハ・ハディド・アーキテクツのデザイン監修の下、フレームワーク設計において定めた条件を踏まえた具体的な建築計画を検討し、とりまとめた。 



 スタジアムの特徴 
■先端技術を駆使した芝生育成システム 
フィールド面では芝生の育成のため、南側の固定屋根部分を透明材にする。さらに日射量や、通風を補うため、グローイングライト(芝生促成用照明)、大型送風機の使用に加え、ピッチ内部には地中温度制御システムや、土壌空気交換システムも設置し、芝生育成に適した環境を整える。 

■臨場感を高める伸縮型可動スタンド 
フィールドと観客との距離を近づけることのできる伸縮型可動スタンドを採用し、イベント時の臨場感を高める。伸縮型可動スタンドを引き出すことで、8万席の観客席を確保する。 

■観客の快適性を高めるスタンド空調 
夏季における熱中症対策として観客席エリアを対象として居住域空調を行う。 
水の気化熱(自然エネルギー)を積極的に利用した、間接気化冷却空調機を採用する。 

■世界水準のホスピタリティ施設 
VIP席、プレミアム席、観戦ボックスおよびそれに付随するラウンジ・レストラン等の充実した、世界レベルのホスピタリティ施設を設ける。 

■施設利用率を高める開閉式遮音装置(屋根) 
施設の利用率を上げるために、開閉式遮音装置(屋根)を採用する。 
開閉式遮音装置(屋根)を閉じることで、周辺への伝搬音を軽減する。 

■商業文化施設 
秩父宮記念スポーツ博物館・図書館、地域住民も利用可能なトレーニングセンターを併設。スポーツ文化の普及に寄与する。 
コンベンション事業やツーリズム事業等、多様な事業展開により、イベント開催していない時の施設の有効利用を図る。 

■安全性の高い免震構造スタジアム 
免震構造を採用することで、安全・安心な大規模空間を実現する。 

■環境配慮 
高効率機器の導入や自然換気利用、雨水利用等の環境対策を行う。 

■ユニバーサルデザイン 
パラリンピック開催に対応し、車椅子席(120席)を確保するとともに、高齢者や外国人にも配慮したユニバーサルデザインを導入する。 


歩行者アクセス 
東京都都市計画決定に基づいて、歩行者ネットワークを強化するために、東京体育館と建物敷地を結ぶ歩行者デッキ1号と、南側の都立公園予定地と建築敷地を結ぶ歩行者デッキ2号を整備する。これらの歩行者デッキから建物敷地までバリアフリー対応を行い、主動線としてスムーズにアクセスできる計画とする。  


立体都市公園とその他の公共空地の確保、高さ、壁面後退の条件 
東京都都市計画決定に基づいて、立体都市公園、その他の公共空地を確保する計画とした。


※その他、施設計画、構造計画、基本設計図、完成予想図、機能別諸室規模一覧表、の各案の詳細がこちらのページより全資料のダウンロードが可能です。
http://www.jpnsport.go.jp/newstadium//tabid/411/Default.aspx


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26 5月, 2014

石上純也、中村竜治、トラフ、豊田啓介らが参加の「竹尾ペーパーショウ」レポート

5月25日から6月1日まで開催の「竹尾ペーパーショウ 2014」の内覧会に行ってきました。
1965年よりはじまり47回目の今年は、2011年以来の開催で、企画・構成には原研哉/日本デザインセンター原デザイン研究所が10年ぶりに担当した。
[TAKEO PAPER SHOW 2014]

 今年のテーマは “SUBTOLE” =サトル 。 かすかな、ほんのわずかなといった意味。
“Creation” と “Collection” 大きく2部構成になっている。

 Creation会場に入るとモノトーンの空間と、薄く繊細な展示台に、多領域から招かれた15組のクリエイターの作品が並ぶ。


  “紙の肖像” 上田義彦(写真家)撮影による、竹尾の紙の写真が壁面に。


 “ひとつながりの糸” トラフ建築設計事務所


 “てまり” という紙を使い、紙にすき込まれた糸が紙の中では自由曲線を描き、外へ開放されると直線的な幾何学模様を描きながら、対極的な領域を1本の糸が繊細なストーリーを表現している。


 禿真哉さん(左)と、鈴野浩一さん。


  “コントロール” 中村竜治(建築家)


 紙は曖昧なディテールを許容してくれる性質があるが、それを厳密にコントロールすると紙らしさはなくなっていくのだろうか、そしてそれを構造物に見立てるとどんな風景が生まれるのかという試み。
極細のリング状に切り抜いた紙を交差させながら立ち上げてある。組み立てには3週間ほど要したそうだ。

 中村竜治さん。


 “スプリング” 石上純也(建築家)


 小さな新芽が大地に顔を出している日常の風景を白い紙の模型に。遠目には何もないように見えるが近づくと無数の新芽が見えてくる。
わずか5mmの高さの「新芽」を、幅1.5mの紙にいくつかのパターンで帯状に切り抜き、それを12,000枚重ねてある。

 “I HATE U / I LOVE U” 色部義昭(グラフィックデザイナー)


 “I HATE U” は大体見えるが、“I LOVE U” は紙裏側の反射を利用しうっすらと見えるのがお分かりだろうか(上の写真)。


 “紙・人・紙” 寄藤文平(アートディレクター)


 “紙の飛行体” 三澤遙(デザイナー) 
最近は高精細なレーザーカッターで繊細な造形が可能だ。

 “紙を貫こうとする石、あるいはそうさせまいとする紙” 葛西薫(アートディレクター) 


 “チョコレートの帽子” 原研哉(グラフィックデザイナー) 


 半透明の物体が半透明の影を落としている。作品の直径は3cm程だ。


 原研哉さん。夢で見たイメージを忘れないようにスケッチしておいたものたち。通常そういったものは実現しないが、微細なレーザーカット技術の進歩で実現した。



 繊細な作品が並ぶ今回のペーパーショウでは美術品を見るような姿の観覧者が印象的だ。


 “Collection” では紙による現象を、ものや作例を通して、紙が担ってきた価値を共有できる展示内容。


 特別なマカロンケーキのためのパッケージ。


 角砂糖の包み紙。などなど...


 “Tone of Gravity”、“舌本”、“紙岩/paper reef” は豊田啓介/noiz architectsによる、竹尾の新商品を使った作品。


 ここ3年の間に発売された新商品を実際に手にとって、1冊のカタログにできるコーナー。


各紙には趣向を凝らした仕掛がしてあるので是非1冊持ち帰っていただきたい。

【竹尾ペーパーショウ 2014】
会期:2014年5月25日(火)〜 6月1日(日)
場所:TOLOT/heuristic SHINONOME(トロット/ヒューリスティック東雲)
詳細:www.takeopapershow.com
 

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21 5月, 2014

廣部剛司による住宅「L → i(L to i)」

廣部剛司  (Takeshi Hirobe Architects) による東京・調布市の住宅「L → i(L to i)」のオープンハウスに行ってきました。[L to i by Takeshi Hirobe]

 敷地面積87m2、建築面積57m2、延床面積133m2。鉄骨造3階建て。建て替えによる親子二世帯住宅。
敷地は都市計画道路に面し、将来的に道路拡幅の対象になっているため計画予定線が敷地のほぼ中央を走る。だが道路拡幅はいつ施工されるか分からないので、計画部分を取り壊しの必要に迫られても良いような設計にした。

 親世帯はここでそば屋を営んでいたが建て替えを機に引退した。しかしまたいつでも小さなそば屋ができるように計画予定線にかかる部分を平屋にし、店舗への改修が可能になるようにした。
1階のグレーチング右側が子世帯の玄関、左側くぐり扉(見学時扉は未施工)からは親世帯への玄関へ。


 前庭にアオダモが植わる親世帯側から入ってみる。


 入ると飲食店とも、家庭のダイニングとも取れる雰囲気。厨房も以前使っていた業務用機器が納まり、いつでもそば屋が再開できそうだ。しばらくはダイニングとして日々の食事や、家族・友人が集まる場として使用する。


 右側は土間から小上がりで居室に。寝室も兼ねるので引戸で仕切ることができる。


 反対側を見ると、入ってきた玄関とその左から子世帯の玄関へ通じている。


 ここに人々が集う様子が想像できる。


 2階・3階の子世帯へ上がる階段室。手摺には船舶用ロープを使用。


 2階はリビング、ダイニング、キッチンがコンパクトにまとまる。

 階段室と並行しキッチン。右奥は物干し用の小さなバルコニー。右手前の丸パイプは料理中に腰掛けることもできる。

 水回りはリビング・ダイニングを挟んだ反対側。


 約12畳あるルーフバルコニー


 建物のボリュームと比べアンバランスともいえる広さのバルコニーだが、計画道路部分を有効活用するために生まれた空間だ。


 3階主寝室・子供室。低い家具は可動式で子供の成長に合わせてレイアウトできる。左の引戸内はクローゼット。窓際には机が作り付けられている。


 寝室反対側。


廣部剛司さん。「 “ L ” と “ i ”は建物の断面形状で、現状といつか訪れるかもしれない計画道路施工後の姿です。何十年後かに平屋部分がなくなったとしても、残った1階はテナントとして使う等、長期的に起こる街や家族の変遷、それらを緩やかに許容し柔軟に対応していく建築として設計しました。」


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