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18 7月, 2018

佐々木龍一 + 奥村梨枝子による集合住宅「Modelia Brut KAGURAZAKA」

佐々木龍一(佐々木設計事務所)+ 奥村梨枝子(YTRO Design Institute)による新宿区の集合住宅「Modelia Brut KAGURAZAKA」を見学してきました。
都営大江戸線牛込神楽坂駅から徒歩2分の場所。


敷地面積169m2、建築面積100m2、延床面積428m2。RC造、5階建、12住戸からなる共同住宅。


Modeliaシリーズで展開しているスクエアの意匠は、毎回趣向を変え外観の自己主張をしている。今回は開口の周囲に浮造りした杉板型枠で表情を出した。


江戸時代からある神楽坂の階段状の坂や、路地をコンテクストとしてすくい上げ、アプローチのデザインに落とし込んだ。


塀にもスクエアの開口を設けた。路地に並ぶ建物の窓がこちらに向いているようだ。


階段室。踏面はグレーチングを使い光を透過させ、共有部が暗くならないよう配慮。




203号室(この住戸のみ内覧者向けにModeliaがモデルルームとして設えた)。玄関を空けると「U」字型のプランの中央にキッチンがあり、扉の向こうが水回りとなる。
下足入れはカリモクに依頼した特注。カリモクが建築家とコラボするのは珍しいケースとのこと。


キッチンと水回りによって振り分けられた居室。ワンルームだか2Kといった印象。




スクエアから切り取られた街並み。


303号室。前述の上階の住戸。平面は同じだが、、


見上げると斜線規制に掛かる部分が吹き抜けになり、星空のようなトップライトがリズミカルに設けられている。


302号室。一番小さいタイプの住戸。キッチンにはバイブレーション仕上げされたカラーステンレスを張った。


401号室。一番広いタイプの住戸で1LDK。


キッチンは杉板型枠を使ったコンクリートで造作されている。


4階になるとスクエアからの視線は住宅の屋根の上に抜け、遠景が望めるようになってくる。


カリモクの下足入れは各住戸に導入されている。玄関からキッチンへは土間のように瓦タイルが張られている。


501号室。玄関のみ4階で居室は5階になる。


ワンルームだが二面の大開口と、


広いバルコニーが魅力だ。


佐々木龍一さんと、奥村梨枝子さん。
「神楽坂という江戸時代からの文化が根付く場所です。如何に文化、街と共に暮らすか、この神楽坂プロジェクトにおいての四角いファインダー越しに街を切り取って、生活に取り込んでもらえたらと思います。」


【Modelia Brut KAGURAZAKA】
設計監理:佐々木龍一/佐々木設計事務所+奥村梨枝子/YTRO Design Institute
プロデュース:モデリア
施工:中村弥工務店
施主:秀光建設


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14 7月, 2018

「イサム・ノグチ ー 彫刻から身体・庭へ」展レポート

7月14日より東京オペラシティ アートギャラリーで開催の展覧会「イサム・ノグチ ー 彫刻から身体・庭へ」の内覧会に行ってきました。

彫刻、陶芸、庭、ランドスケープ・デザインなど領域横断的な活動をした20世紀を代表する芸術家イサム・ノグチ(1904~1988)の、国内では12年ぶりとなる回顧展。大分県立美術館を皮切りに巡回スタートした本展は、香川県立ミュージアムを経て、今回東京での開催が最後となる。


本展は、イサム・ノグチが抽象彫刻の分野にあっても常に「身体」を意識し続けたことや、そうした意識が、子供のための遊具デザインやランドスケープといった人間をとりまく環境へ向かい、空間の彫刻=庭園への情熱に拡大していったことに着目し、その活動の全容に迫るというもの。模型・資料・動画、石の彫刻まで海外・国内の約80点を展示する。


開会の挨拶をする和泉正敏氏。彫刻家で財団法人イサム・ノグチ日本財団理事長の和泉氏は、出会いから亡くなるまで25年間、イサム・ノグチの片腕となり石彫制作のパートナーとして寝食をともにしながら制作に協力した人物。「ノグチが生きていたら、この場で皆さん一人一人と挨拶していたと思います。こちらの会場では、学芸員による石彫の配置のセンスに感心しました。」

会場は、「身体との対話」、「日本との再会」、「空間の彫刻 ─ 庭へ」、「自然との交感 ─ 石の彫刻」と4つの章で構成されている。

《第1章 身体との対話》
この章では、身体性への問いかけがイサム・ノグチの制作において重要であったことを、彫刻やドローイング、舞台美術など、主に初期の作品を通して紹介している。

20代半ばに滞在した北京の人々を毛筆と墨で描いた「北京ドローイング」と呼ばれる一連の素描。イサム・ノグチの芸術の出発点と言われているこれら8点の作品は国内初展示。


〈北京ドローイング(横たわる男)〉1930年 イサム・ノグチ庭園美術館/ニューヨーク)


イサム・ノグチの身体というテーマは、1930年代から手掛けた舞台装置の制作において一層顕著に表れる。舞踏家マーサ・グラハムとの協同作業は30年以上続いた。彫刻、ドローイング、映像など。


マーサ・グラハムの舞台「ヘロディアド」のための舞台装置 1944年

《第2章 日本との再会》
イサム・ノグチは、1950年に19年ぶりの来日を果たした。日本の暮らしや伝統、歴史や社会と向き合いながら、 建築家の丹下健三、谷口吉郎、デザイナーの剣持勇ら多くの芸術家たちと親交を深めながら、広島の橋(欄干)や原爆慰霊碑、慶應義塾大学の新萬來舎のデザインなど、様々なプロジェクトにも参画した。

陶作品。"陶器による彫刻”ととらえ、日本の自然や伝統文化の中から抽出したフォルムを、現代的でユニークな形へとと蘇らせた。


〈柱壺〉 1952年 イサム・ノグチ庭園美術館/ニューヨーク
日本の古墳時代につくられた土管状の円筒塙輪からイメージを得ている。 


〈かぶと〉 1952年 草月会(千葉市美術館に寄託)


萬來舎の内観写真(1950-51年 現存せず 撮影:平山忠治)と、萬來舎のためのコーヒーテーブルと4脚のスツール(1951年 慶応義塾大学)

来日早々、建築家の谷口吉郎と協力して手掛けた慶応義塾大学の萬來舎は、建築、インテリア、工芸、彫刻、庭を含む総合的造形空間。


〈萬來舎 1/50模型〉
慶応義塾で長く教えた亡き父、詩人・野口米次郎の記念室であるとともに、多くの戦没学生を慰霊するモニュメントでもあったという。


〈慶応義塾大学 第二研究室 設計案 配置図と平面図〉
庭園室内設計:イサム・ノグチ
建築設計:谷口吉郎 


〈広島の原爆慰霊碑の習作模型〉イサム・ノグチ庭園美術館/ニューヨーク
丹下健三と広島市長の依頼で制作したが不採択となった幻の案。


〈2mのあかり〉


〈AKARI〉1953年頃〜 香川県立ミュージアム

《第3章 空間の彫刻 ─ 庭へ》
最晩年に至るまで長く手掛けられた庭や公園、ランドスケープなど、大地を素材とする「彫刻」作品を紹介。 庭の仕事は「彫刻」を「大地」に結びつける試みであり、 同時にそれは、重力によって大地に縛りつけられた人間の「身体」と向き合うことでもあった。

環境的作品は、日本の禅の庭、そして世界中を訪ねて出会った石の遺跡など、古今東西の文化にインスピレーションを受けて生まれている。




〈チェイス・マンハッタン銀行プラザの沈床園のための模型〉
1960-63年頃 イサム・ノグチ庭園美術館/ニューヨーク

「大人が子どものような想像力を持ったとすれば、世界は一変して全く新しい体験として目に映るに違いない」と語ったイサム・ノグチ。1940年頃から手掛けるようになったこれら遊具やプレイ・スカルプチャーにその思いは遺憾なく発揮されている。


〈オクテトラの模型〉1968 イサム・ノグチ庭園美術館/ニューヨーク
八面体に球体状のヴォイド(空虚)を穿った遊具、プレイ・スカルプチャー。この幾何学性には、親友だった発明家・思想家バックミンスター・フラーからの影響がうかがえるという。


〈デトロイト、フィリップ・A・ハート・プラザのホラス・E・ダッジ・ファウンテンの模型〉1972年-79年頃 イサム・ノグチ庭園美術館/ニューヨーク


〈スライド・マントラの模型〉
1966-88年頃 イサム・ノグチ庭園美術館/ニューヨーク(イサム・ノグチ日本財団に永久貸与) 
螺旋形の滑り台。構想から20年以上を経て大理石で制作された。 

《第4章 自然との交感 ─ 石の彫刻》
後半生を代表するのは、大理石よりも硬い玄武岩、花崗岩などによる峻厳な石の彫刻。


〈無題〉1987年 インド産花崗岩
イサム・ノグチ庭園美術館/ニューヨーク(イサム・ノグチ日本財団に永久貸与) 

〈イサム・ノグチ年譜〉
最後の展示室では、イサム・ノグチがどのような人生を送ってきたかを写真と共に振り返る資料が壁一面に。興味深い出来事の数々に、実際の作品群にも増して多くの人が足を止め真剣に見入っていた。

【イサム・ノグチ ─ 彫刻から身体・庭へ】
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
会期:2018年7月14日(土)~9月24日(月)
詳細:https://www.operacity.jp/ag/exh211/


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山中祐一郎 × 木のいえ一番協会 によるCLT実験住宅「CLTHUT」

山中祐一郎(S.O.Y.建築環境研究所) × 木のいえ一番協会 による「CLTHUT」を見学してきました。
ご存じの方も多いと思うが、CLTはCross Laminated Timber(直交集成板)の略で、ひき板を繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料。厚みのある大きな板で、建築の構造材、土木用材、家具などにも使用されている。その利用は欧米で急速に伸びており、特にPCa材のような施工性の良さや構造体としての特性をいかして、中層建築や商業建築などに多く用いられている。


今回山中湖畔に完成したのは、国土交通省「平成28年度サステナブル建築物等先導事業」の補助を得て、CLT低層住宅における技術開発を目的とした実験棟を建設するプロジェクト。今後は小規模・現し設計に適した設計手法・接合部の開発、コストダウン開発、経年変化の検証、温熱環境測定などの技術的な開発を実施すると同時に、体験宿泊など木のいえの暮らし方についての研究にも役立ていくものだ。


つまりCLTによる、戸建て住宅の普及を目指し技術検証を行う実験住宅ということだ。
構造設計と技術協力はエヌ・シー・エヌが担当。


延床面積48m2の実験棟「CLTHUT」。内も外も断熱材は使用せず、外壁も見えている梁・軒天もCLT現しのままで、塗装のみ施されている。


玄関扉。冬の寒さが厳しい山中湖なので、断熱性を高めるため、壁面と同じ15cm厚のCLTパネルから削り出して製作した。


室内も全てCLT現しの空間。仕上げはなく、ログハウスとは全く異なる木質空間。
トップライトから光が差し込む2階と、その下に水回り。奥にキッチンが設えてある。


室内の壁・天井、床、軒裏、外壁を塗り分けた。
3m程張り出したデッキの縁側に、1.2mの庇を出し、内外が気持ちよく連続する。


構造は15cmのCLTパネル構造。井桁状に組まれた4枚の躯体が、そのまま梁になって外へ飛び出したような格好で、庇を支えている。


L字型の二面開口は、木製サッシュがCLTの壁にアウトセットされているので完全に開け放つことができる。


ナイフで切り取られたような不思議な開口。


ルーターを使って角に内Rをつけた意匠が可能。
材の接合部はエヌ・シー・エヌが開発した金具をドリフトピンで接合。見えてくるのはピンの頭だけだ。


小窓もルーターによる切削(サッシュをアウトセット)。


階段も。CLTの塊に垂直方向と、45度方向の二方向からルーターで削り出して作ることができる。


裏側もユニークだ。右手のキッチンもCLTの一枚板をくり抜いて作られている。


浴室はさすがに下半分をFRPで防水されている。


2階は、21cm厚のCLTパネルの床がそのまま構造となり、水平力を担保している。
宿泊体験をしながら実証実験をしていくことができるように、2階を寝室スペースとして使用する。
(筆者も宿泊体験をする予定なのでその際のレポートもアップします)


山中祐一郎さん。「CLTを徹底的に使って設計してみました。今までこういった低層の建築ではそのメリットが活かせませんでしたが、単純な構成で高強度、高精度、しかもログハウスと同等の断熱性も期待できるので、仕上げや被覆なしで住空間を作るのに向いていると思います。課題である耐久(耐候)性も庇とセットにすれば克服できるはずですし、軸組のように見えなくなる部分もなく、自分で手入れできることから経年と共に愛着も湧く住宅が作れそうです。」

【CLTHUT】
事業者:木のいえ一番協会
意匠設計:山中祐一郎/S.O.Y.建築環境研究所
構造設計・技術協力:エヌ・シー・エヌ
CLT製造・加工:銘建工業
施工:ビ・ボーン
協力:アールシーコア、日本CLT協会


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