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22 2月, 2016

「新しい建築の楽しさ2015:後期展」レポート

2月27日まで東京 京橋のAGC studioで開催の「新しい建築の楽しさ2015:後期展」に行ってきました。
畝森泰行、青木弘司、吉村靖孝、弥田俊男、中山英之 + Ido Avissar、永山祐子の6組の若手建築家による、進行中や計画中の建築模型が展示されている。

前期展では浜田晶則、中川エリカ、ツバメアーキテクツ、細海拓也、萬代基介、仲建築設計スタジオが展示)

 会場構成は山田紗子が担当。企画は中﨑隆司。
またこの日開催されたデザインフォーラムも聴講してきました。

 〈須賀川市 市民交流センター〉 畝森泰行
福島県須賀川市。被災地の市民活動の復興を目指す市民交流施設。

 図書館、公民館、キッズパークなど様々な機能が複合した賑わいの拠点。外周部を低く圧迫感を抑え、床をずらしながら積層させ多数のテラスをつくり、テラスで活動する人々の姿がまちに現れることで、まち全体が活気づくことを目指す。


畝森泰行さん
「行政が中心になるのではなく、様々な活動をしようとする市民がサポーター的に参加し、チームを作りながら運営する新しいかたちの市民センターになってもらえたらと思います。」

 〈福増幼稚園〉 吉村靖孝
千葉県市原市の幼稚園の増床計画。

 既製の鉄骨テント倉庫を使って外皮をつくり、その内側に木造2階建ての空間をつくる。2階の壁は折れ曲がりながら内外をつくり出す。また補強のための火打梁が掛けられているが、子どもにとっては少し意味の分からない物となり、物事を考えるきっかけになることも意図した。


 〈小淵沢のホール〉 永山祐子(デザインアーキテクト)+竹中工務店(設計施工)
山梨県北杜市の企業のイベント・研修施設

 700人収容のイベントホールを主に、多目的スペース、研修室、カフェなど複数のプログラムを遊歩道状の廊下で繋ぎながら、外部へ視線が抜けるよう工夫し、内と外が入り混じったような空間となっている。


永山祐子さん
「建物の周囲にはエリアによって彩りの違う植物を多数植え、春になるとピンクになるエリア、夏には青や紫、秋には赤や黄金色といった具合に敷地全体がカラーパレットのようになります。」

 〈春日大社宝物殿 増改築〉 弥田俊男
奈良市の春日大社境内の美術館

 既存の宝物殿は’73年に谷口吉郎の設計によって建てられた。棟どうしの間の中庭部分に既存屋根から連続するように片流れの屋根を掛け、既存の佇まいを継承しつつ、穏やかに境内に開かれ連続する「だ太鼓」の展示空間を新設。屋根はスパン18mのスチール製門型フレーム4本で支持する。


弥田俊男さん
「世界遺産の境内なので規制が厳しく、 “人工物” が表に出てはいけないことから、ファサードにガラス面を直接あしらうことができず、鉄製のルーバーを一層設けています。今まで担当した美術館の経験を活かしながらも、今回異なるのは神の領域での美術館ということを意識しました。」



 〈Project M〉 青木弘司
北海道伊達市のパン工房・ 就労支援福祉施設

 生産プロセスが見える工場というプログラムを、建築の成り立ちに翻訳すべく、壁の裏、天井の懐などを可視化し、様々な部材が建築の成り立ちに寄与していることを想像させる。モノが主役になる工場であるこの計画では、人間中心主義的な美学ではなく、ヒト・モノ全ての関係性の総体として建築を捉える試み。


 〈Printmaking Studio/FMC〉 中山英之 + Ido Avissar / LIST
ベルギー カステルレーのアーティスト・イン・レジデンスのスタジオ増築

 建物の塊にケーキを切り分けるように内部空間を考慮しながら形を決めていった。切り口に切妻型が現れるので、この切り口を煉瓦造りにすることで、周辺の田園地帯に建つ民家のシルエットを思わせる様々なプロポーションが並ぶ。


 山田紗子による会場構成は2015前期展の記事に詳しいです。

【新しい建築の楽しさ2015】
前期:2015年11月4日 ~ 12月25日
後期:2016年1月5日 ~ 2月27日
会場:AGC studio(東京都中央区京橋2-5-18 京橋創生館)

詳細:www.agcstudio.jp/project/pdf/project15th.pdf
【関連記事】
・新しい建築の楽しさ 2014 前期展後期展
・新しい建築の楽しさ 2013 前期展後期展

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20 2月, 2016

「神奈川県立近代美術館(本館・新館・附属屋)と周辺環境の一体的な保存に関する要望書」詳細

DOCOMOMO Japanより、神奈川県知事・鶴岡八幡宮宮司へ「神奈川県立近代美術館(本館・新館・附属屋)と周辺環境の一体的な保存に関する要望書」が提出されたというリリースが届きましたので紹介します。
2015年9月現在、保存が決定しているのは本館のみです。

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DOCOMOMO Japan(ドコモモ・ジャパン)は、20 世紀の建築と環境遺産の価値を認め、その保存を提唱することを目的の一つとする、国際的な非政府組織DOCOMOMO(Documentation and Conservation of buildings, sites and neighborhoods of Modern Movement=モダン・ムーブメントに関わる建物と環境形成の記録調査および保存のための組織)の日本支部です。
このたび、神奈川県立近代美術館の閉館に際し、「神奈川県立近代美術館(本館・新館・附属屋)と周辺環境の一体的な保存に関する要望書」の提出いたしました。その内容は以下の通りです。

1.保存活用が決定している「本館」ひとつを単体として残すのではなく、周辺も含めた一体的な環境の全体性を、良好な形で継続できる方法を検討していただきたいこと。

2.そのことを実現する上で欠かすことのできない重要な価値を持つものとして、取り壊しの方針が出されている「新館」と「附属屋」についても、その保存活用の可能性について、再度検討していただきたいこと。


DOCOMOMO Japan

代表 松隈 洋
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要望書原文




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19 2月, 2016

松島潤平による会場構成 シャルル・フレジェ展「YÔKAÏNOSHIMA」

2月19日より銀座メゾンエルメス フォーラムで開催の、フランスの写真家であるシャルル・フレジェの展覧会「YÔKAÏNOSHIMA」のレセプションに行ってきました。会場構成を松島潤平が担当した。
[
YÔKAÏNOSHIMA by Charles Fréger, Ginza Maison HERMÈS Le Forum]

フレジェは、世界各地の装束をシリーズで撮影し、それぞれの土地に潜む驚くべき多様な人間の営みを、人類学的、民俗学的にも興味深いポートレートとして収め続けている。

“Babugeri” Bansko(Blugaria), WILDER MANN series, 2010-2011 ©Charles Fréger
WILDER MANN seriesではヨーロッパ各地の伝統的な祝祭の儀式に登場する「獣人(ワイルドマン)」の姿を収めている。熊や山羊、悪魔や擬人的なキャラクターに仮装した、奇抜で恐ろしくも滑稽なワイルドマンたちは、自然と人間の営みから生まれた原始の物語をよみがえらる。

“Namahage" Ashizawa, Oga , Akita prefecture (Japan), YÔKAÏNOSHIMA series, 2013-2015 ©Charles Fréger
ヨーロッパ全土に残る冬の祝祭には、日本の歳神の文化とも共通点が見られることから、フレジェは日本を訪れて新たな展開を試みまた。
日本列島58ヶ所の取材から成り立つ本シリーズは、「YÔKAÏNOSHIMA」と名づけられ、田畑や山々、森林、海辺から現れた、日本固有の仮面神や鬼たちの姿を紹介するもの。日本人の恐怖や畏怖を象徴しながらも、私たちの生活の傍らに潜み、時に親しみを感じさせる存在である妖怪。そのルーツともいえる神や鬼たちの姿を、フレジェは写真に収めた。

 最初のスペースでは、起伏の多い日本のランドスケープを凝縮したような構成。
「農耕」、「島」、「海」、「洞窟」などのシーンが表現されている。

 これら妖怪が現れるのは整地されたような場所ではなく、凹凸のある荒々しい大地。それを緩衝用のスポンジで表現した。


 フラットで “綺麗に” 展示されることが多いフレジェの作品を、思い切って前後上下に抑揚をつけて展示した。



会場は2m程の高低差で実際に勾配がついている。山の中で妖怪に出会う趣向だ。


 コリドールの展示スペースを抜け、「Winter」セクションでは日本の歳神が並ぶ。
冬は夜が長く寒く厳しい季節、そのような時期春を待ちわびるように、我々日本人は様々な神や鬼たちを敬い畏れてきた。

 春の訪れを知らせる大地の芽吹きや蠢きを立体的なボックスで表現した。

 松島潤平さんと、シャルル・フレジェさん。
上の神様が何となくシャルルさんに似ているのは気のせいだろうか。
初めのラフイメージをシャルルさんにお見せしたとき、大笑いして気に入っていただけました。そこで『任せる』と言っていただけたことでここまで大がかりで楽しい会場構成を実現することができました。」と松島さん

「YÔKAÏNOSHIMA」 シャルル・フレジェ展
会期:2016年2月19日 - 5月22日
会場:銀座メゾンエルメス フォーラム(入場無料)

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17 2月, 2016

田井勝馬による「鎌倉腰越の家」

田井勝馬/田井勝馬建築設計工房による「鎌倉腰越の家」の内覧会に行ってきました。

 敷地面積298m2、延床面積93m2、木造、地上2階建。
新興分譲住宅地で周囲にはハウスメーカーの家が建ち並ぶ。「く」の字型の不正形な敷地であったため注文住宅に決め、田井さんに依頼が来たという。

 若いご夫婦と子供が住まう、ワンボックスの住宅。
片瀬山と湘南海岸のエリアであることから、海と山の眺望を両方取り入れることが求められた。

 玄関アプローチ。キャンティレバーで大きくせり出したボリュームが出迎える。


 外観からはシンプルな箱型の建物に思えたが、見上げると "内部はどうなっているのだろう” と思わせる壁面とガラス面の複雑な構成が現れた。


 玄関を開けると室内から光が溢れ出してきた。
左右に収納が配され、右手はガラス越しに半階スキップしたフロアが覗く。

なんと収納が一つ可動し床下収納が現れた。


 玄関から右に折れると、左手にキッチン。右手のスキップフロアの下には収納が連続し、ニッチも設けられてるため使い勝手が増す。


 ダイニング・キッチンは二層吹き抜けで、外部のテラスまで連続する開放的な空間。
奥は主寝室。

 キッチンは建物の中心に配置され、この場所からすべてが見渡せる司令塔のような場所である。


 キッチンの右横から、主寝室裏側の水回りへアクセスする。
奥に見える緑は裏庭の植栽だ。

 6段上がりリビングへ。上に見える梁はH型鋼。

 リビングの奥から。天井と床は同じアッシュ材で連続性を持たせ、ひとつの殻のなかに用途ごとのスペースが緩やかに繫がっているのが分かる。
2軸の間接照明が見えるが、夜には全く異なる情景をつくり出すだろう。

 玄関アプローチから見えたキャンティレバーの部分はバルコニーだった。屋根も壁も持っているため、半屋内的な空間だ。


 写真では分かりにくいが、遠景に海が見える位置に開口を設けてある。


 2階へ。


 窓越しに力強い岩肌が覗き借景として取り入れている。


 2階に上がると左に大きな机が作り付けられたスタディスペース。奥に子供室がある。


 子供室の上部はガラスがはめ込まれているため、戸を開けると連続した空間の一部になる。


 子供室のベッドは両側からアクセスできるが、将来的には仕切って2部屋にできる。
バルコニーも両側からアクセスできるので、ベッドも含め回遊型の動線が生まれ、子どもが自由に活動出来る。

スタディスペースを振返る


 吹き抜けを見下ろす。異なるレベルで多様な居場所が生まれているが、どこにいても繫がっているという感覚が途切ることがない。
また各所に散りばめられた抜けは、床面積以上の感覚的な広さをもたらしてくれる。

 明るくオープンな施主だそうで、この開放的なテラスをも活かした暮らしが容易に想像できる。
田井勝馬さん。「規模(面積)としては大きな住宅ではありませんでしたが、鎌倉らしいロケーションを意識すること、家族の成長と共に家も成長変化できる家にすることを大切に設計しました。」

【関連記事】

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