26 7月, 2016

IKDSによる横浜の「シードビル」

國分昭子+池田靖史/IKDSによる横浜の「シードビル」を見学してきました。東急東横線 大倉山駅から数分の場所。1階に「野のすみれクリニック リハビリテーション科」、2〜3階に横浜市障害者グループホームが入る。
このような、知的障がい者の共同生活援助を行うホームに筆者は初めて訪問したが、求められるプログラムが通常のシェアハウスとは異なるので非常に勉強になった。

 敷地面積130m2、建築面積96m2、延床面積269m2。鉄骨造3階建て。
ホームには例えば養護学校を卒業し、その後働いたり、作業所に通われるような方々が、実家を出てここで暮らす、といったかたちだ。2〜3階の各開口部分が概ね入居者の個室で、外壁の色や仕上げを変えながら、その部分が住戸(=我が家)に感じられるような意匠になっている。そして各部屋共に小さいながらも必ずバルコニーに面するように計画され、外部との接触面を設けている。

 入居者は街の一員としてそれぞれのレベルに応じた社会生活が求められるし、街もこのホームを受け入れる。この建物を街に理解してもらうため、街に対して「開く」ことが重要とは言え、建物内の営みがすべてオープンとなるような雰囲気は街とホーム双方にとって好ましいとはいえず、そのさじ加減がポイントになるそうだ。


1階はビルのオーナーでもある、小児リハビリテーションやセラピーを専門とするドクターのクリニック。診察室などの他にこちらのサロンを備え、障がい者関係のネットワーク、地域との交流を図る様々なイベントを計画中。
(photo: Nobuyuki Umeda)

 リハビリテーション科には障がいをもつ方々も多く訪れる。この部屋の東側にはハイサイド・トップライトが設けられていて、街の視線にさらされずとも空が見え、外光に包まれるこのスペースで、リラックスして診療を受ける方々もいるという。上のホームとの間接的な繋がりも感じることができる。


 この日は介助犬のデモンストレーションが行われ、多くの見学者が訪れた。


 2階グループホーム。個室2室と、厨房、食堂、洗面、浴室などの共有スペース。
市内の福祉法人によって運営されて、食事や日常生活を24時間体制でサポートする。

 個室のドアは、左の食堂に正対しないよう配慮。柱や家具などを利用して少し入り組んだ街並みを再現。


 食堂の天井は路地をモチーフに。


 1階のクリニックで見えたトップライトは2階ではこのように。大きな開口を街に対して直に接続せず、街の風景を取り込みつつ通りを行く人と視線は合わないように配慮している。



個室。特定のことに非常に執着する方が居る場合もあるので、個室はシンプルにして、入居者自身が望む空間にできるようにした。

 3階には個室3室と洗濯場など。個室は廊下を挟んで左右に、といった正対する配置にはせず、こちらも路地にある独立した住戸になるよう計画。街の中にある小さな街を演出し、入居者が街の一員であり、独立した個であるような意識を促す。


 新築であるにもかかわらず、何年も前からこの街にあるような佇まい。


 國分昭子さん。「院長は古くからの友人で、地域の方々にとても信頼されている方です。『障がいのために医療機関にかかるのを躊躇されていた方が気軽にかかることができるクリニックを目指す。』と話しているように弱者に対する意識を底上げできるよう、様々な思いを持ってこの地に着地し、深く根付くようお手伝いしました。」
「通常シェアハウスではプライバシーを確保しつつ、入居者が如何に繋がるかということを求められますが、このグループホームでは、プライバシーを確保しつつも繋がりと距離感をどれだけ取るかが重要になりました。」

【野のすみれクリニック】

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