1994年竣工で、故小嶋一浩と共に、入所したての赤松佳珠子が初めて担当した建築だ。施主がこの住宅を手放すこととなり、この度見学の機会が設けられた。
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当初の玄関から。スタッコ仕上げのブルーの壁が天井まで伸びる。
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玄関の左は地下室で、24年のうち様々に用途が変わってきた。二人のお子さんは既に独立し、現在はあまり使われていない。
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1階LDKに上がると今度はシルバーの壁が現れた。2層の吹き抜けだが、正面上のモルタル仕上げの部分は寝室が木造で増築されている。増築などの改修は建築関係の仕事をしているご主人自ら手掛けた。
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ポリカーボネート中空板のトップライトと、筆者背後の全面開口により非常に明るい空間だ。
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オリジナルでは空間の対角まで見通せる大きな気積。右上2階は同じくポリカで仕切られた和室。木漏れ日のようにランダムな光がそこかしこから差し込んでいる。
(photo: CAt)
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振り返って、大開口の先は住宅街の通りに直角に面しており、視界が遠くまで抜ける。
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過去に掲載された誌面を広げながら説明して下さった赤松さん。平面はジグザグになっている。また大きな壁面が象徴的に感じられるよう3面を塗り分けた。
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(photo: CAt)
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振り返って、大開口の先は住宅街の通りに直角に面しており、視界が遠くまで抜ける。
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過去に掲載された誌面を広げながら説明して下さった赤松さん。平面はジグザグになっている。また大きな壁面が象徴的に感じられるよう3面を塗り分けた。
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薄肉床壁構造。構造部である薄い壁・床(天井)と、その間をさらに半分程の厚みの薄い壁で塞ぐようなかたちだ。薄い部分は要所要所で開口とし、建物の隅々に外光が行き届くよう工夫されている。
キッチンの背後は水回りになる。
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上部の棚は後ほど取り付けられた。
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水回りはギザギザ平面から矩形が飛び出すような形で、キッチンと合わせて2階の居室の下になる。打ち放しの浴室が四半世紀でどのような経年変化をするのか、設計者にとっては興味深いのではないだろうか。(かなりきれいだ)
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ダイニングと階段室は一枚の構造壁で隔てられる。階段室は全面トップライト。階段を上がると洗面台とその隣がトイレ。
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扉の向こうはオリジナルの居室(キッチンと水回りの上)でご主人のお母さまの部屋。その右手に増築したご主人の寝室と、ちらりと見える階段は屋上へ通じる。
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寝室。大きな三角形のトップライトはかつてダイニングを照らしていた。
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屋上へはハッチを開け出入りする。ハッチもトップライトとして機能するよう透明する計画であったが、性能面やコスト面から今のものになった。
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キッチンの脇から見上げるとこのように光が導かれる。グレーチングの階段で十分な光を落とそうとする場合、この位目の粗いグレーチングが必要なようだ。
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屋上は緑化仕様で、数年前まで芝が生えていた。竣工から2年間、東工大の屋上緑化による実験のモニターとして、緑化による室内温度のデータ取りに協力していた。その効果はてきめんだという。
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竣工当時の同じカット。造成されたばかりの敷地が牧場のように広がる。
トップライト部の上に突き出す円筒は、屋外から照らす室内照明だ。
(photo: CAt)
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部屋を抜け見上げると3層の吹き抜け。空気循環用のパイプが通してあり、冬は上層の暖かい空気を地下まで送り、夏は下層の涼しい空気を上に送り循環させる。科学応用冷暖研究所の髙間三郎さんのアドバイスで、逆回転できるパイプファンを取り付けている。
ポリカの扉はこの光を部屋に取り込むためだと分かった。
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納戸を回り込んでもう一つの子供部屋。
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1階で説明した床に開いたトップライトから光が差し込む様子と、構造がよく分かる。
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そして最初の表に面した部屋に通じる。
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一度外へ出て現在の玄関へ。階段状に植え込みが4段連続する。
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玄関。正面の扉部分は庭に面した大きなガラス窓だった。
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当時の施工の様子を探るCAtの皆さん。
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赤松佳珠子さんと、施主の戸松俊さん。
「新人の赤松さんは初めての担当プロジェクトで張り切っていたのか、毎日のように現場を訪れ、真っ黒に日焼けしていました。」と戸松さん。
「建蔽40%の敷地で延床が85m2くらいしか取れませんでした。そこに家族5人がのびのびと過ごせるためには敷地に対してどのように置くかが重要でした。ジグザグの平面は外部に坪庭のような空間を生み、そこを内部の延長に感じられるようにし、かつ部屋の中に死角をつくり、同じ空間で別々に過ごすことが窮屈にならないよう目指しました。」と赤松さん。
なおこの住宅は仲介業者を介して、建物ごと売りに出される予定。「シーラカンス作」ということで解体せずにどなたかに住み続けて欲しいものだ。
【HOUSE TM】
設計:シーラカンス
構造:TIS&PARTNERS
施工:親松工務店
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