27 1月, 2017

「MARU。architectureの宇宙展」レポート

高野洋平+森田祥子の「MARU。architectureの宇宙展 ―思考のはじまりとつながり―」に行ってきました。会場は東京 南青山のプリズミックギャラリー。

展覧会概要:「現在、私達は、個人住宅から大規模公共施設まで幅広い背景を持つ建築に取り組んでいます。 都市と地方、パブリックとプライベート、社会性と経済性、様々に異なるシチュエーションから始まるプロジェクトは、パラレルなようでいて、見えないところで関係しあい、影響し合っています。この展覧会では、アンビルドから竣工作品まで17のプロジェクトについて、その思考のはじまりに着眼した展示を行います。現代の建築の置かれるカオスティックな状況の中で、それぞれの建築をめぐる思考をつなげながら、1つずつプロジェクトを考えようとしているのです。」

 エントランスのコリドールには壁から突き出したイントロダクションが。
読み進めてみると「こにちは。これはMARU。architectureの宇宙展です-----」「どうして宇宙展なのかな?と思ったでしょう-----」などと話しかけてくるように続く。


 竣工、計画中、コンペ案など17プロジェクトの1/100模型が会場を取り囲むように浮いている。


中心に立つと時計回り時系列に手掛けてきたプロジェクトが並ぶ。
展覧会自体が一つの作品になるよう意識したという。


 〈西小中台団地集会所〉 2011
団地の集会所の建て替え計画。住民が主体となった団地再生活動をサポートするための場所づくりを目指す。


 〈太田駅北口駅前文化交流施設設計プロポーザル〉 2014
工業都市として発展してきた太田市のドライな風景の中で、森の中にいるような居場所をつくることを目指す。


 左:〈土佐市複合文化施設〉 2015~。プロポーザルコンペで勝ち取り現在進行中。「新しい建築の楽しさ2016:後期展」には検討が進んだ状態の模型が展示されている。
右:〈西ノ島町コミュニティ図書館 プロポーザル〉 2016。図書を媒介として人と人が出会う場所、誰もが気軽に訪れることのできる居場所として、図書館機能とコミュニティ機能が自然と混ざり合う「としょカフェ」を提案。


 各プロジェクトを解説する冊子がこちらに並んでいる。



森田祥子さんと、高野洋平さん。「宇宙に浮かぶ星々が回りながら互いを引き合うように、私たちのプロジェクトも見えないところで関係し合い、影響し合っています。そんな私たちの思考の様子を是非見に来ていただけたと思います。」

【MARU。architectureの宇宙展 ―思考のはじまりとつながり―】
会期:2017年1月21日~3月5日
会場:プリズミックギャラリー(東京都港区南青山4-1-9)
詳細:www.prismic.co.jp/gallery

【ギャラリートーク】
日時:2月12日、17時~19時
登壇者:畝森泰行、大西麻貴+百田有希、能作淳平、高野洋平+森田祥子
モデレーター:中村航

【関連記事】
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25 1月, 2017

「新しい建築の楽しさ2016:後期展」レポート

1月10日から開催の「新しい建築の楽しさ 2016:後期展」に行ってきました。会場は東京・京橋のAGC studio。
この後期展には大西麻貴+百田有希、高野洋平+森田祥子、山﨑健太郎、馬場兼伸、伊藤立平、落合正行の6作品が出展されている。
前期展では神本豊秋、小川博央、能作淳平、岩瀬諒子、山岸綾、蘆田暢人が出展した。
会場構成はバンバ タカユキ。企画は中崎隆司。

 前期展では西日が差し込む時間に訪れたが、後期展では日没後のニュートラルな状態を撮影した。
バンバさんが担当した会場構成については前期展の記事に詳しい。

 〈福智町立図書館・歴史資料館 ふくちのち〉 大西麻貴+百田有希/o+h
福岡県福智町の図書館と歴史資料館からなる複合施設へのコンバージョンプロジェクト。

 1階は文化活動が広がる屋内広場のような空間で、2階には小さな居場所をつくる。本をきっかけに様々な出会いが起こる場所になるよう建物全体が図書館であり、歴史資料館となる。


 小さな居場所の例。子どもたちが楽しみながら読書できる積み木のような本棚。



大西麻貴さん、百田有希さん

 〈土佐市複合文化施設〉 高野洋平+森田祥子/MARU。Architecture、聖建築研究所
高知県土佐市の図書館、ホール、公民館、社会福祉協議会、商工会からなる複合施設。


 テーマは「ミチ文化」。水運が発達した歴史や、道路を使って行われる祭りや市、日本古来のミチ文化が息づく地域にあって、建築内にミチを取り込み、ミチを巡ることで活動や情報との出会いを生み出し、ミチに沿って賑わう風景をつくる。



高野洋平さん、森田祥子さん

 〈五十二間の縁側〉 山﨑健太郎デザインワークショップ
千葉県八千代市の宅幼老所(小規模多機能型居宅介護施設)


 デイサービスや宿泊、訪問介護センター、さらに子ども食堂、就労支援スペースとして工房、寺子屋も併設。緩やかに起伏する敷地に合わせ縁側と、雨水を活用した水辺をもつ縁の下や畑は地域、子ども、お年寄りたちの新しい営みの場となる。



山﨑健太郎さん

 〈代田の長屋〉 馬場兼伸建築設計事務所/B2Aarchitects
東京都世田谷区の賃貸アパート。


 均等に開口が並ぶ外壁の中は上下左右異なる広がりを持つ6住戸からなり、条件に応じて独立性や採光性を重視したものなど性格が異なる。殻と中身のずれの狭間に、静かに多様な生活が展開することを想像している。


 〈木の風景〉 伊藤立平建築設計事務所
山口県長門市の製材業を営む一家のための、ギャラリーと住宅が一体の施設。


 家具や木工品、材料のショールームが併設。規格材による積層壁は架構の一部でもあり、場所に応じて寸法を変え様々な用途に対応させた。製材所、来訪者、地域の人々、家族との関係を築き、活力のある場を生むことを目指す。


 〈いこうファームのキッチン・ラウンジ〉 落合正行 PEA.../落合建築設計事務所
東京都足立区の貸農園に併設する共同のキッチン・ラウンジ。


 農園利用者や周辺の人たちも利用できるキッチン・ラウンジを併設し、プライベートだった場所をパブリックに開き、地域に関わりながら建築によって付加価値を生み出していく仕組み。私有地を公共性の高い場所に変えることはリスクを負うが、新たな土地活用のあり方を問う。


 この日は出展者3組が登壇し「パブリックスペースの中にプライベートスペースをつくる」というテーマでフォーラムが開催された。


 本展の企画者でフォーラムのモデレーターも務める中﨑隆司さん。

【新し建築の楽しさ2016:後期展】
会期:2017年1月10日~3月4日
会場:AGC studio(東京・京橋)
詳細:www.agcstudio.jp/project/pdf/project19th.pdf

※2月16日、出展者である馬場兼伸、伊藤立平、落合正行登壇のフォーラムが開催。

【関連記事】
新しい建築の楽しさ2016:前期展
新しい建築の楽しさ2015:前期展後期展
新しい建築の楽しさ2014:前期展後期展 
新しい建築の楽しさ2013:前期展後期展

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23 1月, 2017

「堀部安嗣展 建築の居場所」レポート/TOTOギャラリー・間

TOTOギャラリー・間で1月20日から開催の「堀部安嗣展 建築の居場所」のプレス内覧会に行ってきました。
Exhibition [Yasushi Horibe: A Human Space for Architecture]

 「『建築の居場所』と名づけられた本展のタイトルには、自然との関わりが希薄になっている現代において、私たちに本来備わっている心地よい空間の記憶を取り戻し、それぞれが本来の居場所を見つけて欲しいというメッセージも込められている。」
>>展覧会概要


 3階展示室。中央には机のような白い展示台。周囲には様々な椅子が置かれ「どうぞお座り下さい」と誘っているようだ。


 上段にはアガチス材で作られた1/100竣工模型が26点。普段はスタディ模型までしか制作しないため、これらは今回の展覧会のために制作した。年代毎に形状の変遷が分かるように並んでいる。



 下段には図面冊子や、作品図録のほか、堀部さんが設計中に聞く音楽やイメージを膨らませた映画などを紹介している。何れも手にとって閲覧可能だ。

 
周囲の壁面には代表作の図面や写真、模型など。


 デビュー作〈ある町医者の記念館〉 鹿児島/1995
工事が始まると現地に移り住んで現場に毎日通ったという。

 「とても地味で、こんなの作っても誰にも評価されないだろうなと思いながらも、自分に正直に設計した。」と堀部さん。


 〈イヴェール ボスケ〉 石川/2012
のどかな田園風景の中に立つカフェ併設の洋菓子店。

 壁に設置された模型は何とチョコレートでできている。オーナーの河村剛志氏が本展のために制作。


〈竹林寺納骨堂 位牌堂・本坊・庫裏〉 高知/2013~
2016年の日本建築学会賞を受賞した納骨堂。今年、庫裏が竣工予定で、その後も境内全体の計画が進行中。
「点が線になり、面へと変わっていくプロジェクトでとても嬉しい」と堀部さん。


 土佐漆喰や土壁のサンプル。土壁には境内の土を使った。


 〈せとうちクルーズ船 guntû(ガンツウ)〉 2017
今年9月に就航予定の宿泊型の小型客船で尾道を出発・帰港地としながら瀬戸内の景勝地を周遊する予定。
模型の脇に置かれるスネアドラムはドラムが趣味の堀部さんのものだが、船の色に引用したそうだ。

 3階デッキには軒の深い縁側が設えており、軒先に切り取られた瀬戸内の景色を眺められる。最前部にはスイート客室。


 建築と船舶は全く異なるプロセスで作られる。船は全てのパーツを予め作っておいて、一気に組み立てるそうだ。
3階客室の切妻屋根はひっくり返して “パーツ” として作られる様子や、本展数日前に行われた進水式の様子を4階展示室の映画で見ることができる。

 左は堀部事務所の日常風景を再現。打合せテーブルや椅子は事務所のもの。


 今でも図面は手描きする堀部さん。いつも使っている製図板も置かれている。


 著名建築の平面ドローイング。写真はアアルト自邸。


 中庭へ出ようとしたところでいつものギャラ間と違和感が。30年親しまれてきた踏み石は安全のため階段に取って代わっていた。


 中庭。展示物は竹林寺納骨堂で使われている実物のベンチ。ベンチに腰掛けながら全国にある堀部建築の現場で収録された音を聴くことができる。


 4階展示室。短編ドキュメンタリー映画〈堀部安嗣 建築の鼓動〉が上映されている。


 堀部建築14作品を半年掛けて撮影し、30分の美しい映像にまとめてある。
堀部作品は映像によって、周辺の音や光がその佇まいをより鮮明に伝えてくれる。

堀部安嗣さん。「建築に携わっていない方、建築をよくご存じない方にも、建築をとりまく人やものを分かりやすく伝えられたらと思います。お好きな場所に座って、目の前にあるものを手にとって見て、目が疲れたら中庭に座って耳を澄まして、そして4階で映画を見て、とゆっくりと寛いでいただける展覧会を目指しました。」

【堀部安嗣展 建築の居場所】
会期:2017年1月20日~3月19日
会場:TOTOギャラリー・間
詳細:www.toto.co.jp/gallerma/ex170120/index.htm

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