27 5月, 2015

成瀬・猪熊建築設計による住宅「スプリットハウス」

成瀬・猪熊建築設計事務所による東京の住宅「スプリットハウス」を見学してきました。
[Split House / Naruse Inokuma Architects]

 敷地面積122m2、建築面積53m2、延床面積105m2。木造2階建て。
旗竿敷地に雁行しながら伸びるアプローチ。3方に隣家が迫るが、奥の西側は小学校・幼稚園があるので開けている。


 玄関前には大きな庇を出し、自転車置き場などに利用できる。


 玄関を入るといきなりLDKが広がり、頭上を覆うように階段がレイアウトされている。左には納戸とトイレ。


 LDK。天井高を3.1mまで上げ、ハイサイドライトを全周させることで3方を囲まれた旗竿敷地にありながら十分な光量を得ている。床は一面モルタル仕上げで床暖房が備わる。 


 中央には客間として使う和室と右に書斎、天井が持ち上げられた雰囲気がよく分かる。 


成熊事務所でデザインした大きめのダイニングテーブル。
ペンダントライトはフランス・ツェツェの陶器製。施主が用意した。



 ソファは家族が集まったり寛ぐ場所。テレビはここには置かないそうだ。


 柱にボルトが見えるが、外周の柱を二重に立てて固定しているため。


 別の角度から。右の表しになっている柱は2階を支え、壁の中にもう1本入っている柱が壁やサッシュを支えている。それによりハイサイドライトのサッシュが柱に干渉せずに外観ですっきりと見える。


 和室は三畳。上部は隣の書斎とガラスで仕切られている。ここでも柱の外側にサッシュがあるのが確認出来る。


 軸組のアップ。柱、梁、筋交を全て同じ太さの材で組んだ。
1階の明かりはスポットライトを天井に向けて間接照明に。

 2階へ上がる階段で振り返ると、架構が枝を伸ばす樹木のように見える。


 ハンモックスペースと呼ぶ2階。ここにハンモックを吊したりテレビを置く予定。
スキップで上がる2.5階へは、このハンモックスペースに切り込みを入れて作ったような開口で、シーンの切り替えができるようになっている。


 しゃがむと2.5階が浮いているように見える。
階段にはグラインダーの削り跡をそのままにクリア塗装してある。全体的に仕上げすぎない仕上げに。

 2階ハンモックスペースを見返す。施主は自宅でも仕事をするため1階には人の出入りが多い。そのため1階はオープンでパブリックなエリアで、2.5階はプライベートなエリア。それらの切り替えをする緩衝帯のようにこのハンモックスペースは作用する。


 2.5階はがらりと色が変わり、5人家族共用のオープンクローゼットを中心に、個室が3つ、そして水回りが配される。


 家具、建具、壁、天井はラワン合板でラフなデザイン。


 子ども室。1階で見えた外周側の柱はこちらの個室でも表しになっている。




「隣家の迫る旗竿敷地という不利な条件を、1階の天井高を上げ全周をハイサイドライトにすることで、光と開放感を得られるようにしました。結果水平力を受けるためのブレースが表れ、単純な校正ながら森のような空間へ変質させました。」と猪熊さん、担当の大田さん。

【関連記事】
成瀬猪熊建築設計によるイノベーションセンター「KOIL」
15組の建築家による「新しい建築の楽しさ 2013」展レポート



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25 5月, 2015

グエナエル・ニコラ作品集「CURIOSITY ESSENCE」出版記念レセプション

グエナエル・ニコラ/キュリオシティ  (Gwenael Nicolas / Curiosityの作品集「CURIOSITY ESSENCE」がロフトパブリケーションズから刊行。出版を記念したレセプションに出席してきました。

場所は代官山T-SITE ANJIN。


作品集は、20年以上過ごしてきた日本からニコラさんが学んだデザインのエッセンスとなる6つの考え方(LIGHT&SHADOWS、CHOREOGRAPHY、RYTHM、SEI/DO、CRARTSMANSHIP、PAST&FUTURE)を作品を通じて紹介する内容となっている。


写真メインでプロジェクトの説明は少なめ。Louis Vuitton、Fendi、Berluti、Nissan、Lexus、Sony等との仕事も網羅した一冊。約1年半掛けて出版するに至った。


今回の出版に合わせ、オリジナル香水その名も"CURIOSITY ESSENCE"が発表された。
檜、ベルガモット、和菓子、緑茶、シナモンなどをブレンドした香りで本と同じ考えのもとにデザインされている。
浮遊しているかのような一滴(一瞬)を表現したボトルは、菅原工芸硝子が手吹きで制作したため一つずつ微妙に形が異なる。
香水発表はニコラさんにとって12年ぶり2度目となる。


会場ではキュリオシティTシャツを着たスタッフがフラグランスセットを持って回り、そこかしこで甘い香りが漂っていた。


桐箱に入れて販売される香水は1個2万円、300本限定。

ディスプレイされた香水の後ろに映るのは友人のビジュアルデザインスタジオWOWがこの日の為に手掛けたという香水のコンセプト映像。


香りが持つ和のイメージと、キュリオシティの削ぎ落とされたデザインや抽象的な世界観をベースに制作された。


グエナエル・ニコラさん
「作品集は普通過去をまとめたものになるけれど、これは "僕らのこれからを示すもの" という意識で作りました。本を通じて日本人に大切なものを思い出してもらい、そして海外へは日本の奥深さをわかりやすく伝えることが出来ればと思います。香水を作ることはデザイナーとして重要視しています。例えばこの作品集を読むには1日かかるけれど、香りは一秒で伝わりますからね。」


【関連記事】
グエナル・ニコラによる会場デザイン「TOKYO DESIGNERS WEEK 2010」レポート




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18 5月, 2015

新国立競技場 "当初は" 屋根なし・規模縮小で建設

2020年東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場は、計画していた開閉式屋根、80,000人収容という規模を見直して建設することが発表された。
一部を仮設スタンドとして収容人数をまかない、オリンピック後に50,000人規模へ縮小できるようにするという。
また工期が間に合わないことから'19年ラグビー・ワールドカップ、'20年のオリンピックの時点では屋根を設けず、"大会開催後" に設置する計画。


下村文科相は舛添知事に対して、建設費用1,692億円のうち周辺整備にかかる500億円の負担を要請したが、舛添知事は建築資材の高騰などで整備費用が膨らむことが予想されることから、「協力は惜しまないが、競技場の建設には不明な点が多い、もっと都民や国民に情報開示をしてほしい。」と情報公開を求めた。

《関連記事》
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磯崎新による意見書「ザハ・ハディド案の取り扱いについて」全文
槇文彦、内藤廣らが登壇 シンポジウム「新国立競技場の議論から東京を考える」レポート
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安藤忠雄のコメントや質疑応答/新国立競技場計画に関する説明会
新国立競技場基本設計案の画像と概要
新国立競技場コンペ審査委員 内藤廣のコメント全文
宮台真司が新国立競技場について東京新聞に寄稿した記事の全文
文部科学大臣、都知事らに提出された「新国立競技場に関する要望書」の全文
槇文彦「新国立競技場案を神宮外苑の歴史的文脈の中で考える」シンポジウム レポート
槇文彦の建築夜話
新国立競技場ザハ・ハディド案が最優秀案に選ばれる



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岸本和彦による辻堂の住宅「House-H」

岸本和彦/acaa (Kazuhiko Kishimoto / acaaによる辻堂の住宅「House-H」のオープンハウスに行ってきました。JR東海道線の藤沢駅と辻堂駅の中間で〈湘南T-SITE〉に近い住宅地。 (>>湘南T-SITE取材記事
60代夫婦の住まいで「岸本さんにお願いするならこんな敷地がいいですよね。」と依頼された。

 敷地面積122m2、建築面積35m2、延床面積93m2。木造2階建て。
正方形の傾斜地に対して立方体の建物を少し回転させ、2階の対角が東西を向くように配置した。そして東西にはコーナー窓を設け内部空間が貫通するようになっている。

 敷地の周囲は国有の売地で、美しい雑木林になっており今のところ非常に恵まれた環境だが、いつどのように変化するか分からない。


 敷地裏手より。2階西側にもコーナー窓が設けてある。
1階・2階のガルバリウム鋼板が張られた部分は居室を拡張してある。できるだけコンパクトなマッスで設計を進めるなか「もう少し部屋を広く」という施主の要望に応えたためで、内部ではこの突き出した部分を効果的に活用している。


 玄関から見るとホールが対面外部まで見通せるが、隣家があるためツバキが受け止める。


 見上げると2階までのボイドで、水平・垂直に空間が抜けている。


 玄関ホールの一直線の抜けは光沢のあるタイルで仕上げ、それを挟むように左右は床の仕上げも変え、黒いレイヤーを立てることでその抜けを強調しているのが分かる。
左奥は水回り。


 半地下の納戸へ降りる階段室の片面には大きな書棚。


 玄関横の障子を開けると寝室。右手前には床の間をイメージした腰掛け。


 寝室。紺色の和紙壁紙が貼られているのが外に突き出した部分。出幅の分上部にトップライトを設け表情が豊かになっている。


 床のタイル、障子の組子、書棚の棚寸法は全て同じ。


 浴室の奥から勝手口のように物干しテラスへ出られる。また、海から帰ってきてそのまま浴室へ入れることができる。


 2階へ上がって振り返る。
左下の斜めの壁が玄関ホールの角度で、上部の黒い壁が45度回転した東西を貫く2階の抜けの角度。


 (筆者のカメラの限界で撮った)東西のコーナー窓。北側のコーナーにはキッチンが納まる。


 西側を見る。この季節(5月)には太陽の昇り・沈みが良く見え、夕日が水平に対角を照らすそうだ。


 東側を見る。右の壁に見える開口は、上からエアコン、AVラック、吹き抜け。壁の裏側は和室。


 吹き抜けの見下ろし。


 和室の突き出し部分も寝室と同様に仕上げてある。


 和室奥から。


 トップライトを見上げると梁が見える。白い内側の壁と青い外側の壁を構造的に一つに繋ぐためだ。


キッチンの開口は1階階段室と同じような形状。


北側の角に納まるためホームベース型だ。


岸本和彦さん。「ここは熟年夫妻の終の棲家です。コンパクトで慎ましやか、法定建蔽いっぱいの建物は全く不要です。しかしコンパクトだからといって窮屈にならないように抜けを大切にしました。それにより夫婦のつかず離れずの心地良い距離感が保てるようになると思います。」


【関連記事】


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