29 3月, 2017

nendoによる会場構成「草月創流90周年記念 勅使河原茜 個展 – HANA SO」

佐藤オオキ率いるnendoが会場デザインを手がけた、草月創流90周年を記念した第四代家元 勅使河原茜の個展「HANA SO」のプレスプレビューに行って来ました。

 会場は丹下健三の設計による草月会館1階の草月プラザ。イサム・ノグチが手がけた壇状の石庭「天国」全体を花器に見立てた展示だ。


 石庭を覆うのはnendoがデザインした "鏡のツタ"。周りの風景を写し込み、生けられた花の色や輪郭を乱反射させ、万華鏡のような視覚効果を生み出しながら現実と虚像をつくりあげる。


 テーマのひとつは丹下建築、イサム・ノグチ作品との融合。


 鏡のツタと花の間を散策するように歩くことができる。


 石庭最上部からの眺めは圧巻。


 "鏡のツタ”。平行四辺形が連なった形状に切り抜かれた0.5mm厚の鏡面仕上げのステンレス板42パターン(大29、小13)約2,150個をひとつひとつに折り目をつけながらツタのうねりを表現した。




 会場の模型を特別に見せていただいた。最も苦心したのはパターンを決めることだったという。シャープ感を残しつつも有機的な植物が生えているようにするため何度も検討を重ね、最終的に角を丸めた平行四辺形にたどり着いた。


 もうひとつの模型。ツタに番号が振られており、実際の配置を予め詳細に決めていったことが分かる。9日間かけて会場に設置した。


 "鏡のツタ” は、石庭を完全に覆い隠すのではなく見え隠れするようにあしらった。花はツタの隙間に生けられ、照明で浮き上がって見えるように演出されている。

 展覧会のタイトル「HANA SO」には、”放そう”、”話そう”、”花成そう”など、あらゆる規制から自由になり、コミュニケーションを育み、植物を用いて自由に創造するという思いが込められている。

今回プレスプレビューでお披露目されたのは、プロローグとして生けられた桜やレンギョウなどほんの一部。本格的ないけばなの空間が完成するのは展示が始まる4月5日からとなる。

 草月会館2階、nendoが手がけたconnel coffee(コーネル コーヒー)は、この幻想的な世界をゆっくり観賞することが出来る特等席だ。


 勅使河原茜さんと佐藤オオキさん

「草月会館はnendoのオフィスがあるため日々いるわけですが、ここは周辺の緑や車が映り込み不思議と外にいるような感覚になります。今回それをミラーで積極的に取り入れて、プロダクトをつくるように空間を作っていきました。また、通常会場デザインはあらかじめ決まっている展示作品を活かすための空間を考えることがほとんどですが、本展示では空間からインスピレーションを得て花をいける、という家元の提案のもと真逆のプロセスから生まれました」と佐藤さん。

「佐藤さんとのコラボレーションによって、かつてないいけばな空間が誕生するのではないかと感じています」と 勅使河原さん。

この他にも、2階談話室、5階・日本間では、小山登美夫ギャラリー所属の6名のアーティストとの作品と花の共演「勅使河原茜と現代アートのコラボレーション」展が開催される。(招待作家:大野智史、大宮エリー、菅 木志雄、日高理恵子、廣瀬智央、山本桂輔)

草月創流90周年記念 勅使河原茜個展「HANA SO」
会期:2017年4月5日~ 10日
会場:草月会館
会場構成:nendo  協力:onndo
詳細:www.sogetsu.or.jp/event/2016/2017451090_hana_so.html



**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. 
Copyright: japan-architects.com


26 3月, 2017

石井秀樹による自邸「雪ノ下の家」

石井秀樹(石井秀樹建築設計事務所)による鎌倉の自邸「雪ノ下の家」を見学してきました。鶴岡八幡宮を囲む小山に通る路地を少し登った場所。

 敷地面積:154m2、建築面積:56m2、延床面積:95m2。S造、2階建て。
敷地境界から1m、道路境界から1.5mそれぞれセットバックを求められる風致地区で、そこに納まる一辺6.9mの正方形平面となっている。

 焼杉が張られた閉じ気味な1階のボリュームと、その上に4面をガラスで囲われた開放的な2階。そして基礎から立ち上がる8本の鉄製丸パイプが方形屋根を支持している。


 南面の玄関前から坂道を回り込むと西面を望むことができた。2階は軒がかなり低く設定されているのが分かるだろうか。また手前にせり出しているのはデッキではなく、竹簾を掛けた日除けだ。


 玄関へ。丸パイプは躯体へも接合されていることが確認できる。


 玄関を入ると1階は黒い箱型のコアを配した回遊型の平面。敷き瓦張りの玄関から二段降りた寝室スペースはかなり光量が抑えられた空間。


 寝室の奥から。石井夫妻お気に入りの本が並ぶ書棚。


 東面の小さな開口から入る光が漆喰の壁を柔らかく照らしている。


 コアの中はウォークインクローゼット兼納戸のほか、、、



設備やトイレなども納まる。手洗いにはダイソンの水栓一体のハンドドライヤーが。


 トイレの向かいには浴室スペース。掘り下げられ十和田石できた浴槽。


 浴槽からの眺めはこのように。冒頭で見えた竹簾はこのためだ。初夏には眼前の植物が青々としてくるそうだ。


 浴 “室” ではないので “沐浴場” と呼んでいる。



 2階へ。


 「こうなっているのか!」としばし独特の空間に身を委ねた。


 4面全周ガラスと方形屋根に包まれるワンルーム。キッチン一体のカウンターテーブル、ダイニングテーブル、ソファとローテーブルがレイアウトされている。



隣家も見えるが、1.6mまで下げた低い軒が絶妙に視線を遮っている。

(たまにしか通らないが)近隣住民も通る路地は敷地を囲むように勾配になっているため、こちらも視線が気にならない。
なお開口にはFIGLAの発熱ガラスを採用している。

 

もちろんロールカーテンも備わっている。

 キッチン側は、冷蔵庫や換気扇など、飛び出す要素を徹底的に排除。
軒の高さに合わせダイニングテーブルと椅子は低めにセッティング。

 ソファに腰を沈めると借景である鎌倉の緑と、モミジが季節毎に味わいを変えてくれ、鎌倉の空気にすっぽりと包まれる感じなのだが、写真や文章ではこの感覚が伝えられないのが非常にもどかしい。
観光バスや観光客のざわめきがぴたっとおさまり、時間も止まったような環境だ。

 1辺が6.9m(壁芯)とコンパクトな平面なのだが、方形の天井が曖昧な高さ感を生み出し、広がりを感じさせるのだ。照明は小さなLEDがいくつか埋め込まれ、夜には星座のように見えるだろう。


 石井秀樹さん。「設計において空間は、発明するのではなく発見したいといつも考えています。この自邸では敷地の空気感を自分の身体でじっくりと感じながら、丘陵地であるこの地の特徴を読み取り、ここにあるべき空間を発見できたのではないかと思っています。」


【雪ノ下の家】
・建築設計:石井秀樹/石井秀樹建築設計事務所
・構造設計:大賀建築構造設計事務所
・施工:恒栄ホーム

**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. 
Copyright: japan-architects.com

17 3月, 2017

円錐会「初出展01」、横浜国立大学「卒業設計展」、「都市イノベーション学府展」レポート

3月17日~19日まで横浜のBankART Studio NYKで開催の「初出展01」、横浜国立大学「卒業設計展」、「都市イノベーション学府展 – 横浜大改造計画」に行ってきました。
学部、大学院、プロの3ステージの建築模型を同時に見られる機会だ。

 「初出展01」とは、円錐会(横浜国大建築学教室およびY-GSAに関わる設計・意匠系出身者を中心としたOB会)30組による初めて発表されるプロジェクトのみによる建築模型展。


 未発表作品の模型を見ながら皆で批評や議論することで、そのプロジェクトのみならず建築や、都市を考えるきっかけとする。或いは進行中のプロジェクトを第三者から客観的な意見や感想をもらい、新しい思考を誘発する場でもある。

 会場構成を担当したのは松井さやか(松井さやか建築設計事務所/Y-GSA設計助手)による。
広く天井も高い空間に力強い柱、そして一方向から差し込む自然光といったこの空間に逆らわず、空間に溶け込むように浮遊する模型が現れるようにした。透明な素材で一方から入る光によって会場に影が出ないような配慮。

 展示台はポリカの波板をうねらせながら、ワイヤーで固定しただけの簡易なものだが。時間によって異なる光の色を映し込みながらオーロラのように反射している。


 展示作品は入口近くが1番で、卒業・修了年順に並んでおり、建築家の年代によって表現がどのように異なるか見て取ることができるだろうか。会場ではハンドアウトを見ながら閲覧できる。


 一角にプロジェクターがスタンバイしており、最終日3月19日17:30から出展者によるプレゼンとシンポジウムが開催。特別コメンテーターに野沢正光と宮晶子が招かれ、熱い議論が繰り広げられる予定だ。
出展者:IVolli architecture(永田賢一郎・原﨑寛明・北林さなえ)
    芦沢啓治
    石川卓磨
    伊藤暁
    乾彰宏
    垣内崇佳
    Studio YY(田中裕一・中本剛志)
    Soi(大和田栄一郎・井上湖奈美)
    髙橋一平
    ツバメアーキテクツ(山道拓人・千葉元生・西川日満里・石榑督和)
    tomito architecture(伊藤孝仁・冨永美保)
    TORAFU ARCHITECTS(鈴野浩一、禿真哉)
    遠山之寛
    中永勇司
    中川エリカ
    中原潤平(積水ハウス)
    野口直人
    西田司
    PERSIMMON HILLS architects(柿木佑介・廣岡周平)
    藤原徹平
    久山幸成(クライン ダイサム アーキテクツ)
    ビルディングランドスケープ(山代悟・西澤高男)
    KEIKO+MANABU(内山敬子・沢瀬学)
    保坂猛
    堀直樹+安田朋子建築設計事務所
    矢野建築設計事務所(矢野雄司・矢野泰司)
    山縣武史
    山路哲生
    吉村寿博
    403architecture [dajiba](彌田徹・辻琢磨・橋本健史)



フロアのもう半分は横浜国立大学建築EP卒業設計展「nomadic exhibition」が同時開催だ。


「ノマディック」と銘打たれているが、横浜の街にある5会場を19作品が遊牧民のように、ローテーションで会場を移動しながら展示するからだそうだ。写真が作品を “遊牧” させる為の箱で街ゆく人に展覧会をアピールしながら、建築模型と街を繋ぎながら横浜の魅力を再発見してもらう試み。



 上階で開催の「横浜国立大学 都市イノベーション学府展 – 横浜大改造計画」

都市イノベーション学府とはY-GSAなど6コースを含む横国大学院研究科目のひとつ。文理を横断したコース全体が同じテーマで参加する展示ということだ。

 そのうちの「Y-GSA展」
4スタジオ毎に展示されており、雰囲気のみお伝えする。



 ご存じY-GSA教員ラインナップ。


 Y-GSAスタジオ発表会。


 片隅に "KOJIMA WORDS” なるボードが。「小嶋一浩 小さな矢印の群れ 小嶋さんから頂いた最も印象的な一言を書いて下さい」とある。昨年10月に急逝した小嶋一浩氏の印象的な言葉が貼られている。


 「あなたの好きなようにやっていいよ:安原幹」、「これ建つの?:藤本壮介」や、、、


 「人の発表聞かないやつ、単位没収!:田井幹夫」、「まあ、大学でできる事も割とあるよ:平田晃久」、、、



【初出展01】

【都市イノベーション学府展 – 横浜大改造計画】


**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. 
Copyright: japan-architects.com