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敷地面積176m2、建築面積66m2、延べ床面積115m2。木造2階建て。既存の住宅が建っていた状態で敷地を購入し、木や庭石、駐車場のタイルなどを残しながら建てた。
正面は南を向いているが、山が迫っているため11月にもなると正午頃でも影に隠れ始めた。
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横から見るとこのように。ファサードを山の斜面に対して逆の角度で傾斜させることで、特に2階で山からの圧迫感を軽減し、窓から空が見やすいようにした。
もう一つの大きな特徴は断面が同形状のまま、断層のようにずれていることだ。これについては中で説明。
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(©田辺雄之建築設計事務所)
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下にずらした西側のボリュームはゴロッとした台形の塊が表現できるよう一部地面から浮いている。急傾斜地特有の条例により、山の斜線に掛かる部分をRC造にする必要があることから、基礎の施工段階で一緒に浮かせて打設した。
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東側のボリューム下部は大きく口を開け、ポーチ兼ウッドデッキとして内外の接続部分とした。
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玄関扉を開けるとさっそく見せ場が現れた。傾斜した壁(屋根)の開口、段差、面の取り回しが単なる玄関ホールではなくなり楽しい。
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振り返ると益々表情豊かだ。
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1階には水回りと主寝室。主寝室の周囲をL字形に土間(廊下)が計画され、居室とは明らかに違う使い方が生まれそうだ。
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床下には蓄熱式床冷暖房を採用。
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右手に寝室の開口があることから、土間は縁側のようにも見える。
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縁側という言葉を使った途端に、ウッドデッキは濡れ縁と呼びたくなるから不思議だ。
インドア派だった施主は、仕事でアメリカに赴任している間にすっかりアウトドア派になり、帰国してからは東京への通勤圏内でありながら自然が豊かな土地を探し、家にはカヤックを置くための土間やバーベキューができるスペースを望んだ。
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主寝室。
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土間を介して外が見える。
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2階へ。玄関ホールを愛でるような階段と踊り場。正面にLDK、左に子供室がある。
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子供室。山の緑が見える環境。
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踊り場から。建物がずれているのが確認できる。
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台形の開口を抜けると台形のLDK空間が広がる。床や造作部分には乱幅のカラマツ材を浮造り+ラフソーン加工して使用。
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反対側を見るとズレの部分を利用してハイサイドライトを設け、西側からも採光を得ることができた。
右に上っていく階段の先から屋上に出られる。
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ボリュームのズレは屋根面で175cmある。ボリューム同士を繋ぐこの開口高さを重視しながら、床レベルには55cmの変化をもたせた。分けられたボリュームは光量や室の性格も変わっている。
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1階から2階、屋上への動線が一目で見えるカット。「シーンの切り替わりを大切にする動線をいつも心掛ける。」と田辺さん。
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正面開口の位置、大きさ、形状も様々に検討した。
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キッチンは、指物職人である「ペッタンコハウス(2015年)」の施主と工務店による共作。カラマツとシナランバーで構成されている。
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田辺雄之さん。「東西のボリュームは金太郎飴のように同断面のままずらすことで、用途に適した光豊かな内部空間が生まれました。外構から玄関かまで高低差をコントロールしながらつながり、そのままスキップフロアのような空間を屋上まで一筆書きのように連続していく構成は、アウトドアを好むお施主さんのために計画しました。」
【LL House】
建築設計:田辺雄之建築設計事務所
構造設計:樅建築事務所
施工:川口建築
キッチン:atelier m4
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