15 12月, 2015

廣部剛司による目黒区の住宅「Gray ravine」

廣部剛司 (Takeshi Hirobe Architectsが手掛けた目黒区上目黒の住宅「Gray ravine(グレー・ラヴィーン)」の内覧会に行って来ました。

敷地面積79m2、建築面積47m2、延床面積87m2。木造2階建て。
外観は主張せず、周辺環境に馴染むようなグレー。

エントランスの扉を開けると、左に緩やかにカーブする壁面、そして奥の坪庭に連続する階段室が現れた。この階段室は、採光は勿論のこと、空間的な広がりや動線、空気の流れ、家族の繋がりなど様々な要件を、厳しい敷地条件の中で試行錯誤の末導かれたもの。


カーブした壁は、必要な寸法を調停するためでもあり、また外光をバウンドさせながら淡いグレーの壁に柔らかな陰影をつくり出す装置でもある。
この住宅では外壁、内壁、坪庭の壁、階段室などほぼグレーにしており、素材やものの振る舞いに合わせて微妙に濃度を変えている。


階段室は東西に抜け、日の光を敏感に映し出す「外部」に見立て、各居室はその「外部」に開くように面する。
この構成を考えたとき、かつて廣部さんが訪れたアメリカの世界遺産、渓谷の集落遺跡「メサ・ヴェルデ」を思い出したそうで、そこで名付けたのが「Gray ravine=グレーの峡谷」ということだ。


LDKの床レベルは36cmほど下げた。北側斜線の影響を受ける左側の天井高を取る目的でもあるが、同時に自然に座る場所となり、居場所ができた。
「こういった居場所が絶対的な空間の小ささを補完してくれます。」と廣部さん。

段差は境界の役割も果たす。間に見える耐力壁が丁度サッシュを隠してくれることもあり、坪庭から連続する階段室を不思議と屋外のように感じさせ、空間の広がりを生み出す。

リビング・ダイニングの壁沿いの段差は、手前側がダイニングのベンチとして機能し、そのまま延長された奥側でTV台として兼務する。

リビング・ダイニングの奥から。
天井のライティングは星空のよう。一見ランダムに見えるが、ソファー、ダイニングテーブルが置かれる位置の真上にくるよう計算されている。

坪庭にはヤマボウシが植わる。見上げると庭に面して様々な性格の開口が面しているのが分かる。
左下は浴室。


水回りもグレーのグラデーション。


浴室からはヤマボウシと、プライベートな空が望める。


2階から表情豊かな階段室を見る。右側が書斎、左側は寝室など。


書斎側にはトイレと奥に納戸も備わる。


書斎は一面が書棚。蔵書家のクライアントのために可能なかぎり書棚を設えた。


見上げるとグレーチング越しのロフトまで書棚が続く。


ロフト階。法定で可能な開口を設け、読書ができる籠もりスペースもある。右の開口は階段室に通じる。


階段室の見下ろし。まさに渓谷のようだ。


寝室側へ。手前から子供室、ウォークインクローゼット、主寝室へと続く。
床はカバの無垢材。

子供室は柱と長押だけを設えた軽めの間仕切りで、子どもの気配を感じられるように。
お子さんが二人いるので将来は分割も可能。

壁に合わせてカーブした書棚。


ウォークインクローゼットから。


主寝室。トイレと主寝室には有彩色でアクセントを付けた。奥のビンテージ照明は施主が用意したもの。

廣部剛司さん。路地を挟んで隣の家にいるように見える。
「グレーの空間は、見かけ上の光とは違う光で満たされています。そこに人が入り、大切にしているモノが置かれ、、としていくうちに、その光を受け止め、柔らかさが出てくるだろうと思っています」

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