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14 6月, 2019

小泉雅生/小泉アトリエによる「横浜市寿町健康福祉交流センター/市営住宅」

小泉雅生/小泉アトリエによる「横浜市寿町健康福祉交流センター/市営住宅」を見学。
この地に40年以上あった旧労働福祉会館および市営住宅(設計:緒形昭義)を建て替え、新たな施設として生まれ変わらせるためのプロポーザルコンペが2014年に行われ、小泉アトリエが設計者に選定された。
[Yokohama-Shi Kotobuki-cho Health Welfare Exchange Center by Masao Koizumi / Koizumi Atelier]

敷地面積2,647m2、建築面積1,630m2、延床面積7,693m2。RC造地下1階、地上9階建。
1階から2階に地域住民のための健康福祉交流センター、3階から9階を80戸の市営住宅で構成される。前面に芝生のある広場を設け、オープンな居場所として、また様々なイベントスペースとして活用する。


寿町は日本有数の簡易宿泊所街。多くの簡易宿泊所が建ち並ぶ独特の雰囲気を持つ街だ。近年は海外からのバックパッカーにも人気があり、旅行者向けにシフトする宿泊所も増えている。


昔からの日雇い労働者や生活保護を受けながらほぼ定住している人も多く、約6000人が暮らす。これら簡易宿泊所は一部屋2畳や3畳の狭小空間で、通常のホテルとは違い、ロビーや娯楽室などの寛ぐ場所がない。


かつ地域住民の高齢化が進行し、福祉ニーズが高くなってきた街における核として、この健康福祉交流センターが求められ、さらに地域の防災拠点としても機能する。


センター1階には広場に面して左から調理室、作業室、ラウンジ、管理人室、市営住宅の集会室・エントランス・駐輪場。
2階には精神科デイケア、診療所、活動・交流スペースのエントランス、健康コーディネート室、ことぶき協働スペース、裏側に公衆浴場と続く。


東側。センターの外縁にも居場所をつくった。


西側。階段から公衆浴場へアプローチできる。下は駐車場。


南側。通用口や非常階段。電解着色されたアルミのサイディングは、周辺のコンテクストから抽出した色でデザインされている。


そして正面の北側(正確には北西面)。


広場に面して軒の深い「まちの縁側」を設け、地域のひとが気軽に立ち寄れる構えとした。
左はセンターのパブリックゾーンであるラウンジへ。


中に入ると2層の吹き抜けと、さらに重力換気兼採光用の通風塔が5層分の高さまで伸びている。(強制排気用にファンも備わる)
床には縁側から連続するコンクリートブロックが敷き詰められ、外部が入り込んできたような雰囲気も入りやすくする設えだ。


左の柱は集合住宅の下に掛かるため太いが、右の柱は2階を支えるだけで応力が少ないため、細い十字柱で意匠としながら断面積を減らしている。梁も応力の少ない部分は単に梁せいを低くするのではなく、ハンチ梁にするなど細かなデザインを施している。ハンチ梁は既存建物でも取り入れらており、そのオマージュとも取れる。


ラウンジの奥にはテレビが備わっていたり、将棋などレクリエーションにも対応。
災害時には避難場所や情報発信の中心となる。


既存でも人気だった図書コーナーも。


空調は、冷温水輻射熱パネルをメインに用いる。書架の下に覗く開口は、地下のクールピットで自然に冷やされた空気を導く。


外へ出て軒下を奥へ進むと、市営住宅「寿町スカイハイツ」のエントランス。左に住民用の集会場がある。
この日は住居部の見学はできなかった。


住居部には「エコスリット」と名付けた外部吹き抜けをつくり、住戸の中程に位置するDKに開口を設けられるようにし通風や採光に配慮した。
既存の市営住宅では間取りは2Kがメインであったが、今回の建て替えで2DK、3DKをメインにし、ファミリー世帯向けを重視した。ちなみに入居者はほぼ全戸埋まっているそうだ。
(photo: 小泉アトリエ)


交流センターの通風塔。少し象徴的になるようにデザインしたという。
(photo: 小泉アトリエ)


2階に上がるには東側からの階段と、エレベーター、そしてこのスロープがある。
スロープは割り箸を割ったようなシャープなデザイン。右側は広場に面して芝生を張った築山を設えた。


スロープから。エレベーター、通風塔、階段などが垂直方向の意匠として共鳴しているように見える。


2階にも縁側。床は1階同様コンクリートブロックを敷いた。
奥からデイケア、診療所、パブリックゾーンのエントランス。


この日はオープニング。ステージを設置し、ミニコンサートやパフォーマンスなど様々なイベントが開催された。写真はウォーキングサッカーの様子。
地面にマークされている円は1.8mピッチに刻まれており、イベントなどのブース用マーキングだったり、並んだり、このようにエリアを区切る目印などに活用できるのではと機能と意匠性を持たせた。
左に並ぶマンホールは災害時用のトイレになる。




診療所。診療所のニーズは高く、毎朝開院前に20〜30人の行列が出来るそうで、そういったためにもこの軒下空間は重要になる。
隣は精神科デイケア。一般的には精神科デイケアは建物の目立たないところに配置するが、この地域では入りやすくする事が大切とのことで、一番表側に配置した。


診療所はセンター2階の1/3のスペースを占める。待合室にも通風塔の孔が見える。通風塔はハイサイドライトを導く機能も持つ。


診療所とパブリックゾーンは吹き抜けの渡り廊下で接続される。下はラウンジのエントランス。


2階パブリックゾーンは、右手に健康コーディネート室、会議室、活動・交流スペース、センター事務室へと通じる。


活動・交流スペース。右奥の会議室を開放しさらに広いスペースにもできる。主に地域の支援活動をしている団体などがミーティングや交流を気軽にできるようになっている。
左はセンター事務室で、見通しの良いガラス張りの室とした。


縁側へ出て、2階角のことぶき協働スペース。まちづくりの担い手となる地区内外の団体や事業者等がネットワークを築きながら活動を行い、交流を活性化させることで寿地区の「開かれたまちづくり」を進めていくための拠点となる。


2階奥の公衆浴場「翁湯」。一般の銭湯と同じく誰でも利用できる。左手のエントランスからは先ほどの活動・交流ペースへも通じている。


浴場内部は見学できなかったが、男女の脱衣所の界壁は可動式で、小上がりの座敷もあり、営業時間外に落語などのイベントが開催できるようにした。
(photo: 小泉アトリエ)


ガラスブロック越しに外光がたっぷり入り、夜は逆に、外に対して行灯のように光ることとなるだろう。
(photo: 小泉アトリエ)

小泉雅生さん
「関係者や利用者の方々との対話やワークショップを重ねていくうちに、明確に "このような建物" と設計するのではなく、どのような使われ方に変化していっても大丈夫なように、フレキシブルでタフな建物に設計すべきだと考えました。数年にわたって心血を注いでこの施設の設計に携わってきて、非常に思い入れ深いものとなっていますので、今日は娘を嫁に出すような気分です。これからこの建物をタフに使い倒して頂きなから、どのように育てていっていただけるか期待しています。」と話す一方、施設や地域の発展のために今後も関わっていくという。


【横浜市寿町健康福祉交流センター/市営住宅】
・設計・監理:小泉アトリエ
・構造設計:構造計画プラス・ワン
・設備設計:ZO設計室
・施工:松尾・小俣・土志田建設共同企業体(建築工事)他
・横浜市寿町健康福祉交流協会:www.yokohama-kotobuki.or.jp


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15 2月, 2019

UDSによる「HAMACHO HOTEL」開業レポート

日本橋浜町の清州橋通りに2月15日にオープンする「HAMACHO HOTEL」内覧会に行ってきました。
ホテル・店舗・賃貸住宅からなる複合施設「HAMACHO HOTEL & APARTMENTS」のホテル部分である。安田不動産が「手しごと」と「緑」のみえる街、というコンセプトのもと進める街づくりプロジェクトのひとつ。UDSが建築デザイン監修と、ホテル企画・設計・運営を手がける。
建物の足元や各客室のバルコニーに緑をふんだんに取り入れており、国内外から訪れるゲストのみならず、浜町に住み、働く人々との交流と賑わいを生み、コミュニティを創出する場となることを目指す。


地下1階地上15階、RC造、敷地面積1,423m²。


ホテルの客室数は全170室。1階はダイニング&バーとチョコレートショップ、2階〜15階が客室という構成。


エントランス。
ホテルと賃貸住宅の共有エントランスであるが、1階のエレベーターホールでセキュリティーを設けている。建物全体の植栽はSOLSOが監修。




中に入ると、ロビーを中心に左手にダイニング&バー、右側にレセプションとエレベーターホールがある。ロゴマーク「H」はHAMACHOの頭文字で、佐藤卓が手掛けた。


まずはエレベータで15階へ。
最上階の15階にはテラス付の部屋が4室ある。


〈テラスルーム〉 40m²
床を下げることで生まれる立体的な室内空間と併設するテラスで広がりを感じられる空間。3室はこのタイプで宿泊料は30,000円〜。


松などの和テイストにローズマリーなどのミックスした植栽のテラス。 


バスルームからもグリーンをのぞむことができる。


<プレミアムテラスルーム> 45m²
こちらは1室のみの特別客室。乃村工藝社 A.N.D.による内装デザインで、古材やデニム生地のカーペットなど、他客室とは異なるテーストと遊び心のある設えとなっている。 パーティールームとしての使用を想定し、バーカウンターやターンテーブルが備わる。
宿泊料は35,000円〜。


テラスはアウトドアリビングのように東京の景色を眺めながら寛げる。


〈コーナーダブルルーム〉 25m²、12室(3階〜14階)
各フロアに1室しかない2面の開口でパノラマに街が広がる開放的な部屋。
宿泊料は13,000円〜。


13階でありながら窓から松の木が見える!(12階にしっかり固定されて植えられている) 


〈ダブルルーム for relax〉15m²、34室(3階〜14階)
窓際には、荷物を置いたり足を投げ出せる機能を持たせたベンチソファーが備わる。
宿泊料は11,000円〜。同じ広さでビジネスユースに適した「ダブルルーム for business」もある。


1階に降り、専用の階段で2階の「TOKYO CRAFT ROOM」へ。


柳原照弘氏をクリエイティブディレクターに展開する、クラフトの新しい価値を東京を経由して世界に広げるプロジェクトの拠点となる特別客室だ。日本各地の作り手と国内外のデザイナーをマッチングして完成したアイテムを、客室の一部とするコンセプト(アイテムによっては購入も可能)。78m²、宿泊料は50,000円〜。


開業時には2組のデザイナー(アムステルダムのデザインスタジオDe Intuïtiefabriekと、スウェーデンのインゲヤード・ローマン)によるアイテムがお目見え。年に数点新しいデザイナーの作品が追加されていく計画で、今夏にはCKRによるテーブルの発表が予定されている。


インゲヤード・ローマンによる有田焼のカップは各客室で楽しむことができる。


〈nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO〉1階
日本の手しごと×チョコレートをコンセプトにしたショップ。ガラス越しにチョコレートが出来上がっていく様子を眺めながら一息つけるカフェも併設。


ショコラティエがベトナムの契約農家など複数産地のカカオ豆の選定から行って作り上げるボンボンショコラ“ビーントゥーボンボン”や、カカオ豆の発酵度合いによる味の違いが楽しめる商品。


〈SESSiON〉1階
ブルーノート・ジャパンによる街のダイニング(食堂)をテーマにしたダイニング&バー。
デザインは乃村工藝社 A.N.D.が手掛けた。「セッション」には、国内外から訪れたホテルゲストのみならず、浜町に住まう人や働く人が集い、心地よいリズムや対話が生まれるような場所になって欲しいという思いが込められている。豚の角煮やコロッケなど親しみのあるメニューをプロの技でアレンジした食事を提供。


ホテルエントランスからダイニング&バーを見る。


「SESSiON」の外部エントランス。

「HAMACHO HOTEL」はデザインコンシャスでありながら気取らない親しみやすさがある。3月には良品計画が展開する国内初の「MUJI HOTEL GINZA」を開業させるUDS。今後も攻めの企画、設計、運営であたらしい文化やコミュニティーを創出していってくれそうだ。

【HAMACHO HOTEL】
企画・インテリアデザイン・建築デザイン監修:UDS/ the range design INC.
プレミアムテラスルームデザイン:乃村工藝社 A.N.D.
TOKYO CRAFT ROOM デザイン・クリエイティブディレクション:TERUHIRO YANAGIHARA STUDIO
植栽デザイン監修:DAISHIZEN SOLSO
アートワーク :トモル工房 / Spiralarts & Co. / ALL GOOD FLOWERS
設計・監理 :松田平田設計
運営 :UDS
所有者 :安田不動産
https://hamachohotel.jp/

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