廣部剛司さん (Takeshi Hirobe Architects) による別荘「Villa SSK」の内覧会に行ってきました。南房総の海岸に面し、250m程離れた敷地には2008年の作品「海辺のシェルハウス」があり、そちらも同時に見学することができた。
「Villa SSK」。敷地面積854m2、建築面積79m2、延床面積105m2。木造2階建て。敷地に対してとてもゆったりと建てられている。
庭は芝生と砂利のツートンに。建物は3つのヴォリュームになっている。
海側から見ると背後には岩山が迫る。この山と海をつなぐのが建物のテーマ。
エントランスアプローチを中心に右がガレージ、左がゲストルーム、奥が母屋。
エントランスを入ると中庭には水盤が。水を抜いて愛犬のドッグランにもできる。
アプローチ脇の雨水溝。砂利止めの石に細かい仕事を発見。
母屋に入ると正面には海。
吹き抜けのリビングを振り返ると山。
海と山がトンネル状の空間で繋がっているのが分かる。それを可能にしているのがこのWTP (壁式木質厚板構造) +木造立体トラス構造。
2階から見るとこのように。3ピン立体トラスアーチとLVL (単板積層材) の壁構造 (2階を支えている) を組み合わせることで、約8mのスパンにも関わらず垂直方向の壁をほとんど設けずにこのトンネル状空間を可能にしている。
2階の下、ダイニング・キッチンから見る。中央にあるグレーペンミラー部分がLVLの壁構造。
天井の結合部分。左右からの梁は3本ずつが棟木に向かって複雑な大工仕事によって収束しているのがお分かりになるだろうか。梁の角度が左右で異なるため、棟木もそれに合わせ変形の五角形断面に。
2階に見える列柱構造の中は浴室。景色を眺めながら、かつ周囲からの視線を遮るには2階にもっていくしかない。
窓の外にはキャンティレバーの水盤。リビングからソファーに座って見ると芝を遮り海と連続した眺めが得られる。
2階への階段、ここにもトラス構造。
浴室では列柱のトンネルがプライベート感を演出。海を独り占めできる空間。(海が真っ白に写ってしまい残念...)
振り返ると山。
せっかくのトンネンルに換気扇が見えては興ざめ。列柱とアクリル板に隙間を設け換気扇で吸い出しをするというこだわり。
浴室の隣はベッドルーム。 トラスの結合部は特注の金具で固定。
ここでようやく海がお見せできる。前庭もかなり広く取ってある。
ゲストルーム。ガレージも同様の構造。
続いて数分歩いて同じ海岸に建つ「海辺のシェルハウス」へ。「Villa SSK」の施主はやはりこちらを見て廣部さんに依頼したそうだ。
こちらも別荘だが、施主は都心から毎週のように訪れるので手入れが行き届いている。
8等分したホールケーキを3片だけ切り取ったような形。
Villa SSKと似た空間の断面だが、構造は全く異なる。5角形の断面を持つドーナツ状の形態、それだけであれば強い構造になり得るが一方が大きく開けている。それを建物として成立させるように構造的にチャレンジした作品。詳細は廣部さんのHPへ。
すばらしい景色を確保しながら、隣接する海水浴場や住宅、釣り人からの視線を遮るために導かれた形状。
廣部剛司さん(Villa SSKにて)。「時間をかけてこの場所の読み込みをしていくうちに、いつの間にかこの形態になりました。設計中はいくつもの検討と選択を重ねていきましたが、出来上がってみるとまるで何かに『つくらされた』ような不思議な感じがします。」
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