13 4月, 2017

「日本、家の列島 ―フランス人建築家が驚くニッポンの住宅デザイン―」展レポート

汐留ミュージアムで開催が始まった展覧会「日本、家の列島 ―フランス人建築家が驚くニッポンの住宅デザイン―」に行って来ました。会場構成はみかんぐみ。


日本の近現代の住宅建築にスポットをあて、フランス、スイス、ベルギー、オランダの各都市で注目を集めた展覧会の巡回帰国展。歴史的な名作住宅から近年の秀作まで約70作品を紹介する。


企画したのは、(左から)写真家のジェレミ・ステラ氏、建築家のヴェロニック・ウルス氏とファビアン・モデュイ氏、そして日本在住30年で建築設計事務所みかんぐみの共同代表マニュエル・タルディッツ氏の4人のフランス人。日本通の彼らの複眼的な視点でとらえた日本の住宅建築の評価とキュレーションが見どころだ。


会場は"昨日の家”、"東京の家”、"今の家"の3部で構成されている。


〈昨日の家〉
20世紀日本の住宅建築14作品。日本の住宅建築がいかにして西洋の建築を取り入れつつ、伝統を継承してきたかという点に注目し、作品を選定したという。


菊竹清訓のスカイハウス、吉田五十八の旧吉屋信子邸、篠原一男の白の家など。


〈今の家〉
21世紀に入ってから竣工した住宅20選と、そこに住む人々の生活に注目した展示。写真、映像、ドローイング、スケッチ、インタビュー、模型などで構成。


"今の家”を撮った映像。3箇所ほどに分けられて設置されている。


パネルにはワンポイント解説「フランス人建築家のここが驚いた!」があり、作品のどこに着目したかが分かる。因みに同じ映像は、家型をした"映像の家”内でも観ることができる。

ここからは、その20の住宅の中から数点を、ワンポイント解説付きで紹介する。


〈鉄の家〉
隈研吾
「外から見るとまるで貨車のようなこの家は、文字通り『鉄男さんのための家』です。ところが金属製の壁の内部には、なんと茶室が隠されているのです」


〈羽根木公園の家 - 景色の道〉
坂 茂
「この家のリビングルームは、日本の伝統的な概念であるハレとケが行きかう通り道のようです。また隣接する公園と街をつなぐ外部と内部を兼ねているかのような空間性にも、日本らしさがうかがわれます」


〈千葉の家〉
谷尻誠+吉田愛 (SUPPOSE DESIGN OFFICE)
「古い家が大屋根と枯山水でみごとに生まれ変わりました。このリノベーションで家族のライフスタイルもがらりと変化したようです」


〈ハウス&アトリエ・ワン〉
塚本由晴+貝島桃代(アトリエ・ワン)
「アトリエ兼住居のこの建物では、階段を巧みに使って半階ずつ空間に変化をつけています。この自由度の高い縦軸の空間構成のなかで、様々な活動が同時多発的に行われています」


〈大きなすきまのある生活〉
西田司+萬玉直子 (オンデザインパートナーズ)
「『住居棟』と『階段棟』という2棟のなかに予想以上に複雑な構成が隠され、様々な機能を持った小部屋が連続していきます。見どころは何と言っても『すきま』で、ここからの眺めは絶妙ですね」


前田圭介(UID一級建築士事務所)
「交差する大きな直法体。まるでカメラのような形で、長いほうの直方体はズームレンズのように竹林に向かって伸びて景色をとらえます」


裏の各展示作品のサイン。


〈東京の家〉
本展企画メンバーのひとりである写真家のジェレミ・ステラが、2010年より撮影している東京の家シリーズから36点を紹介する。建築だけでなく、人々の生活と共に東京の街をドキュメンタリーのようにとらえる写真。




〈映像の家〉
"今の家"に展示されている住宅の映像2分ずつほどを家型のブースで観賞するエリア。




〈ゲストアーティストの家〉
もうひとつの家型の展示だ。


〈Dig-Ital City〉坂口恭平
全長5メートルの塔のドローイング。ペンで緻密に描きこまれている。4月16日には、"日本、家の列島"に着想を得た壁画をライヴで描くイベントも予定されている。


展覧会を記念し開催された講演会「ここがすごい!ニッポンの住宅建築」では、モデレーターに五十嵐太郎、ゲストに伊東豊雄、本展の企画メンバー4名ヴェロニック・ウルス、ジェレミ・ステラ、 マニュエル・タルディッツ、ファビアン・モデュイの各氏が参加した。

「昨日の家、今の家など、フランス向きに3つのセクションに分かれていますが、ひとつの世界と思って観ていただきたい」とタルディッツ氏。

シルバーハットが"昨日の家"に分類されていることについて伊東氏は「"昨日の家"で良かった」とコメントし、さらに「当時はクライアントとやりあわないと住宅はできないという気持ちがあった。今はクライアントと一緒に楽しくつくっているんですね。僕からしたら、"今日の家"のなかには、これ家なんだろうか?と思うものある。家族や都市の生活が変化したということが如実に建築に現れている」と話した。


展示会場で参加建築家が作品について語るギャラリートークも開催される。
1回目の4月14日(金)は堀部安嗣。

【日本、家の列島展 ―フランス人建築家が驚くニッポンの住宅デザイン―】
会場:パナソニック 汐留ミュージアム
期間:2017年4月8日〜6月25日
詳細:www.panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/17/170408/


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