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29 6月, 2015

新国立競技場はザハ案(修正案)で着工。整備費約2,520億円

(日経新聞電子版より)
関係機関トップが集まる調整会議が29日開かれ、下村博文文部科学相は大会のメーン会場となる新国立競技場の整備費を約2520億円とすることを報告した。7月上旬にゼネコン側と契約し、着工は予定通り今年10月とする一方、完成は当初予定より2カ月遅い19年5月とした。


整備主体の日本スポーツ振興センター(JSC)は7月7日、新国立競技場に関する有識者会議を開き、総整備費の細かな内訳などを示す。
調整会議には、大会組織委員会の森喜朗会長、東京都の舛添要一知事、遠藤利明五輪相らが出席した。
森会長は会議の席で五輪招致活動に触れ、「他の候補地と比較して(開催を)獲得できた大きなポイントは、新国立競技場のあの姿だったはず。日本が示せる大きな力だった」と述べた。
工期短縮と工費圧縮のため、全天候型の開閉式屋根の設置を大会後に先送りし、スタンドの約8万席のうち電動の「可動式」を予定していた約1万5千席は仮設の「簡易着脱式」とすると説明された。
文科省は都に対し整備費の一部として500億円程度の負担を要請する方針だが、この日の会議では話は出なかった。
調整会議後、記者会見した森会長は「大変苦労して、努力してよくまとめてもらったのではないかと思う」と下村文科相をねぎらった。「(19年9月のラグビーワールドカップ開幕までには)十分時間を織り込んでもらったので間に合うと思います」と話した。
競技場のデザインは、JSCが12年に実施した国際コンクールで、イラク出身の建築家、ザハ・ハディド氏の作品が採用された。コンクールの応募条件は整備費総額を約1300億円としていたが、斬新なデザインに対し当初から予算オーバーを危惧する声があった。
JSCは、13年に行った試算で整備費が3千億円を超すことが判明したために設計を見直し、14年、規模を縮小して1625億円とする計画を発表。しかし、14年末の段階で施工予定のゼネコンなどから再び3千億円を超すとの試算が示された。
JSCや文科省などは費用を抑えるため、ゼネコン側と設計の見直しなどの協議を進め、6月下旬に総額を約2500億円とすることで合意していた。

新国立競技場、国内外で群を抜く高額に
新国立競技場の整備費2520億円は、近年開催された夏季五輪のメーン会場や国内の主要スタジアムと比べて群を抜く高額となる。
整備主体の日本スポーツ振興センター(JSC)などによると、近年開かれた夏季五輪のメーンスタジアムの整備費は、2008年北京が約530億円、12年ロンドン大会が約950億円(いずれも現在のレート)だった。収容人数はそれぞれ9万1千人、8万人(仮設席を含む)となっている。
収容人数は同規模の8万人(同)とされている新国立競技場でコスト高の要因となっているのが、長さ370メートルの鋼鉄製の「キールアーチ」2本で屋根を支える特徴的な構造。加えて、文部科学省の担当者は「東日本大震災からの復興需要などに伴う原材料費や人件費の高騰、消費増税といったやむを得ない事情がある」と説明する。
ロンドンのスタジアムは五輪後、サッカーチームの本拠地に改修する工事が行われ、約530億円の追加費用がかかる見通し。JSC幹部はこうした点を踏まえて「過去の大会のスタジアムなどとの単純な比較はできない」とする。ただ、新国立競技場でも、五輪後に設置を先送りする開閉式屋根の工事などで費用はさらに膨らむ可能性がある。




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川辺直哉による目黒区の「上目黒の住宅」

川辺直哉 (Naoya Kawabe Architect & Associatesによる目黒区の「上目黒の住宅」のオープンハウスに行ってきました。

 敷地面積89m2、建築面積51m2、延床面積90m2。木造2階建て。
一見3階建てに見えるが上部は2.5階。
前庭には自転車置き場が施工中。

 細く続く路地の突き当たり。隣と同時に分譲された敷地だが施主はこちら側を選択。


 玄関を入るとホールが2/5を占め、右側3/5が居室になるような構成だ。
右手前の鏡張りの戸が下足入れ、次に子供室、主寝室、水回りと続く。

 子供室。お子さんは男の子2人。造り付けの家具がシンメトリーに設えられている。


 階段より先も土間のように洗面台、浴室へ連続する。
子どもたちの遊び場になることが想像できる。



 路地がそのまま土間に連続する様子がよく分かるカット。

 2階へ上がると正面にバルコニー。建物裏側は外壁を設け隣家からの視線を遮り、左と上からはたっぷりの採光。
床は1階と同じタイルを用い半屋外的な空間を表現。


 振り返ると1階土間から高さ6.4mの大開口があるように解釈できる。さらに右に高めの開口、トップライト、居室への大きな開口(左)などが軽やかに仕上げられ開放感はたっぷりだ。


 施主はこの抜けを望み敷地を選んだ。当初ハウスメーカーに設計を依頼したところこの抜けは全く考慮されず、「もっと大きな窓を付けて欲しい。」と頼んだところ、「防火やサッシュの問題で “無理” です。」と言われたそうだ。しかし現実には目の前に無理であるはずのものがクリアされ存在している。
ちなみにハウスメーカー2社に依頼した設計はほぼ同じ計画が上がってきたとのこと。

 居室へのシーンの切り替えは高さ3mの門のような開口を介して行われる。
ホール側の壁面にはピアノが置かれる予定。


 居室側は北側斜線による屋根勾配も相まって包まれるような空間に。
奥はキッチンで、その上はロフトスペース。

 振り返るとリビングスペース。(幅約2.5m)


 キッチンにもホールに向けた開口(右)が小さく設けられており、手元が明るくなるし、1階の子供の気配を感じることが出来る。



 2.5階は書斎やホビースペースとして。左はロフト。
路地は100m以上見通せる。逆に言えば100m先からでも室内が見えるということだが、それは十分理解した上で、遠くから我が家を眺めながら帰ってこられる楽しみがあるそうだ。


川辺直哉さん(前)とお施主さん。
「ご覧の通り建物に向かいの路地がそのまま入ってきたような計画です。土間・ホールと居室を明確に分け生活のシーンをアクティブに切り替えられます。」と川辺さん。


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24 6月, 2015

前田茂樹によるノルトロック・ジャパン新社屋

前田茂樹 / ジオ-グラフィック・デザイン・ラボ (Shigeki Maeda / GEO-GRAPHIC DESIGN LAB.) が手がけた、ノルトロック・ジャパンの新社屋の見学に行ってきました。

敷地面積 2016.32m2、建築面積 448.83m2、延床面積 441.37m2
木造平屋

西側ファサード

ノルトロックグループは、スウェーデンに本社を持つボルトやワッシャー等の製品を扱う国際企業です。今年4月より、ノルトロック・ジャパン本社が大阪市内から、スウェーデン本社のようなより自然の多い環境の大阪府箕面市彩都へ移転。移転してきた理由は、ノルトロックが今後非常に大きな製品を扱うことになるため、倉庫のスペースを拡張する必要性があることと、働く環境をビルからより人間性を持てる環境にしたいということから。

東側ファサード / 正面エントランス
あたかも段々状の敷地に大屋根を掛けたかのような印象。

計画地である箕面市彩都(さいと)は、国際文化公園都市、北部山間部に現在開発中のニュータウンがある。彩都と同じ大阪モノレール路線には、万博記念公園や大阪大学があり、大阪都市圏のベッドタウン、高級住宅地として発展している。ノルトロック・ジャパンの新社屋は、その新興住宅地に計画された、敷地の緩やかな傾斜を利用して、地形に沿った伸びやかな建築だ。

正面エントランス
家のような落ち着きのあるエントランス。ガラスをセットバックして控えめに。

内部エントランス / 受付 (撮影:繁田諭)
建物の中央に中庭が配置され、内部は優しい自然光に包まれた空間に。


土地の勾配が3〜4度ほどあり、過度な造成を行わず小さな居場所造りをし、地形に合わせて物が流れやすい回廊式配置に。

車庫→試験室→作業室→会議室→オフィス→社長室
エントランス→オフィス→社長室→会議室→作業室→試験室→車庫

少し進み左を向くと奥にはスタッフのオフィス。

通路を奥まで進み、エントランスの方を振り返って見る。
左の部屋は作業室。

エントランス奥の長い通路。右手の扉は、手前か試験室、会議室、キッチンと並ぶ。通路の最奥には社長室が配置されている。



(撮影:繁田諭)
更に奥へ進み、振り返る。中庭は植栽やベンチが設置され、職員の休憩場所に。

グラフィックデザインは、永易 直樹/ FARVEが手がけられた。
字体の色はノルトロックのロゴの色と合わせている。

会議室
パーティションで二部屋に別けることが出来る。
窓から見えるのはモノレールの線路とマンション群だが、これらを"借景"にして日が落ちると『銀河鉄道の夜』のような景色に変わるそうだ。

キッチンとダイニングルーム
キッチンとダイニングルームは必須項目として注文があったそう。欧州ではほとんどの会社にキッチンが設置されており、スウェーデンの企業であるノルトロックも例外ではない。朝と午後にフィーカと呼ばれるコーヒーを皆で飲む習慣があり情報交換の場となっているようだ。
ダイニングには薪ストーブがあり、パイン材で組んだ製品箱の廃材を燃料に活用させる。キッチンの外にはデッキと植栽が加わる予定で、季節の良い時期には外でも食事が愉しめるようになっている。


キッチンから内を見る。奥はオフィス。
照明は、ライティングデザイナーの永冨 裕幸 / NEW LIGHT POTTERY によるもの。

社長室

オフィス
働く場所は大らかな空間になるように一人1つの窓を配置。元々のオフィスのイメージよりよく配置出来るように一人一人のワーキングスペースを広く提案した。これは、前田氏自身がパリの事務所で働いていた時の環境や経験が活かされているようだ。

什器は合板の造り付け。一人一人スペースを持ちつつ、隣同士の気配を感じとれるように壁となる本棚に開口を造り、立つと全体が見渡せコミュニケーションがとれるように什器の高さは1.2mに抑え、窓枠高さなどとも揃えている。

昼と夜とで使い分けが出来るように2種類の照明を設置。

オフィスから見た通路

扉奥は更衣室やトイレ。

空間構成と天井の高さや通路の幅から落ち着きのある凛とした空間。前田氏に伺ってみると、南仏プロヴァンス地方のル・トロネ修道院の中庭を回遊するような感覚を思い出しながら設計したとのこと。

前田茂樹氏
『必要とされる用途を、出来るだけその敷地の中の時間(地形が持っている居場所の豊かさ、南北に抜ける卓越風や自然光)に添わせる形で、美しくかつ最小限の建築操作で造ることは、都市や地域のインフラを造るようなものだと感じています。風景として美しい土木構築物やインフラは、都市地域に新たな地形を創り出すようにも思います。』


設計監理:ジオ-グラフィック・デザイン・ラボ(前田茂樹 木村公翼)
照明計画:NEW LIGHT POTTERY (永冨裕幸)
サイン計画:FARVE (永易直樹)
構造計画アドバイザー:満田衛資構造計画研究所
施工監理:新名工務店

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22 6月, 2015

松島潤平+青山文吾によるマンションリノベーション「Text」

松島潤平(Jumpei Matsushima / JP architects)+青山文吾による、世田谷区のマンション1室をリノベーションした「Text」を見学してきました。
築40年以上を経過したマンションで、玄関を入ると一直線の廊下を挟んで左側に個室が3室、右側に収納や水回りが配された典型的な3LDKレイアウトだった。(82m2)

 施主はリノベに当たって寝室や将来の子供室を、と考えてしまうと既存と変わらなくなってしまうので、大きな1K空間にしたいと望んだ。


 既存の仕上げを剥がし現れた躯対は水平垂直が大きく歪み、壁や天井も波打ち、、、


 それはあたかも洞窟のようだったという。


 コンクリートの中には施工時の “忘れ物” 、何かのビニール片やタバコの吸い殻が40数年の時を超え姿を見せた。
型枠の大きさも材質もまちまちで、住宅供給が急がれていた頃の様子が伺える。

 玄関から上がり左を見る。全体を白く塗ることも検討したが、ベッドスペースとの境界を示すための塗り分けに留めメリハリを持たせた。


 ベッドスペースから。


 室内奥から見返す。
奥さまはグリーンコーディネーターで、夫婦揃って植物が大好き。部屋の中央にはフィスカ・ウンベラータの株分け用の親木が存在感を出している。天井に付くスポットライトの多くは植物の為に設置したもの。

 ハンモックを吊すためにアンカーボルトを打たなければならいかなと思ったが、天井にはなぜかピンが打てる孔が幾つもありそれを利用した。


 キッチンはIKEA製で設えた。
壁の中央の開口は浴室へ。

 浴室は全面FRP防水に作り替えた。
開口は既存では開閉し換気窓として機能していたが、浴室乾燥機を取り付けたのでFIXとした。

 テレビは無く、天井に設置したプロジェクターで映画などをみることが多いそうだ。


 食事はカウンターテーブルで。


 躯体にはC型セパレーターが沢山頭を出していたので、グラインダーで滑らかにしたところ(左)、マグネットを使って自在にディスプレーができるようになった。


 照明スイッチパネル。最近トグルスイッチは珍しくないが、美しい削り出しのオーディオ用つまみを調光に流用した。



松島潤平さん(左)と、施主ご夫妻であるグラフィックデザイナー/アートディレクターの青山文吾さん、グリーンコーディネイターの中口昌子さん。
「 “Text” とはお施主さんのお名前一字からの引用でもあるのですが、『仕上げ=テクスチャー』をレイヤードするのではなく、新たに手を加えながらも『原本=テクスト』への回帰、テクスチャーの前の世界『テクストの空間』になるようデザインしました。また躯体の歪みが激しいため、歪みを均すように仕上げをした場合かなりの気積が喪失してしまいます。仕上げが無いことで気積は約1.15倍になり拡がりを持たせることが出来ました。」

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