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27 8月, 2018

御手洗龍による目黒区の店舗兼住宅「stir」

御手洗龍(御手洗龍建築設計事務所)による目黒区の店舗兼住宅「stir ステア」を見学してきました。東急東横線 学芸大学駅から徒歩5分程の場所。


敷地面積74m2、建築面積54m2、延床面積147m2。RC造、4階建て。


敷地は東横線の高架に隣接。さらに北側には2020年完成予定の、駒沢通りと目黒通りを接続させる幅員20mの道路が建設中であるため、近い将来大きく環境が変わることを想定し計画された。


そこで1階部分はテナントとし、すでに和食店が入ることが決まっている。


2階より上、住居部へのエントランスは南側の路地にある。
北側は今後すぐに道路工事用の仮囲いで塞がれてしまうため、暫くは店舗への出入りもこちら側になる。
細い私道の突き当たり、人が吸い上げられていきそうな外階段が見える。向かいに工場や小さなショップもあり、既に住民同士が近い関係にあるという。外階段はそのような地域環境を住宅の中にも引き入れるようなイメージで設置された。


2階玄関へ。


玄関ポーチは南北に抜けるピロティになっている。


玄関扉を開けると、先ほどのアプローチ階段がそのまま接続するような、大きくうねる螺旋階段が現れた。


天高5.3mの二層吹き抜け空間と大開口。道路や鉄道といった通常ネガティブに捉えられる要素を遮断せず、施主の "この地に棲まうのだ" という強い意志に最大限に応えたような計画だ。
螺旋階段の中央辺りがリビングエリア、左側がダイニングエリア、左奥がキッチンのLDK。


空間や周辺環境、コンテクストを正にstirする(混ぜる)、stair(階段)だ。

建物はRCの柱梁構造で、t=220の壁の中に200×280の柱型の配筋が入っている。壁が薄いためコンクリートは高性能AE減水剤を用いたスランプ18のものを流し、所員総出で型枠を叩いて気泡を抜いたそうだ。


階段はそのまま3階、4階へと連続する。


3階。右の壁は、奥からトイレ、収納、洗濯機、洗面室+浴室。


回り込むと主寝室が現れる。


螺旋形状に呼応するような天井。




4階へ。


全く異なる空間へ上っていくような感覚。


4階ゲストルーム。将来は子ども室にする予定。


そして広いルーフバルコニー。屋外キッチンも備わりパーティーが開けるようになっている。屋根にはハンモックを掛けられるようフックも。


滑り台のような階段室の上屋がそのまま塊で現れている。路地から始まった螺旋階段の旅はここで終わるが、次に線路に続いているようにも見える。


御手洗龍さん。「オープンで社交的なお施主さんは、週末になると人が集まれるような家にしたいと望まれました。ご友人やこれから形成されるご近所とのコミュニティーを大切にするための階段を導線の中心に据えました。大開口に面した緩い勾配でゆっくりと上ると、街や建物の見え方が様々に変わっていきます。」

【stir】
設計監理:御手洗龍建築設計事務所
構造設計:平岩構造計画
施工:イケダ工務店


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24 8月, 2018

岩佐周明/岩佐設計工房による「武蔵野アトラスターズスポーツクリニック」

岩佐周明/岩佐設計工房による東京 三鷹の「武蔵野アトラスターズスポーツクリニック」を見学してきました。JR三鷹駅から徒歩3分のメディカルテナントビルの2階。
[photo: Toshihiro Sobajima]


このクリニックは、社会人ラグビートップイーストリーグに所属する横河武蔵野アトラスターズのチームドクターとスタッフが、トップチームの現場で培ってきた「スポーツ医療」の経験を活かし、整形外科及びリハビリテーション領域における地域医療の向上と発展を目指して開設された。


エントランスを入るとラウンドした待合室が現れる。


診察室や、、


検査室にもアトラスターズのチームカラーが使われ、壁面のグラフィックなどスポーティーなイメージを演出。


待合室の背後には中空ポリカーボネート板越しにリハビリ室の躍動感を感じることができ、回復への期待感を高める。また外光を待合室にも導くことができる。


リハビリ室。待合室にもこちらにも、床にはリノリウムが張られている。リノリウムは天然素材を主材とした衝撃吸収性の高い床材だ。


本来広さを求められるリハビリスペースであるが、今回138m2と限られた床面積であるため円弧を描くパーティションにより、奥行きが見えにくく広さを感じさせる工夫がされている。

「諸室は外周から内へ向かって『動から静の等高線を描く様なヒエラルキー』としてグラデーションを成しながら、リハビリテーション、検査、診察のそれぞれにおいて快適性と機能性を追求した医療空間を目指しました。」と岩佐周明さん。

【武蔵野アトラスターズスポーツクリニック】
設計監理:一級建築士事務所岩佐設計工房
グラフィック:粟辻デザイン
施工:天然社
事業主:イービストレード
webサイト:https://musashinoasc.com


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22 8月, 2018

土田拓也/no.555による横浜の住宅「MRM」

土田拓也/no.555一級建築士事務所による横浜市港北区の住宅「MRM」を見学してきました。


敷地面積141m2、建築面積54m2、延床面積135m2。木造+一部RC造、地下1階、地上2階建て。
切妻のボリュームに横連の開口が上下に二列あるのが特徴だ。


正面は南東向き。横から見ると下層は半地下になっているのが分かる。背面の屋根は斜線の影響で寄せ棟になっている。
斜め後ろに見えているのはご両親の家だそうだ。


腰壁に囲まれた珍しい玄関アプローチ。その先にピロティーがあるようだ。
外壁は杉板にホワイトの拭き取り塗装。


アウトドアが大好きなご主人はこの広いピロティーを望んだ。スケートボードも見えるが、ここにスパイン(スロープ)を作りたいと考えているようだが、近隣への騒音の心配もあり思案中だとか。
腰壁は基礎がそのまま立ち上がったもので、静かな住宅街でオープンになりすぎないよう配慮した。


横連の開口はこちらにも採用されている。右の引戸が玄関。


地下階。この空間は昔の家屋にあった大きな土間のような働きで、簡単な接客や、立ち話ができるようにした。さらにご主人の趣味の部屋でありガレージであり、倉庫。およそ思いつく外遊びギアが一通り揃い、アウトドア好きにはたまらない空間だ。唯一(?)奥さまのものは右奥のアップライトピアノだろうか。
床はモルタルで、電気式の土壌蓄熱を導入している。


引越は1年前に済んでおり、植栽が落ち着き、生活感が出てきたところでの竣工写真撮影のタイミングで訪問した。
壁の棚などはご主人自らが取り付けたものだ。


1階へ。


1階はLDK。天井を抑えたDKの先にリビングが連続する。


左を見ると収納、浴室と続き、奥の右手がトイレとなる。


キッチンから。横連開口から景色が4枚の絵のように切り取られている。


ダイニングを抜けると切妻ボリューム一杯に気積が広がり、DK上の2階が姿を現す。
中心の梁は右の外壁を支えるもの。象徴的な存在になるよう塗装されていない。


床はオスモのオーク材フローリングだが、土田さん達の手作業で浮造加工されている。また壁は本漆喰、天井は土田さんの建築では定番の木毛セメント板となる。


窓に近付いておやっ?と思う。外観で見たときはフラットだったにも関わらず、内部から見るとサッシュがアウトセットされている。これはアウトセットされたサッシュの出幅に合わせて外壁をふかし、外観を面一にしてあるのだ。


2階は寝室とクローゼット。床と同じラーチ材で作られた収納家具で緩く仕切られる。


1階2階が連続する開放的な空間は間仕切りのない大きなワンルームと言える。屋根の開き止めにスチールのタイバーが幾筋か通される。


間接光に柔らかく包まれる小屋裏空間。

「半地下にあるホビールームは、家族が顔を合わせるスペースとして、第二のリビング的な役割を担わせています。この気を使わないスペースは、裏の敷地の両親も孫の顔を気軽に見に来れ、ママ友などもハードルを感じず来れるよう計画しています。ホビールーム前のピロティでは、ご主人の趣味のスケートボードを音を気にせず楽しめるようにしていますが、子供達の遊び場であったり、テーブルを置いて時間を過ごす第三のリビングにもなっていきます。家族の意思によって、居場所がズレていき、室の名前もズレていくような計画としています。」と土田拓也さん、担当の平野佳乃さん。

【MRM】
建築設計:no.555一級建築士事務所/土田拓也+平野佳乃
構造設計:frame works/秋元恵美
施工:安斎工務店


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16 8月, 2018

CLT実験住宅「CLTHUT」体験宿泊レポート

山中祐一郎(S.O.Y.建築環境研究所)×木のいえ一番協会によるCLT実験住宅「CLTHUT」に体験宿泊してきました。
建築の詳細については以前のレポートを参照


CLTを使った戸建て住宅の普及を目指すため、技術検証を行う実験住宅であるこの建物は、山梨県山中湖畔の森の中にあるフェザント山中湖の一画に建つ。


フェザント山中湖はログハウスデベロッパーのBESSが運営するシェア別荘地で、CLTHUTの管理を担当している。センターハウスも巨大なログハウスで、鍵の受け渡しなどの手続きはこちらで行う。中にはレストランなども併設されている。


木のいえ一番協会は、戦後の効率と利便性だけを追求した住宅の普及により、木のいえをすっかり見なくなってしまった現代を憂い、「自然材を建物の内外装にふんだんに使い、木が醸しだす情感と、年月とともに深まる味わいを楽しむ暮らしの普及を目指す。」と活動する一般社団法人だ。


そして夏の湿気や、冬の寒さも厳しいこの山中湖畔で体験宿泊を繰り返しながら、平地での住宅としてフィードバックしていく目的で建てられたのがこの実験住宅「CLTHUT」で、設計を山中祐一郎が担当した。
竣工は2018年2月。半年経った建物の体験宿泊をする機会を得られた。


仕上げも断熱も不要とされるCLTだが、外気に触れる部分には耐候性を高めるために塗装だけしてあり、さらに軒を深く出し、雨の影響も少なくした。


内装は壁天井にホワイトの拭き取り塗装で、山小屋の雰囲気に寄りすぎない「住宅」の雰囲気だ。そして玄関土間全てが木というのも贅沢だ。


内覧会で訪れた際はなかったラグ、クッション、テーブルが設えてある。


キッチンには一通り調理できるよう、IH、深底フライパン、ケトル、コーヒードリッパー+ポット、食洗用品、ボウル、ザル、菜箸、トング、包丁、まな板、ふきん、オーブン電子レンジ、冷蔵庫、分別ゴミ箱が備えてある。


消耗品はゴミ袋、ラップ、アルミホイル、ティッシュ、蜂用殺虫剤などが。


食器棚には大皿、小皿、深皿、マグカップ、グラス、各種カトラリーが4人分揃えてある。


浴室。給湯はガス。ドライヤーと宿泊人数分のフェイスタオルとバスタオル。タオルはホテルのように交換サービスがないので、連泊する場合はセンターハウス横のコインランドリーで洗濯できる。


シャンプー、リンス、ボディーソープ。シャワーの湯量は申し分ないが、シャワーカーテンがあった方が良いと感じた。


2階は寝室。どのように敷くかはお好みだが、手摺子がシンプルなので落下に注意したい。またマットレスがなかったので、堅めが苦手な場合はキャンプ用のマットを用意すると良いだろう。(ここはあくまでも宿泊施設ではないのだ)


2階には間接照明が備わる。ペンダントやスポットなどいくつかの照明で、好みに調整して楽しむことができる。


真夏の今回は用はなかったが、秋以降は薪ストーブの体験もできるだろう。ちなみにパネル型のカーボンヒーターも1台常備されている。


夕刻、デッキでは当然バーベキューだ。デッキは住宅を想定しているためか十分な照明が備わる。


地元のニジマスを食べたかったため魚屋を探して買い求めた。東京とは違い、クマゼミの鳴き声が混じる虫のねをBGMに楽しんだ。


夕食後、湖畔まで2分歩いて山中湖花火大会報湖祭を堪能。

朝、トップライトの明るさで目を覚ます。目覚めの瞬間に緑と青空が見え、鳥のさえずりが聞こえ、木に包まれた空間にいる。そんなことがこんなにも非日常なのかと実感する。夜には雲間に星も見ることができたこのトップライトは、山中さんがどうしてもとこだわった箇所だったが、正解だ。


朝食前に湖畔に出ると見事な逆さ富士も拝むことができた。
重量感と安心感のあるCLTと山中湖の自然に囲まれ、特別な3日を過ごすことができた。断熱性能をみるために、秋か冬にもう一度体験してみたい。

この実験住宅は体験宿泊が可能です。
基本的には木のいえ一番協会会員向で、施設維持協力費として1泊¥15,000(棟貸し)、最大2泊まで。
一定の条件で非会員の方でも利用できるので、協会事務局まで問い合わせてください。

【CLTHUT 体験宿泊】
木のいえ一番協会:www.kinoie-1ban.or.jp
メール:info@kinoie-1ban.or.jp
電話:03-5790-6360


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