01 4月, 2016

建築コンペの仕掛け人 新井久敏講演会&勇退記念パーティー

代官山蔦屋書店で開催された新井久敏による講演会と、氏の群馬県庁勇退記念パーティーに行ってきましたのでその様子をお伝えします。
まずは新井久敏さんのプロフィールを紹介。
'79年より群馬県庁職員。建築確認、営繕、自然環境、高崎市出向など建築行政に携わる傍ら、公務とは別に十数年前から群馬県内の公共建築設計コンペを企画支援。「上信越高原国立公園鹿沢園地自然学習歩道施設」で2007年日本建築学会賞( 業績)、2009年度土木学会デザイン賞優秀賞を受賞。2016年群馬県高崎土木事務所次長を勇退。

 講演会のテーマは「僕がコンペをする理由」。モデレーターには橋本純さん。
入札が一般的で、一番低い金額を見積しただけで設計を手掛られるという、公共建築事業に疑問を抱き、群馬県内で25件もの建築設計コンペを仕掛け、数々の名作が生まれる機会をつくった。
その為非常に多くの建築家と親交があり、新井さんが仕掛けたコンペで作品が発表できたことで、その後の建築家人生が大きく変わったひとも少なくない。

 講演の内容は、
 官公庁施設の設計業務でコンペ・プロポーザルによる設計者の選定は、都道府県・政令都市で21%。市町村ではわずか7.5%に留まり、依然として入札による選定が大半を占めている。」といった実態の説明や、
 「(入札による選定よりも、良いものができるのに)なぜ自治体はコンペをしないのか?」といった数々の理由。
 ほかに、コンペの仕掛け方や仕組み、審査委員の立て方、問題点や裏話など多岐に渡り、会場を埋めた多くの設計関係者はメモを取りながら聞き入っていた。


 新井さんはコンペを仕掛けるといっても県庁職員としての仕事ではなく、あくまでも休日や時間外でのボランティア活動だ。
群馬県庁にはそのような部署もなければ、県内の市町村のコンペを支援する業務など存在しないのだ。
「 『余計なことをするな』、『建築家が係わると面倒だ』、予算内に収まっているのに『高そうに見える』」などと怒られたりすることも多々あったという。

 当初より新井さんへの助言や、コンペの審査委員を務めてきた中川武さんや、古谷誠章さんからも解説があった。


 講演会後は場所を移し勇退記念パーティーが開催された。
パーティーの発起人は中川武、内藤廣、石田敏明、渡辺真理、古谷誠章、妹島和世、橋本純たちだ。



 司会進行をつとめるのは群馬県高崎に事務所を構える生物建築舎の藤野高志さん。
自身 “新井コンペ” で二度ファイナリストまでいった。

(photo: Ikimono Architects)

 (photo: Ikimono Architects)


 (photo: Ikimono Architects)


 この日はご夫人とご息女も訪れ、新井さんに花束を贈られた。
「休みの日も殆ど家に居ないで全国を飛び回っていました。こんなに多くの方に祝ってもらえるようなことをしているとは思わなかった。」と驚きと喜びの奥さま。


 会場のギャラリースペースには新井さんが数十年前に撮ったという写真が展示されていた。


 展示作品は記念に綴じられたフォトブック「遙かなる煙の記憶」として出席者に配られた。
日本の風景に溶け込む蒸気機関車の写真。全て中高生の時に撮影したものというから驚きだ。

県庁職員のサインに並ぶ建築家たちという画がほかにあるだろうか(!)

新井さんは一度県庁を定年退職したものの、春から群馬県富岡土木事務所の再任用職員と、NPO法人GSデザイン会議に籍を置く。引退はまだまだ先のようだ。
(photo: Ikimono Architects)

【コンペ一覧】  
2012 富岡市新庁舎, 2011 沼田市生方記念文庫, 2011 上州富岡駅舎, 2010 前橋市美術館(アーツ前橋), 2010 共愛学園前橋国際大学4 号館( 共愛コモンズ), 2010 元総社県営住宅, 2010 精神医療センター医療観察法病棟, 2009 敷島公園バスターミナル, 2009 中央児童相談所, 2009 農業技術センター, 2008 道の駅よしおか温泉, 2008 赤城森林公園施設整備, 2008 ぐんま総合情報センター, 2007 さくらの里施設整備, 2006 高崎市桜山小学校, 2003 平標山の家, 2003 安中環境アートフォーラム, 2003 鬼石町多目的ホール, 2002 邑楽町庁舎+多目的施設, 2001 富弘美術館, 2000 中里村庁舎, 2000 吉井町庁舎, 2000 鹿沢園地自然学習施設整備, 1999 万座公衆トイレ, 1998 妙義山公衆トイレ

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