17 10月, 2014

「伊東豊雄展 台中メトロポリタンオペラハウスの軌跡 2005-2014」レポート

10月17日からTOTOギャラリー・間ではじまる「伊東豊雄展 台中メトロポリタンオペラハウスの軌跡 2005-2014」のプレス内覧会に行ってきました。
[Toyo Ito Exhibition- The Making of the Taichung Metropolitan Opera House 2005 - 2014]

 ギャラリー・間150回目の展覧会で、伊東さんの個展としては1986年「風の街の建築たち」展以来の開催。


 プレスカンファレンスでは様々な話を聞くことができた。
左から郷野正広(伊東事務所)、東建男(伊東事務所)、伊東豊雄、金田充弘(Arup)の各氏。

 「1年以上前に展覧会のお話を頂いた時から台中メトロポリタンオペラハウスだけの展示をしたいと決めていた。」
「なぜ我々がこの建物だけに注目したかというと、それは通常現代建築・現代社会、特に日本でははっきりとしたスケジュールと予算の中で、変更無く建築が作られていくことがテーマになっているが、このプロジェクトはその真逆で、いつ完成するのか、どういうものが最終的に出来上がるのかすら予測がつかない、何も見えない雲の中で毎日その場その場で出来る事を延々と続けた。そんな現代社会の中で殆どありえないものを作り続け、他の建物の設計・施工管理とは全く異質なものを作っているという印象を持っていて、そのプロセスを今回できるだけありのままに再現したいなと思った。」
「今年の夏、足場がようやく外れ雲の中から今までCGでしか描けなかった建築が一気に姿を見せてくれた。我々にとって感動は言葉に表しがたいものがある。」

 台中メトロポリタンオペラハウス(現在は "台中国立歌劇院” に名称変更)は2005年に行われたコンペにて伊東豊雄建築設計事務所が勝利し、2006年から設計が始まり、2015年11月こけら落としが予定されている。


 ギャラリーには、初期のスタディ模型から、大型の最終模型まで所狭しと並ぶ。

模型をいくつか紹介。
 劇場空間の収まりを確認 (2006)


 3Dデータよりスタイロを切削し躯体の形状や厚みを表現(2006)

 大劇場のためのスタディ模型。
グランドシアター(大劇場)の席数は2014ある。市長の要望で当初2010年完成予定時には2010席だったが、その後毎年一席ずつ増えてきたので、来年完成時は2015席になるのではないかとのこと。

 現場確認用模型。現場事務所にて施工時の各部収まりの検討に使われた最終模型。(2009) 


 現地の建築会社は施工図も足場の設計図もあまり描かないため、伊東事務所で用意したものも少なくない。文化や技術の違いで非常に苦労したそうだ。


 「劇場には特殊な機能や設備が必要になるが、それらとカテノイド形状を実現させるための複雑な工法が融合した、実験的な要素がある建築。」と東建男さん


 壁面には「一般的には普通お見せしないような、我々の戸惑いのスケッチや、試行錯誤の課程を説明して展示してあります。」と郷野正広さん。


 一次コンペで用いられた光造形で作られた構造模型。(2005)


 ゲント市文化フォーラム応募案のスタディ模型。(2004)


 webカメラで現地の様子がライブで見ることができる。このときは屋上緑化の作業の様子が見えた。


 中庭には実物大の構造モックアップが展示されている。凄まじい配筋だが上の方を見ると基本はトラス構造だと分かる。
鉄骨以外台湾から持ち込んだ資材で、現場監督も来日し指揮をとってもらいながら制作された “本物” だそうだ。

 複雑な曲面を出すためにコンクリート型枠は目の細かいメッシュシートを使い、メッシュを剥離後左官で仕上げる。
「作り方というのが正に構造のあり様そのもの。」
「当初の構造計算では、壁厚は80cmあったが検討を重ね40cmまで抑えることが出来た。今まで建てられたどのような建築とも違い、これを作るための指針となるような基準は世界中どこにもないため、Arupとしても確信を持つのに容易ではなかった。」と金田充弘さん。

 上階は映像と写真。


 現場の様子をヘッドマウントディスプレイでバーチャル体験できる。首を動かすと360°全天球方向が動画(!)で見ることができる。


 覗くとこのように。是非会場で試していただきたい。


 壁面にはイワン・バーン (Iwan Baan) が撮り下ろした初公開の写真が並び、映像はプロジェクトに深く関わった関係者へのインタビューやトラスウォールユニット工場の様子が流れる。
レム・コールハース (Rem Koolhaas) は「今までに見たこともない建築。建築の未来を示している。今日の建築はリスクを冒す事が重要であると考えているが、リスクを冒して実現した。」などと絶賛。

 現場責任者の方。「足場が取れて姿が見えたとき思わず涙がこぼれた。その後妻を連れて見せたら妻も泣き始めた。私が毎日なぜ夜遅く帰ってきたのかをその時分かったと言ってくれた。」


 夕方からの内覧会では多くの方が伊東さんの説明に耳を傾けた。居並ぶ建築家たちから「凄い!」の言葉が至るところで上がっていた。



伊東豊雄さん「建築が持っている力を観て貰いたい。本当に手作りで、二度とこんなことはありえないだろうと思うようなことを9年間続けて来た。完成しないうちに我々の気持ちをここで展示させていただきます。」

※本展覧会に合わせて「伊東豊雄の建築2 2002 - 2014」がTOTO出版より刊行された。

【伊東豊雄展 台中メトロポリタンオペラハウスの軌跡 2005-2014】
会期:2014年10月17日〜12月20日
場所:TOTOギャラリー・間
詳細:www.toto.co.jp/gallerma/ex141017/index.htm



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