まずは本展の概要を確認していただきたい。
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上映作品のタイムテーブル。
5作品と聞いていたが、急遽1作品追加され6作品が上映される。インターバルを挟んで全て観るとちょうど1時間。上の分針のみの時計で、大体今どの辺りを上映しているかが分かる。
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今回は映像だけなのかと心配された方は安心していただきたい。ロビーには撮影された建築の模型や、スケッチ、図面などのほか、撮影で使われた小道具などが並ぶ。
これから観る映画の予備知識を得る、或いは観た後にまた戻ることで理解を深めることが出来る。
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フリーハンドで描かれたような展示台と、実際フリーハンドで描かれた線によって、やんわりと作品ごとのゾーニングがなされている。
プロジェクトの進め方は線形ではなく、様々な思いつきがランダムにいつも広げられているような状態をここでも表現した。
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キャプションは全て中山さんが鉛筆で直に書いたもの。
プロジェクトの説明だけでなく、あるものを見たときに感じたことや、答え、プロジェクト同士の間にある思想を理解してもらう、謎解きのように楽しんでもらえる。どこから考えはじめたのか分からないが、どこから見始めても物語が見えてくる構成になっている。
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〈O邸〉 2009年/京都
京都市に建つ、京都工芸繊維大学の教授であり、dezain.netを立ち上げた岡田栄造氏の自邸。高さ7mの薄い切妻のボリュームはカーブを描き、奥が見通せない路地のような建物。
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〈岡田邸〉(O邸)
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中山英之さんと、岡田栄造さん(右)は20年来の友人だという。
「子どもが大きくなるに連れ、どんどん狭くなっていくが居場所を探すのが楽しい。」「中山さんは、特に垂直方向の設計が天才的。普通、2階から1階に降りてきて、忘れ物に気づき2階に戻るのはおっくうなものだが、この家の階段だとまた戻るのが嬉しくなる。」と岡田さん。
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〈弦と弧〉 2017年/東京
複雑な構成を持つこの事務所兼住宅の設計を進めるために、様々な素材の模型で検討されてきたことが分かる。
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2階建て分の高さの空間に10層のプレートを持つ。重なり合うプレートの中央だけが吹き抜けになっており各層を繋ぐ。
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〈弦と弧〉
層の変化を最適に撮影するために、吹き抜け部分を垂直に移動する装置を「開発」。その装置にリコーの全天球カメラ "シータ" を用い撮影し、横に長いスリット状の映像をつくり出した。
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垂直撮影に使われた装置がこれ。中山事務所の若手が手作りしたというが、撮影や演出、編集にはもちろん中山事務所は関わっていない。
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〈道と家〉 2013年/東京
竣工後未発表作で、本展にて初公開となる作品。
3面接道の敷地に仕上げの異なる同じ大きさの棟が二つ、その間にアスファルトの道を通し、両側に扉を付けることで周辺と接続したり、切り離されたりする。
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〈道と家〉
竣工時の施主は住んでいない。"それから = and then" 新しい住まい手は小さな男の子のいる三人家族。その日常が4台の定点カメラによって撮影され、それぞれが4曲のピアノ伴奏曲にと共に順に流れる。棟は分かれているが、実は地下で繋がっていることがいずれ理解できる。
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閉園した薬草園とその展示室を、果物とハーブを使った蒸溜所へコンバージョンしたプロジェクト。
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映像はこのように江口氏が頭にGoProを付けて撮影された。
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〈mitosaya薬草園蒸留所〉
閉園後手付かずで放置された施設に生活そのものを移し新しく蘇らせていく。果物やハーブを運び、洗浄し、砕き、蒸溜器に投入し、抽出し、パッケージングするといった日々の営みを一人称カメラが黙々と伝える。
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アポロ16号の月面探査の映像は、展示で使うためNASAに許可を取ったそうだ。オープンソースなので本来その必要はないが、「『展覧会の成功を祈る』と返信をもらい、『ミッションの成功を祈る』とNASAっぽく言われたようで嬉しかった。」と中山さん。
この映像から流れる音声で会場が満たされるようになっているので、是非キャプションを読んでいただきたい。
〈かみのいし〉に関する映画は、「急遽加えられたシークレット」とのことで、ここでもシークレットとしておく。
展覧会概要:
「この展覧会は、いくつかの映像からなります。
過去に建ち、僕たち設計者の知らない時間を過ごしてきた建物たちを映したものが主です。だからこれは、建築の展覧会というよりも建築のそれから/, and thenを眺める上映会、と言ったほうが正しいかもしれません。
『それから』の時間に建築家は関わることができないように、それぞれの映像も別人によって撮られ、編集されたものです。だからこれは、ばらばらなイメージの並んだ小さな映画祭のような展覧会、と言うこともできるかもしれません。
もちろん映っている建築についてなら僕たちも、カーテンの開閉機構の仕組みから影響を受けた映画監督の言葉まで、全てを知っています。ギャラリーがこの期間だけ小さな映画館になるのなら、それらが展示されたロビーも忘れずに用意したいと思います。
もうひとつ。
映像には始まりと終わりがあるので、好きな時に行き、自分のペースで会場を回れる展覧会とは、ちょっぴり相性が良くないかもしれません。そんな意味でも展覧会には、できれば映画館に出かけるような気分で来てもらえたら嬉しいです。」中山英之
「この展覧会は、いくつかの映像からなります。
過去に建ち、僕たち設計者の知らない時間を過ごしてきた建物たちを映したものが主です。だからこれは、建築の展覧会というよりも建築のそれから/, and thenを眺める上映会、と言ったほうが正しいかもしれません。
『それから』の時間に建築家は関わることができないように、それぞれの映像も別人によって撮られ、編集されたものです。だからこれは、ばらばらなイメージの並んだ小さな映画祭のような展覧会、と言うこともできるかもしれません。
もちろん映っている建築についてなら僕たちも、カーテンの開閉機構の仕組みから影響を受けた映画監督の言葉まで、全てを知っています。ギャラリーがこの期間だけ小さな映画館になるのなら、それらが展示されたロビーも忘れずに用意したいと思います。
もうひとつ。
映像には始まりと終わりがあるので、好きな時に行き、自分のペースで会場を回れる展覧会とは、ちょっぴり相性が良くないかもしれません。そんな意味でも展覧会には、できれば映画館に出かけるような気分で来てもらえたら嬉しいです。」中山英之
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概要で分かるように今回の展覧会は "映画館" なので、いつもの3階エントランスは映画館のチケット売り場のようになっている。
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上映作品のタイムテーブル。
5作品と聞いていたが、急遽1作品追加され6作品が上映される。インターバルを挟んで全て観るとちょうど1時間。上の分針のみの時計で、大体今どの辺りを上映しているかが分かる。
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今回は映像だけなのかと心配された方は安心していただきたい。ロビーには撮影された建築の模型や、スケッチ、図面などのほか、撮影で使われた小道具などが並ぶ。
これから観る映画の予備知識を得る、或いは観た後にまた戻ることで理解を深めることが出来る。
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フリーハンドで描かれたような展示台と、実際フリーハンドで描かれた線によって、やんわりと作品ごとのゾーニングがなされている。
プロジェクトの進め方は線形ではなく、様々な思いつきがランダムにいつも広げられているような状態をここでも表現した。
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キャプションは全て中山さんが鉛筆で直に書いたもの。
プロジェクトの説明だけでなく、あるものを見たときに感じたことや、答え、プロジェクト同士の間にある思想を理解してもらう、謎解きのように楽しんでもらえる。どこから考えはじめたのか分からないが、どこから見始めても物語が見えてくる構成になっている。
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〈O邸〉 2009年/京都
京都市に建つ、京都工芸繊維大学の教授であり、dezain.netを立ち上げた岡田栄造氏の自邸。高さ7mの薄い切妻のボリュームはカーブを描き、奥が見通せない路地のような建物。
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〈岡田邸〉(O邸)
岡田氏自らが撮影した自邸のありのままの姿を映す。元々3人家族向けに設計された住宅は "それから = and then" 5人で住む家となっている。
挿入される音楽は中山さんが大好きだという「空間現代」が担当した。偶然岡田邸の近くに本拠地があり、中山さんが頼んだわけでもないのに、岡田さんが音楽を依頼したそうだ。
挿入される音楽は中山さんが大好きだという「空間現代」が担当した。偶然岡田邸の近くに本拠地があり、中山さんが頼んだわけでもないのに、岡田さんが音楽を依頼したそうだ。
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中山英之さんと、岡田栄造さん(右)は20年来の友人だという。
「子どもが大きくなるに連れ、どんどん狭くなっていくが居場所を探すのが楽しい。」「中山さんは、特に垂直方向の設計が天才的。普通、2階から1階に降りてきて、忘れ物に気づき2階に戻るのはおっくうなものだが、この家の階段だとまた戻るのが嬉しくなる。」と岡田さん。
会場にはSD Review展での展示物を倉庫から出してきて、当時のものを並べた。
「今自分で見ると鳥肌が立つほど恥ずかしいスケッチもそのまま展示した。」と中山さん。
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その敷地が出来るだけ "地面" であって欲しいことから、地面から浮いた家。
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〈2004〉
現オーナーは施主でなく、別な方が所有している。そのため撮影ができないので本展用のリストから外れていたが、かつて中山さんが出会った韓国人アーティストYU SORAが参画することとなり、YUの希望により本プロジェクトが選ばれた。
撮影は出来ないため、竣工時の写真や図面などを元にYUによるアニメーション作品となっている。
「今自分で見ると鳥肌が立つほど恥ずかしいスケッチもそのまま展示した。」と中山さん。
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その敷地が出来るだけ "地面" であって欲しいことから、地面から浮いた家。
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〈2004〉
現オーナーは施主でなく、別な方が所有している。そのため撮影ができないので本展用のリストから外れていたが、かつて中山さんが出会った韓国人アーティストYU SORAが参画することとなり、YUの希望により本プロジェクトが選ばれた。
撮影は出来ないため、竣工時の写真や図面などを元にYUによるアニメーション作品となっている。
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〈弦と弧〉 2017年/東京
複雑な構成を持つこの事務所兼住宅の設計を進めるために、様々な素材の模型で検討されてきたことが分かる。
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2階建て分の高さの空間に10層のプレートを持つ。重なり合うプレートの中央だけが吹き抜けになっており各層を繋ぐ。
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〈弦と弧〉
層の変化を最適に撮影するために、吹き抜け部分を垂直に移動する装置を「開発」。その装置にリコーの全天球カメラ "シータ" を用い撮影し、横に長いスリット状の映像をつくり出した。
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垂直撮影に使われた装置がこれ。中山事務所の若手が手作りしたというが、撮影や演出、編集にはもちろん中山事務所は関わっていない。
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〈道と家〉 2013年/東京
竣工後未発表作で、本展にて初公開となる作品。
3面接道の敷地に仕上げの異なる同じ大きさの棟が二つ、その間にアスファルトの道を通し、両側に扉を付けることで周辺と接続したり、切り離されたりする。
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〈道と家〉
竣工時の施主は住んでいない。"それから = and then" 新しい住まい手は小さな男の子のいる三人家族。その日常が4台の定点カメラによって撮影され、それぞれが4曲のピアノ伴奏曲にと共に順に流れる。棟は分かれているが、実は地下で繋がっていることがいずれ理解できる。
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閉園した薬草園とその展示室を、果物とハーブを使った蒸溜所へコンバージョンしたプロジェクト。
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映像はこのように江口氏が頭にGoProを付けて撮影された。
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〈mitosaya薬草園蒸留所〉
閉園後手付かずで放置された施設に生活そのものを移し新しく蘇らせていく。果物やハーブを運び、洗浄し、砕き、蒸溜器に投入し、抽出し、パッケージングするといった日々の営みを一人称カメラが黙々と伝える。
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アポロ16号の月面探査の映像は、展示で使うためNASAに許可を取ったそうだ。オープンソースなので本来その必要はないが、「『展覧会の成功を祈る』と返信をもらい、『ミッションの成功を祈る』とNASAっぽく言われたようで嬉しかった。」と中山さん。
この映像から流れる音声で会場が満たされるようになっているので、是非キャプションを読んでいただきたい。
〈かみのいし〉に関する映画は、「急遽加えられたシークレット」とのことで、ここでもシークレットとしておく。
中山英之さん
何にも興味が持てずいた高校生のとき、偶然ザハ・ハディドの展覧会を観て雷に打たれたような衝撃が身体を走り、それから建築家を目指そうと思った中山さん。建築に興味が湧くと、その他の様々なことに興味の対象が開いていき、高校の頃とは違う新しい世界が建築によって始まったという。
「建築の展覧会で時々映像コーナーがあるが、実は自分はあまり好きではない。しかし今回その自分の好きではないことをして成り立つだろうかと。であるなら思い切って「GALLERY MA」を「CINE MA」と言い切ってしまえば、映画を見に行くとき時間を予め決めて、その時間をどのように過ごそうかと考えながら、友だちや恋人を誘うのではないかと、そんな使い方をしてもらいながら、建築に興味がない人でも、この展覧会を楽しんでもらえるのではないでしょうか。」
【ギャラリートーク】
6月7日から7月26日の間、計8回トークや映画上映会が開催。
詳細:https://jp.toto.com/gallerma/ex190523/talk.htm
【中山英之展 , and then】
6月7日から7月26日の間、計8回トークや映画上映会が開催。
詳細:https://jp.toto.com/gallerma/ex190523/talk.htm
【中山英之展 , and then】
会期:2019年5月23日~8月4日(入場無料、月曜・祝日休館)
会場:TOTOギャラリー・間(港区南青山1-24-3)
詳細:https://jp.toto.com/gallerma/ex190523/index.htm
会場:TOTOギャラリー・間(港区南青山1-24-3)
詳細:https://jp.toto.com/gallerma/ex190523/index.htm
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