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26 3月, 2018

番場俊宏/abanbaによる世田谷区「桜新町の集合住宅」

番場俊宏+番場絵里香+仲田裕貴/abanba(エイバンバ)による世田谷区「桜新町の集合住宅–SAKRAS」を見学してきました。
東急田園都市線 桜新町駅から徒歩8分程の場所。


敷地面積241m2、延床面積500m2。WRC造4階建、12住戸からなる共同住宅。


敷地の中央に小径を通して棟を分け、大きなコンクリートの塊が住宅地に立ちはだからないようにした。敷地がちょうど扇型に開いた形状をしていることから生まれたアイデアで、文字通り街に対して開いた印象を持たせながら、内外を繋ぐ接続機能を併せ持つ。


側面から見ると、奥の北側にもう一つ2層の棟がある。斜線制限をクリアしながら計画した様子が伺える。


エントランスにはエキスパンドメタルを張った鉄扉が付く。開けると迷い込みたくなるような小径が現れた。


小径の奥から見返す。ほの暗い廊下の先に道路沿いの植栽が鮮やかに見える。
左に階段、右にエレベーターも備わる。


抜けると一度中庭へ出た。


ここでは3つの棟が合わさる様子がよく分かる。


奥の2層の棟、2階住戸へは専用階段でアクセスする。


3層の棟の階段室。限られたスペースで踊り場が設けられないため、複雑な型枠設計が求められたようだ。


102号室。1階住戸では通り(外)とは接触を遮断するのではなく、植栽越しに見え隠れしながらの連続的な接し方だ。


204号室。タイル、フローリング、乾式壁の塗り分けなど、仕上げを変えながらゾーニングされている。




302号室。通りに面する外壁の開口は掃き出し窓と、開閉は縦すべり出しを基本とする
門型の開口に門型の袖壁・垂れ壁でゾーニング。


この住戸は奥行きのあるプランで、門型をくぐりながら奥へ続く。
照明はスライドレールにスポットを備えた。


廊下状の空間に水回りと、


ハイデスクが作り付けられたユーティリティースペース、


そして寝室へと連続する1LDK。右には小さいながらもウォークインクローゼットも。
半分天井が低いのは北側斜線をかわしたためだが、結果変化のあるおもしろい空間になっている。


303号室。大きなT字型の壁は、住まい方を刺激しそうだ。


401号室。最上階には1住戸のみのペントハウスのようだ。


室内は門型仕切り壁の現れ方がかなり大胆。クローゼットは容量のある大きなものだが、足元を浮かせ圧迫感を軽減している。


奥に水回りとルーフバルコニーへのアクセスができる。




屋上の一部がプライベートルーフバルコニー。建設中の渋谷の高層ビル群も見通せる。


番場俊宏さん(右)と、担当の仲田裕貴さん(左)。
「アパートの収益性も考慮しながらもボリューム一杯に建てるのではなく、街に対する建ち姿も考慮しました。住み手には住まい方の幅が広がるようなきっかけ作りと、外部が内部に取り込まれてくるような、建築を楽しんでもらえるデザインを心掛けました。」

【桜新町の集合住宅 – SAKRAS】
建築設計:エイバンバ(番場俊宏+番場絵里香+仲田裕貴)
構造設計:ハシゴダカ建築設計事務所
施工:栄港建設


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15 3月, 2018

石井秀樹による世田谷の「尾山台の家」

石井秀樹(石井秀樹建築設計事務所)による世田谷区の住宅「尾山台の家」を見学してきました。


敷地面積618m2、建築面積277m2、延床面積459m2。RC造+一部S造、2階建て。
重厚な外壁に雲のような模様が見えるのは、還元タイルを張った後グラインダーで削って表情を出したものだ。
なお、門扉の幅は7mあるのでスケールを想像していただきたい。


人の出入りは側面の玄関から。
植栽はSOLSOが担当。世田谷区の風致地区の「緑化地域制度」適用建築であるため植栽に細かな規定がある。この敷地規模では例えば中木(1m〜2.5m)7本を植えなければならない、など。


塀の内側に一枚鉄扉が付き、開けるとポーチが現れる。


ポーチから玄関ホールへ連続するブリティッシュストーン張りの床。右にガレージ、正面にピロティが伸びる。


玄関ホールの見返し。右にシューズクローゼット。


ピロティーの突き当たりに半透明の壁が見える。


ガラスアート作家に作ってもらった雪花ガラスのオブジェだ。


玄関ホールから右に抜けてガレージへ。3台分のスペースと広場を挟んでもう3台駐車できる。
左の開口はホビールーム。


ガレージにはスーパーカーが何台か納まる。ホビールームからはそれらを愛でられるピクチャーウィンドウを設えた。


両翼のガレージには手動と電動のガラス引戸が付く。ヨーロッパのスーパーカーが映えるよう、床は全面ピンコロ石仕上げだ。


ピロティを挟んで中庭には植栽と水盤。その左にはプールへと連続する。


中庭には低木と舎利木。この舎利木は山火事に遭った森から運んできたそうだ。


玄関横の階段室から室内へ。ステップの隙間から水盤が覗き、夜にはライトに照らされる。


プール。長さ20m、幅2m、水深は1.2mある本格的なサイズ。


片側は全面開口で中庭に面する。ガラスは全てフィックスで出入りはできない。




2階へ。


階段室の大開口はルイス・バラガンを彷彿させる。中庭や渡り廊下のダイナミックな構成を眺められる。


階段を上がるとギャラリーが現れる。奥へ進むと主寝室や子供室に通じる。
天井はウォルナット、床はイペ。


ギャラリーからプライベートゾーンである寝室や水回りへ。


プライベートとパブリックを分ける、結界の役目でもある吹き抜けの中庭を渡り廊下が繋ぐ。


主寝室。全面開口だが、ギャラリーの壁が水平方向のプライバシーを守り、上下に異なる眺めを享受できる。
出入りの引戸の板は、躯体のコンクリート型枠の杉板と幅を合わせてある。右はウォークインクローゼット。


クローゼットはリンクスヒンジドア。壁をフラットにするためのこだわりで、いくつかのドアに採用している。


一度ギャラリーへ出て子供室へ。渡り廊下の先で二部屋に分かれる。


一室は主寝室とバルコニーを共用する。


リビングダイニング。左に造り付けの薪ストーブ。右手から正面に回り込む壁は外壁と同じ、還元タイル・グラインダー仕上げ。その上にハイサイドライトを設け、大屋根が軽やかに乗っている。
タイルの仕上げは、陶器二三雄が手掛けた森鴎外記念館を参考にしたもので、石井さんはいつかやってみたいと思っていたそうだ。


ダイニングとリビングはレベルを変え、緩やかにゾーニングした。



美術館かと見紛うカット。


キッチンはシンクと作業台をアイランドにしてレンジフードが空間に出ないようにした。


天板は美しいグリーンが特徴のイギリス産バーリントンストーン。


キッチンの裏へ廊下が伸び、パントリー、物干し、家事室、水回りが続く。


家事室を抜けるとサウナ、洗面、浴室へ。浴槽の周囲は十和田石で仕上げた。ここを抜けると主寝室へ通じる廊下に繋がるという、プライベートエリアは回遊性のある動線だ。


最後に広場を囲むバルコニーへ。リビング側は大きくせり出した庇を持つ。


向かい側はテラス状に広がる空中ガーデン。


オリーブや柑橘などの果樹やハーブを植えた。正面の部屋は開口を低く抑えた落ち着いた客間。


石井秀樹さん。「スーパーカー6台の駐車スペース、20mの屋内プールというのが基本要件でした。プールの位置はあまり選択肢がなかったのでそこに決めました。スーパーカーは生活の中心ではなく、時折存在が感じられるようにとのことだったので左右に振り分け、中心に広場を設けました。通常の個人住宅のスケールよりはるかに大きな住宅なので、間延びしないようオブジェ的な要素を散りばめながら、繊細なディテールを積み上げ密度をあげていきました。そしてプライベートエリアとパブリックエリアのゾーニングと回遊性など、ドラマチックな生活が演出できるよう動線も工夫しました。」

【尾山台の家】
設計:石井秀樹建築設計事務所
構造:大賀建築構造設計事務所
施工:アーキッシュギャラリー
植栽:SOLSO



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