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17 5月, 2019

シーラカンスK&Hによる東京の「北区立田端中学校」

工藤和美+堀場弘/シーラカンスK&Hによる東京の「北区立田端中学校」を見学。
2008年、田端中学校と新町中学校が統合され田端中学校となるも、校舎の老朽化により新校舎建設の必要性があった。その後近隣の小学校の統廃合によって空いた旧滝野川第七小学校の跡地を利用して、新しい田端中学校を造る計画としてスタート。そして2015年、新しい田端中学校設計のプロポーザルによってシーラカンスK&Hが選ばれた。
プロポーザルでは地域防災拠点としてのプログラムも組み込みながら、校舎やグラウンドの配置、ボリュームや工法なども提案した。
(※許可を得て外観のみ掲載)


敷地面積7,222m2、建築面積2,312m2、延床面積8,256m2。
校舎棟:PCa・PC造+一部S造・RC造 8階建。
体育館棟:RC造+一部S造・SRC造 2階建。
付属棟:RC造1階建。
生徒数は300人足らずとは言え、元々広くはない小学校の跡地に中学校をつくるのは容易ではなく、できるだけグラウンドを広く、体育館も小学校以上の広さが必要で、そのためには8階建ての校舎、かつプールは8階にあるという公立の中学校では殆ど前例のない建物となった。
手前が校舎棟、奥が体育館棟と呼ばれる。付属棟はグラウンド側の体育倉庫や防災用倉庫のこと。

工事の際、近隣への騒音削減と工期の短さも求められ、躯体はPCa・PCを用いた工法が選ばれた。(PCa・PC=プレキャスト・プレストレストコンクリート。通常の鉄筋コンクリートより強度や耐久性、精度が高い)。
ただし、この工法では巨大なコンクリート塊が搬入されるため、現場へトラックが入れるか、荷下ろし場所や方法、クレーンの配置などを計画し、それによって部材の大きさも変わるため、部材の構造計算、金具の設計など全て事前に把握する必要があるそうだ。

高精度のプレキャスコンクリートが太陽光を鈍く反射させる。
校舎棟の1階に家庭科室、保健室、調理室。2階は昇降口、図書室、職員室、事務室。3階〜5階は普通教室。6階は音楽室、理科室など。7階は美術室、技術室、和室など。8階(屋上)はプール。


体育館棟は現場打ちのRC造。1階はランチルーム、武道場など。2階は体育館。屋上には広場。周囲は木が沢山植わる公開空地として開放される。
体育館内は、軒桁まである掃き出し窓から自然光がルーバー越しに差し込む。

体育館棟はロッジアによって内外の中間領域を設けている。避難所としてもこういった空間は重要になるだろう。

西に面したファサード。変形敷地のため校舎棟と体育館棟が割れるように建っており、その間に各所へのメイン動線を配した。
校舎棟は柱梁が外に現れ、室内はすっきりした空間となり、梁は庇にもなる。

大階段からは生徒や教職員の昇降口へ、その下ピロティーからは、地域にも開くパブリックスペースとしてグラウンドや武道場へ通じる。

大階段をあがって昇降口。校舎内は体育館を除き、中学校では珍しい下足のままという運用。玄関土間や下足入れを廃しスペースを確保するためだ。

「住宅密集地において、隣接するお寺と共に貴重なオープンスペースをもちながら、地域の昔ながらの雰囲気を残す場所です。接道面の敷地を開放し、街角の森として当時の面影を少しでも再現しました。8階建ての高層校舎にはX型の緩やかな階段を配し、階段が単なる移動経路ではなく、留まり立ち話ができる生徒同士の出会いや交流のきっかけとなることを意図しました。外観はプレキャスト・プレストレストコンクリートの構造体がそのまま現れ、この高品質な躯体そのものが地域の新しいシンボルとなることを願っています。」と堀場弘さん。

【北区立田端中学校】
設計監理:シーラカンスK&H
構造設計:KAP
施工:越野・川田・髙山異業種特定建設共同企業体


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