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敷地面積479m2、建築面積94m2、延床面積184m2。鎌倉特有の山を背負った敷地で、山と住宅地の境に位置する。
宅地化可能なエリア以外に、後方に見える山を含め土地全体は4,000m2ある。鎌倉市の条例で山の維持・管理ができなければこの土地を購入できないそうで、所有すると鎌倉の風土を守る責任を負うこととなる。
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敷地は更地であったが、既存の地下駐車場(右)から、大谷石の擁壁が続いていたものを左側半分を掘削し、駐車場兼ポケットパークのような役割を持たせる。
海辺→緩い坂を上る住宅街→敷地・建築→山と繋がるシークエンスの接続点として機能する。確かにここに擁壁が立ちはだかっていては、山と住宅街は分断される。
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地下駐車場だった場所はトンネル状の貸しギャラリー「INAMORI」として、街に対して積極的に開く。
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駐車場奥の土を掘り、穴を空けギャラリー併設の「喫茶スペース」へ通じる階段が現れる。
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階段を上がると1階に暖簾の掛かる喫茶スペース。右手には縁側、そして芝も見える。
建蔽率は何と19.6%。ゆったりと建っている。
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左に移動したところで全貌が露わになった。
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ここで模型を見て頂くと分かりやすい。地下ギャラリーを抜けて、敷地の上へ。掘削した駐車場の土は敷地後方へ運び、山へのアプローチし易いように斜面をなだらかにした。
取り囲むような山+森から生活圏、掘削した斜面や広場、街へと連続する様子が理解できる。
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奥の人がいるあたりから山への散策路も作っていく予定。右には家庭菜園作りが進行中で、既に収穫もしている。
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外壁はレッドシダー。
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建物は二つのボリュームが繋がったようなかたち。出窓やバルコニー、縁側、ピロティーなどなど、外へ繋がろうとするアクションが多彩だ。
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ピロティーには家族用の玄関や作業場がある。"山を管理・維持” しなければならないことから、DIYや畑仕事が大好きな奥さまのお父さんがしばしば訪れ、ご主人と共に庭造りや山道の開墾を進めている。
またギャラリーの延長としてワークショップなどの開催も視野に入れている。
またギャラリーの延長としてワークショップなどの開催も視野に入れている。
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正面には軒と庇を設え、ギャラリーから喫茶スペースにアプローチさせる。足元は真砂土と、左に見える飛び石は擁壁に使われていた大谷石を流用した。
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喫茶スペースは15席ほどの規模。右奥にキッチンがあるが生活用のキッチンでもあるので、家族が朝食をこちらでも摂るという。
天高は梁下で2m程と低め。それに合わせるようにテーブル高も低めで63cm、椅子も低く子どもたちを集めた地域のイベントなどに活用できるよう、大人用・子供用の中間の高さだ。
天高は梁下で2m程と低め。それに合わせるようにテーブル高も低めで63cm、椅子も低く子どもたちを集めた地域のイベントなどに活用できるよう、大人用・子供用の中間の高さだ。
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フロアの片隅には薪ストーブ。テーブルは台形で用途に応じて並べ方を変えられる。椅子やテーブルはフジワラボのデザインによるオリジナルだ。
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窓際席からは緑を切り取る全面開口。心地良い風が吹き抜ける。
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山と街の境に建つ建築の、外と内の境は絶妙に曖昧。
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内覧会当日は焼きおにぎりのランチとワインをいただいた。
今のところ木〜土で週2〜3日の営業なのでチェックしてからどうぞ。
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2階居住スペースへ。
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2階へ上がると直ぐに水回りが現れた。
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水回りは反対側にも通じており回遊型の動線をとっている。下の喫茶スペースが営業中でキッチンが使えないとき、お湯くらいは沸かせられるようにと手前にIHヒーターを備えた。
空間の中心が暗くならないようにトップライト。
空間の中心が暗くならないようにトップライト。
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2階の天高は高いところで3.5m。天井ぎりぎりまで開口を取り、山が室内に入り込んでくるようだ。
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反対側は3m以上の一枚ガラス。坂を上ってくるとこの窓がこの家のシンボルとして見えてくるのだ。
遠くに湘南の海も望むことができる。
遠くに湘南の海も望むことができる。
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ほぼ外のように感じられるフリースペース。
これだけ山に近いと窓枠の外には蜘蛛の巣がすぐ張られる。「掃除は大変ですが、それだけ自然に近い環境で暮らしているのだと実感する。」とお施主さん。
これだけ山に近いと窓枠の外には蜘蛛の巣がすぐ張られる。「掃除は大変ですが、それだけ自然に近い環境で暮らしているのだと実感する。」とお施主さん。
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水回りの裏は寝室。家族4人で川の字に寝ているという。子どもの成長に従って分割、或いはこの下のピロティーを改築して寝室にすることもできる。
右に見えるバルコニーは1枚上の写真で見えるバルコニーと同じなのでここも回遊動線だ。
右に見えるバルコニーは1枚上の写真で見えるバルコニーと同じなのでここも回遊動線だ。
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「お施主さんは30代のご夫婦と2人のお子さん(写真は違う)。東京の下町に暮らしていましたが東日本大震災で住宅に対する考え方が変わり、100年先になっても住み続けていくような『人間のための居場所』が必要だと感じたそうです。いくつかのイメージをもって依頼され、我々はこの住宅で街と森の境界を建築化しました。住むことと人を迎えること、様々な活動が渦を巻くように同居しながら、おおらかで協同的な状況をつくりだす多言語の建築を目指しました。」と藤原徹平さんと、担当の岩井一也さん。
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