[Exhibition "Akihisa HIRATA: Discovering New" at TOTO GALLERY·MA, Tokyo]
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展覧会概要:私たちの建築は、建築やその背後にある人間の営みを、広義の生命活動として捉え直すところから始まる。そのとき、公共建築すら、多様な人びとを異なる「生物種」と読み替えたある種の「生態系」となるだろう。
そのためには、手がかりとなる何らかの考え方、生命の営みと建築をつなぐ、新しいラインを見つけなければならない。この展覧会では、そのような思考のラインとその交錯を、模型を含むさまざまな事物の立体的配列で体験的、博物学的に示す。
新しいことは、生命の本質にある何かである。生きていることとは、変化し続けることだからだ。生命力は、常に更新されるものにこそ、宿るだろう。
とはいえ、ここでいう新しさとは、過去と断絶した完全な見知らなさ、ではない。むしろ、既にそこにあるが、未だ隠されたものを、顕在化させる何かだ。だから私たちは、何もないところから創造したり、発明するというよりは、何かを発見=discoverすることを通して建築をつくりたいと思うのだ。
とはいえ、ここでいう新しさとは、過去と断絶した完全な見知らなさ、ではない。むしろ、既にそこにあるが、未だ隠されたものを、顕在化させる何かだ。だから私たちは、何もないところから創造したり、発明するというよりは、何かを発見=discoverすることを通して建築をつくりたいと思うのだ。
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会場に入るとまず驚かされる。
無数のパイプが縦横に構築され、その間に建築模型が埋め込まれるように設置されている。
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それは一見無秩序かつ、思いつきと感覚で構成された "インスタレーション" のように見える。
この展示は一体どのように見ていけば良いのか、たまらず平田さんや、担当者に尋ねるとこうだ。
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会場には「Discovering New Form」、「Discovering New Nature」、「Discovering New Commitment」という3本の仮想軸がある。
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その3本の仮想軸に、それぞれ4つずつの概念キーワードが仮想面として付随している。
1= 側、ひだ、ライン、階層
2= 生の度合、動物的、創発的、発酵・浸食
3= 汎ローカリティー、土、他者、履歴
これらの、面と面がからまったところに造形が生まれているということだ。
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平田さんが直筆で壁面に記した、上記の12の概念キーワードと実作を線で結んだダイアグラム、軸と面を解説した図。
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そして左右の壁面に12のキーワードが色分けされながら説明されている。
「生物学者にもなりたかった」という平田さんならではのキーワードとその解説。
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構成される仮想面には、よく見るとキーワードのプレートが付いているので、、
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プレートの延長にある面を想像する。
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これらを踏まえてもう一度パイプのからまりを眺めると少しずつ面が見えてくるが、写真でそれを伝えるのは非常に難しい。
3階展示室は作品を時系列で見るのではなく、作品同士の関係性を概念キーワードの中で見ることができる「抽象と思考」の世界なのだ。
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例えば近作である〈Tree-ness House〉は「ひだ」「階層」「発酵・浸食」の面がからまる辺りに分布している。
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時折、概念の中に入って見ることもできる。
同じ作品でも検討段階と、最終型では異なる交点に存在していることがある。
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概念と模型はそのまま中庭まで連続する。
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設営中は雨が降らなかったが、模型に防雨したところでちょうど雨が降ったこの日。
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数時間後、ゲストを招いた内覧会ではこの中庭でレセプションを行ったが、その時になると雨はぴたりと止み、終わるとまた降り始めるという奇跡を起こした平田さん。
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見上げると雲のように浮く模型たち。下から見えるように逆さまに設置されている。
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4階は「現実と体験」の世界。
〈Timber Form+〉なるオブジェは、長さは6.1m、直径2.1mの構造体。
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原型となったのは2011年台湾のコンペで次点となった〈Foam Form〉。数10〜数100m規模の建築であるが、、
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それを縮小したようなかたちで、平田さんの概念を現実化した "建築" に入って空間を実体験できる。
木の3次曲面NC加工ができるシェルター社の協力によって製作。アカマツの集成材を72のパーツに分け切削し、組み立てた後繋ぎ目を滑らかに仕上げた。
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周囲や中に数台のタブレットが浮かんでおり、様々な画像が見られる。例えば写真家 阿野太一が〈太田市美術館・図書館〉をプライベートで撮った写真や、、、
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本展設営の様子なども。
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4階奥には、写真家 市川靖史が撮影した〈太田市美術館・図書館〉と、〈Tree-ness House〉の動画が壁一面に映し出され、その空間に入り込んだような体験ができる。
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平田晃久さん。「この展覧会は今まで考えてきたことの相対です。考えてきたこと『からまりしろ』を初めて整理し可視化してみようと思いました。すると複数の概念がからまったところに作品が生まれていることが見えてきて、それぞれの作品の関係性も見えてきました。とても複雑なものに見えるかもしれませんので、じっくり見て頂くのもいいですし、『こんなものもあるんだな 』とさらっと見て頂いても良いと思います(笑)。」
「今、どこまでいったら建築ではなくなるのか、どこまで他者を受け入れたら自分ではなくなるのか、そんなことにとても興味があります。建築のあり方は固定されているものではなく、これがなくてはできない、これがあってはいけないということもなく、これからはもっと、あらゆる分野・あらゆる階層の人が多様に関わってつくられていくものになるのではと思います。そんな中で建築家がどのように関わっていくことが出来るのか、ほとんど建築とは言えないものが生まれるのではないか、そんなことにチャレンジしていきたいです。」
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〈Akihisa HIRATA Discovering New〉展覧会に合わせてTOTO出版から刊行された平田さん待望の作品集。内容は展覧会とリンクしており、それぞれの作品がどのような概念のからまりから生まれているか詳しく記されている。
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A4変形の280ページ。3つの書き下ろしテキスト「Discovering New Form」「Discovering New Nature」「Discovering New Commitment」を収録。これまで建築における新しい「かたち」や「自然」を追求してきた平田さんが、〈太田市美術館・図書館〉で市民とのワークショップを通して新しい「コミットメント」の在り方を提示。
https://jp.toto.com/publishing/detail/A0373.htm
【平田晃久展 Discovering New】
・会期:2018年5月24日~7月15日
・会場:TOTOギャラリー・間(東京都港区南青山1-24-3)
・詳細:https://jp.toto.com/gallerma/ex180524/index.htm
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