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22 10月, 2018

永山祐子、藤本壮介、落合陽一らが参加の「DESIGNART TOKYO 2018」レポート

東京の街を会場にしたデザインとアートの祭典「デザイナート・トーキョー(DESIGNART TOKYO) 2018」が今年もスタートした。初開催となった昨年4万人を超える来場者を記録し話題となった本イベント。"Emotional Lifeー感動のある暮らし"をコンセプトに掲げ、渋谷・青山・六本木などのギャラリーやショップで前回の規模を上回る100を越えるエキシビジョンを展開する。


DESIGNART TOKYOの発起人チーム
「今年のDESIGNART TOKYOが見据えているのは2021年、そしてその先です」
開会式は、外交関係樹立150周年のパートナーカントリー スウェーデンの駐日大使の挨拶、Dezeen、Wallpaper、Financial Timesなど海外メディアの取材も入り国際色豊かな幕開けとなった。


南青山のエイベックスビルのアトリウム。フィーチャーアーティストに藤元明と永山祐子を起用し、大型インスタレーション「2021#Tokyo Scope」が出現。


PCV製の直径7m×17mの半球と円錐が組み合わさった雫型の鏡面バルーン。藤元氏が2016年より主催するアートプロジェクト「2021」を永山氏が東京という都市空間へ拡張するコンセプトである。

赤い線は、明治神宮、東京オリンピック1964レガシーや新国立競技場と行ったヘリテッジゾーンをもつ北西側と、六本木ヒルズやこれから大きく変化する豊洲のベイゾーンをもつ南東側、その2エリアを串刺すように通っている。

ビル正面から望むと、ファサード部の2、2、1と合わさって「2021」に見える仕組みだ。


オフィシャルなコラボレーションは初となるアーティストの藤元明、建築家の永山祐子夫妻。
「2つの重要なゾーンを結ぶ線上に位置するこの場所に置くことで、各々の場所に意識を広げてもらいたい。また2021に焦点を当てることで、オリンピック以降の東京の未来像に思いをはせるきっかけとなればと思います」

ほんの一部ではあるが、プレスツアーで訪れた選りすぐりの展示をいくつか紹介したい。


ベサン・ローラ・ウッド「ペリエ ジュエ ポップアップ・バー」/スパイラルカフェ
イギリス出身の気鋭アーティスト、Bethan Laura Woodがペリエ ジュエのために制作したアート作品「ハイパー ネイチャー(Hyper Nature)」。作品の一部となっているグラスホルダーは枝からの取り外しが可能。


空間デザインは松村和典が手掛けた。ウッドの作品にも用いられているグラデーションをプリントした紙製のオブジェを群生する植物に見立て空間構成している。

藤本壮介(CANADA GOOSE 千駄ヶ谷)
防寒力の高さとスタイリッシュなデザインで知られるダウンジャケットのブランドのために、普段はそれ自体を目にすることは少ないダウンを用いたショップウィンドウをデザイン。


グリッド状に等間隔で整列した2万7000個以上のダウンをレイヤー状に配置。照明によって空を舞う雲のような様々な移ろいを感じることができる。


落合陽一 「Silver Floats」/kolor
波源を形にした彫刻(メディアアート作品?)。定まらない波が鏡を作り、鏡は風景を歪めて波動に変える。

磁力を発生させ、その抵抗力で物体を浮かせ回転させている。

クラーソン・コイヴィスト・ルーネ(CKR)「House Art View」/TIME & STYLE MIDTOWN

CKRが7年前に手掛けたアートコレクターのための海辺の個人住宅「ヴィラ・ヴィードルンド」にインスパイアされ、日本の異なる地域とのコラボで製作した9つのプロダクトを展示。



「Bookends」
岐阜県関ヶ原町の大理石を用いたブックエンド。15cmの長さを1時間ほどかけてカットし、最後は人の手で磨いて仕上げた。


「Club chair」
静岡県浜松市にてアクリルを使って製作。接着の技術や小口面の処理など、細かなディテールに日本の職人の技が生きている。

邱柏文「HappierCafé」/東京ミッドタウン ガレリア3F
黒川紀章、ニューヨークの建築家ケビン・ケノンの事務所で勤務した経歴をもつ台湾出身の建築家、邱柏文(ジョニー・チウ)のインスタレーション「HappierCafé」と、台湾クリエーターたちの作品を同時にチェックすることができる。

「Oblik coffee stand」
コンクリートの穴のホールドでマグの高さに合わせた調整をすることが出来る。

HappierCaféのコンセプトを説明する邱柏文氏。「童心にかえったように好き放題に描いてください。展示終了後このシートを台湾に持ち帰り、『これが東京のハッピーだったよ』と公開する予定です」


AXISビルでは、4組中3組がミラノサローネ出展作品という質の高い若手デザイナーによる作品を集結。中庭やガーデンテラスといった屋外での展示も楽しめる。

沖津雄司「focus」/2F リビング・モチーフ AXISビル
モビール状に吊られたレンズで周囲の環境に焦点を当て、常に変化し続ける知覚空間を構築するインテリアオブジェ。
組み込まれた照明をONにすると異なる表情を見せる。


YOY「PAINT -Light-」/4F JIDAデザインミュージアム AXISビル
光のペンキで描いた絵画のような照明シリーズ。内部に配したLEDと、ペンキの軌跡をネガ印刷した透明シートによってペンキのかすれや筆を忠実に再現している。

「SUNDIAL」
壁掛け時計。分針を棒、時針を棒の影に見立てた日時計のような壁掛け時計。影を印刷した文字盤全体が回転し、平面の中で棒とその影が追いかけっこしているような印象をつくっている。


LITHUANIA: CREATIVE & CONTEMPORARY/BROADBEAN
リトアニアの気鋭のコンセプトアーティストや工芸職人等の作品を紹介。


ヨリタ・ヴァイトクーテによる「命の土」

板坂諭「Neba Chair」フレッドペリーショップ東京
森林が抱える問題、環境の問題、経済格差の問題など幅広いテーマを身近な椅子で表現。

板坂諭 「ブラウン管の残像」/フレッドペリーショップ東京
ブラウン管が処理される際に生成されるガラスの塊でつくった光のオブジェ。大量消費社会とモノの伝搬。

鹿児島睦「穂高」/HIDA 東京ミッドタウン店
穂高誕生50周年を記念し、鹿児島睦によるファブリックやプロダクトを展示している。「おばあちゃんの家に遊びに行ったような、暖かくて懐かしい感じや、流行を追うのではなくウィリアムモリスのように永く愛される手仕事感のある良いものを目指しました」


関連トークも充実。10月28日に開催されるHOME-FOR-ALL主催の「みんなの家、その先へ 2018」には、伊東豊雄、妹島和世、アストリッド・クライン、マーク・ダイサム、藤森泰司、千葉学、アトリエ・ワン、槻橋修が登壇する。開催にあわせて、槇文彦、藤本壮介、名和晃平、清川あさみなどの建築家やアーティスト23名が参加するチャリティーオークションも開催される。

展示されているアートとデザインはすべて基本"買うことができる"という特徴をもつDESIGNART TOKYO。今年は買い物欲を満たしながらチャリティーにも貢献できる。


【DESIGNART TOKYO 2018】
会期/10月19日(金)~28日(日)
開催エリア/表参道・外苑前、原宿・明治神宮前、渋谷・恵比寿、代官山・中目黒、六本木・広尾など
詳細:http://designart.jp/


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19 10月, 2018

田根剛展 「未来の記憶」レポート/東京オペラシティ アートギャラリー

10月19日より東京オペラシティ アートギャラリーで開催の「田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future ─ Digging & Building」内覧会に行って来ました。

フランスを拠点に活動する建築家・田根 剛/Atelier Tsuyoshi Tane Architectsの、美術館における初の個展開催である。

TOTOギャラリー・間での同時開催の本展は、「Archaeology of the Future ─ 未来の記憶」を共通のテーマに、田根氏の密度の高いこれまでの活動と、建築は記憶を通じていかに未来をつくりうるかという挑戦を紹介。東京オペラシティアートギャラリーでは「Digging & Building」と題して、場所をめぐる記憶を発掘し、掘り下げ、飛躍させる手法と、そこから生み出された「エストニア国立博物館」「古墳スタジアム」といった代表作や最新プロジェクトを大型の模型や映像などによって体感的に展示する。


オープニングの挨拶をする田根剛氏。「二つの展覧会の同時期開催、パリと東京の時差など、数え切れない困難を乗り越えこの日を迎えることができました。事務所スタッフ、東京オペラシティアートギャラリーの皆さん、そしてクライアントなど多くの方々に支えられた」と途中涙で言葉を詰まらせた。「展覧会をつくるプロセスを通じて、自分自身これからどこに向かうべきなのかという未来を考える良い機会にもなりました」


建築をつくる際に、まず考古学者のように遠い時間を遡り掘り起こし、場所の記憶からはじめるという田根氏の創作の方法を示してくれる本展。入口では京都のプロジェクトで使用した古材をディスプレイ。本展の会場構成にも用いられている。


ギャラリー1。田根氏がどのプロジェクトにおいても実施するイメージとテキストを使ったリサーチの手法を、天井高6mの空間を使って展示。古代から未来へ向かう記憶を「IMPACT 衝撃は最も強い記憶となる」「COMPLEXITY 複雑性に記憶はない」「CLASSIFICATION 記憶は整理される」「ACCUMULATION 記憶は蓄積を繰り返す」など12のテーマで掘り下げる。




〈エストニア国立博物館〉2016
映像:藤井光


映像を見終えてギャラリー2に移動すると目の前に1/50のエストニア国立博物館の巨大模型が現れる。幅2m、長さ10m。スタッフが4ヶ月間かけて制作した。


エストニアの民族の記憶を継承するように軍用滑走路の延長線上に博物館を計画。内部には無数のパブリックスペースを配し、民族品の収集・展示・保存を超えた21世紀のナショナルミュージアムを目指した。


コンセプト模型。旧ソ連に支配される受難の歴史から、ゆっくりと大地が隆起し、空へ向かって延びていく記憶を未来へ繋ぐ建築。


ギャラリー2には代表作計7つのプロジェクトが、コンセプト模型や参考にした資料や素材などと共に展示されている。


それぞれのエリアはあるものの、ゆるやかな動線で境界のない世界観を表現。古材や歴史的資料が点在している様子は発掘現場のイメージ。


〈新国立競技場案 古墳スタジアム〉 2012 設計コンペ最終選考案
敷地は明治神宮の外苑である。外苑は文化とスポーツ振興の場として東京の未来へと開かれていたが、時代と共に本来の場所の意味を失いかけていた。そこに緑溢れ、人々が集まるスタジアムを提案した。


苔は本物(!)。定期的に水やりをして会期中大事に育てていくそうだ。


下から潜ってスタジアム内からの見上げを疑似体験できる。




〈10 kyoto〉進行中
京都十条で計画中の複合施設で、十字型のピラミッド型の建築。京都で解体された木材を集めて集成材を作り、それを用いて建物全体を覆うという古き財産を集め新しい文化に変えるプロジェクト。




〈A House for Oiso〉 2015
3500年前の縄文時代から人が暮らし、中世には宿場町、昭和には邸宅の並ぶ別荘地と変遷してきた大磯に建つ。縄文=竪穴、弥生=高床、中世=掘立柱、江戸=町家、昭和=邸宅と歴史を統合したような住宅。田根氏が初めて設計した住宅である。



〈Todoroki House in Valley〉2017-18


最後のコリドールではDorell.Ghotmeh.Tane/Architects時代のものを含む100を越える田根氏の全活動を紹介する年表(すべて紙に見えるがよく見ると映像資料がある)。

【田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future ─ Digging & Building】
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
会期:2018年10月19日〜 12月24日

連携企画
【田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Search & Research】
会場:TOTOギャラリー・間
会期:2018年10月18日~12月23日
詳細:https://jp.toto.com/gallerma/ex181018/index.htm


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