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09 11月, 2018

小大建築設計事務所による「小⇔大展」レポート

11月3日からプリズミックギャラリーで始まった、小嶋伸也+小嶋綾香/小大建築設計事務所による「小⇔大展」に行ってきました。


展覧会概要、要約
「事務所設立から4年、ある時は都内の狭小地にホテルを設計し、密集地域特有のプライバシー問題に向き合い、またある時は中国の携帯電話も通じない山村で、図面も読めない職人達と炎天下の中議論し、またある時はルーブル美術館でも展示した移動する建築ではファッションデザイナーと試行錯誤を繰り返した。プロジェクト毎の文化的背景や地域の習慣も大きく異なり、思いもしないタブーを指摘され、想像もしないドラマが次々と降りかかり続けた・・・


核心を突くアイデアにはとても大きな力があると信じている。それは多くの関係者を巻き込みながら成長していく力強さがある。そしてそのアイデアは我々の手を離れた後も人々を惹きつける力があると信じている。
建築は複雑なパズルのようでだが、無数の形のゴールがある喜びがある。地道な検討の上に誰も見たことのないような、ピースがパチッとはまる瞬間を我々は追い求めている。」


そんな様々なドラマを抱えた7つのプロジェクトを通して、その実践の一部を紹介している。


〈Origin villa〉中国浙江省 2018年12月竣工予定
中国農村部の廃れた限界集落の6棟を解体して宿泊施設を新築し、村を再生するプロジェクト。


生活感溢れる集落に馴染みすぎては観光客は望めない、しかし集落と調和する必要もあるという相反する2つの要件がテーマ。




〈Hotel Comfact〉東京
間口6m、細長い敷地に建つ11階建てのホテル。


室内空間を取るために、4mピッチで250mm角の極細柱に設定。


かつ、柱の散り(段差)を無駄なく利用するインテリアを検討している。


〈Hotel C〉中国成都
6棟のホテルを各国から招待された建築家によって進められているホテル。与えられた位置は他の5棟に囲まれた中央広場であるため、周囲の個性的な棟を眺められながらもプライバシーに配慮する計画。


〈NAKAMA des ARTS〉ルーブル美術館内シャルル5世ホール
香取慎吾の個展のための会場デザイン。


香取慎吾の国境や領域に縛られない、ボーダーレスなアート活動を体現した展示空間を目指した。


〈Anju〉帝国ホテルプラザ
香取慎吾とのコラボレーション作品。防災頭巾から着想したパーツをジッパーで結束しながら積み上げていく。


一つ一つは柔らかいが、集まり結束することで強い空間を生みだす。頭巾には香取慎吾の絵画が転写されており、アーティストの世界観に包まれる空間となる。
参考:SDレビュー2015入選展


他にも展示作品があるので会場でじっくりみていただきたい。

【小⇔大展】
会期:2018年11月3日 ~ 12月22日
会場:プリズミックギャラリー
詳細:www.prismic.co.jp/gallery/works/?p=2315


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01 11月, 2018

井手孝太郎による世田谷の住宅「Path」

井手孝太郎(アールテクニック)による世田谷の住宅「Path」を見学してきました。


敷地面積292m2、建築面積146m2、延床面積396m2。RC造、3階建て。
多角形のボリュームで組まれたような基壇に、二つの棟が乗り、ただ者ではない建築であることが容易に想像できる。
左右にトンネルが口を開けているようだが、左が車庫、右が玄関になる。


車庫。ここまでデザインに力を入れた車庫はなかなかないだろう。ショールームではなく個人住宅だ。


車1台とバイクや自転車を数台停められるスペース。


玄関へは、砕石が樹脂舗装された数段のステップを伴うアプローチ。透水性が高く水溜まりが全くできない。
玄関扉は鉄製(亜鉛メッキ+リン酸亜鉛)で建物の迫力に負けないように力強い。


玄関扉を入ると眼前に立体的な中庭が広がる。山道とも洞窟とも取れるような小径が、段床や階段と同化しながら奥まで続いている。
右手に見えるのは収納や下足入れで、右端が下履き動線で、中央が上履き動線となる。


振り返るとカーペット敷きの小上がりスペースが。大型のテレビも備わり、子どものゲーム仲間が集まるスペースだとか。玄関のすぐ脇で気兼ねなく遊べる。


照明を点けると間接照明により違った意匠が浮かび上がる。
この住宅の照明は殆どが間接照明で、動線ではスイッチパネルを設けず人感センサーで点灯する。


下足入れ側。玄関から動線が並行に二つあるという贅沢なつくり。


奥まで進んだところで見返す。階段、いや小径は回り込みながら続くが居室はまだ現れない。
右下はガレージへ通じる。


中庭を囲むようにU字型の建物が建っているのが分かった。そしてここは山であり谷だということも。


単なる動線ではなく、山を踏みしめながら出来上がった小径 = "Path" なのだ。


上りきるとキッチンとダイニング。大開口から谷を見渡すことができ、下に玄関からの小径が見える。
不整形なダイニングの平面と合わせるように作り付けられたテーブルは、大判の一枚タイルの天板だ。


キッチンの奥にはパントリーとエレベーターが備わる。エレベーターは1階から屋上まで4層を結ぶ、家事には重要なショートカットとなる。
この建築の物語を紡ぐ動線は、豊かな居場所の提供と、シーンの変化を生みだすが、それが不合理なもので留まってはならないよう配慮されている。


段差の付けられた天井は造作ではなくRCの躯体ままだ。段差の縁に付くはスチール(亜鉛メッキ+リン酸亜鉛)のフレームには照明が納まる。
木繊セメント板はコンクリート型枠としてそのまま使ったもので、テクスチャーとしての豊かさはもちろん、吸音や調湿の効果をもたらす。


ダイニングの奥はリビング。こちらも複雑な段床と岩山を彷彿させるオリジナルのソファ。六角形の部分はオットマン。


照明を点けると違う空間が現れたようだ。


リビングの開口2面にのみ外付けブラインドが備わる。


この建物、中庭に面した内側は複雑な多面で構成されているものの、外側は敷地なりのシンプルな矩形だ。それが感じられないように、角にはエレベーターや洗面室を配し、各所が家具で作り込まれている。


半階上がって子どものフロアへ。


子どもフロアは、まず造り付けのデスクと、洗面室とシェルフが並ぶスタディスペース。奥に子どもたちの寝室がある。


ホテルライクな洗面室。


スタディスペースを見返す。正面と右手の外壁は直角なのだが、雑壁、建具、家具によって作り込まれ、どこが角なのか全く分からない。


振り返ると、立体的に配された子ども室が3室。


6角形や7角形の平面と凹凸のある断面。


それぞれ形や、開口からの景色が異なる。


3階へは親の寝室。どこまで上がっても植栽が見える。


奥さまの寝室。化粧台や、ベッド脇でリラックスしながら読書できるように設えてある。


ご主人の寝室。可動式のテレビや大容量の収納が設えてある。奥は2階のリビングに通じており、仕事で遅く帰ってきたときなどにも短い動線で部屋に入ることができる。


半階上がって見返す。そして水回りへ。


山登りもいよいよ9合目。抜かりなく統一された雰囲気を持つ水回り。


段床は浴室でも続く。


カルデバイのホーロー浴槽に浸かりながら、植栽と空を眺められる開放的な浴室。


露天風呂の雰囲気だ。


遂に山頂(屋上)へ。
この造形は模型を作らずに全て3DCADのみで検討・設計していくという。


柱壁が上下フロアで接続していない箇所が多く、「構造計算ができない」と構造家が何度か変わった。
そして施工業者は複雑すぎて施工図が描けない、配筋業者はどこに配筋すればよいか分からない、など全ての関係業者にとってチャレンジだったそうだ。


屋上にはアウターリビングが設えられた都心のオアシスだ。階段でもエレベーターでもアクセスできる。


子ども室のあった辺りの外観はこのように。
植栽は30面近くあり、業者による定期的なメンテナンスが当然必要だ。


井手孝太郎さん。「全てPC上の三次元空間の中で立体で計画します。全体構成を押さえた後は、シーンを紡ぐように、一つ一つの空間を手で掘り進めていくような作業でした。そこに手彫りのpathが残りました。誤解を受けがちですが、PC上では実在模型よりも原寸大でよりプリミティブな作業の集積が出来ます。彫刻家に憧れた時期もありましたが、かなり近い作業を楽しみました。」

【 Path 】
・設計監理:アールテクニック/井手孝太郎
・構造設計:設計直/北山直身+小山内博樹
・施工:和田建築株式会社


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