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26 11月, 2018

岸和郎による集合住宅のリノベーション「書院/Third-place」

岸和郎(K.ASSOCIATES / Architects)による東京の集合住宅のリノベーション「書院/Third-place」を見学してきました。
2009年に手掛けたプロジェクトで、70年代に建てられた集合住宅の一住戸をリノベーションした。


玄関を入ると大理石張りのクランク状アプローチとし、シーンの切り替えを演出。


玄関から三回折れ曲り現れるリビング・オフィス。
施主からは住居であると同時に、オフィス、立礼茶席としての機能を求められた。


少ない要望ではあるが、実際のところどのようにデザインを進めるか考えるうちに、住居とオフィス、そして茶室とも密接な書院造という日本に古来よりある様式に至ったという。
総漆喰の壁と天井、そして奥に床と書院。


向かい合わせにモダンな床と、右手に小さな付書院。


空間中央の、岸さんがデザインした立礼卓(りゅうれいじょく)は、お茶席にもオフィスワークにも使える。


伝統を意識しながらも岸さんオリジナルの解釈がなされた床。吊り棚にはお茶道具と並んで、倉俣史朗の一輪挿し、バリ島で見つけたシルク織物を張った戸棚。
落掛(おとしがけ)にはアルミハニカムパネルを用い、裏側には間接照明が備わる。
書院にも大胆にバリのバティックをあしらい、掛け軸代わりに杉本博司の写真が掛かる。


向かいの床はハレを演出するビビッドなオレンジのスタッコ仕上げ。
そして雪見障子と付書院。


倉俣史朗に影響を受けていることを隠さない岸さんが、カッシーナのためにデザインしたソファ。


背後には黒さび仕上げのスチール板の壁。裏手は浴室やキッチンといった水回り。


床(ゆか)は伝説の数寄屋大工、中村外二に作ってもらった栗材のフローリング。同じ木から削られた付き板で木目が連続している。


岸和郎さん。「このThird placeは都心に住むクライアントのための常の住居、第一の住宅でもなければ、別荘、すなわち二番目の住宅でもありません。これはThird Place、都市居住者のための三番目の場所としてデザインされました。時にくつろぎ、時には仕事の場、また立礼のお茶席としても使えるし、またプライベートなパーティーにも使える場所としてデザインしましたが、それはよく考えてみると、日本の書院の空間なのではないか、そうか、それならば現代の書院として設計してみようと考えたのがこのプロジェクトです。」


【書院/Third-place】
設計監理:岸和郎+K.ASSOCIATES / Architects
施工:斉藤工業
延床面積:78m2


【関連記事】
岸和郎展「京都に還る_home away from home」/ギャラリー・間 レポート
岸和郎プロデュースによる「New Japan Standard」展 レポート

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18 6月, 2018

能作文徳×常山未央による自邸兼事務所「西大井のあな」

能作文徳(能作文徳建築設計事務所)×常山未央(mnm)による品川区の自邸兼事務所「西大井のあな – 都市のワイルドエコロジー」を見学してきました。横須賀線 西大井駅、もしくは浅草線 馬込駅から徒歩10分程の場所。


1986年竣工の鉄骨造住宅を中古で購入し、1階を自身達の設計事務所、2階を民泊、3〜4階を自宅として使う(延床面積154.8m2、事務所42.7m2)。リノベーションのために一部を業者に解体してもらい、その後生活しながら自身達で考え施工していくという。
子どもがケンケンやゴム跳びをして遊びそうな私道と、奥には横須賀線と新幹線が通る。


1階にはシャッターと壁があったが取り払い、事務所を2面開口とした。
左は既存の門扉のまま手付かず。外階段で2階へ上がる。


コーナーの鉄骨はコンクリートで被覆補強した。その際型枠の内側にダンボールを貼って表情を出したが「表層の紙がうまく剥がれなかった。」と笑いながら話す能作さん。


事務所。まだ施工中と事前に聞いていたが、想像以上に未完。しかしスタッフやインターンが仕事をしている。


左を向くと解体後そのままになっている配水管、給水管と水栓、コンセント、天井・壁裏の配線も露わ。


それでも少しずつ完成に向けて作業は進んでいるそうで、例えば鉄骨を被覆しているロックウールへの飛散防止塗装、床板張り、一部断熱材施工、、


コーナーの開口部と打合せスペース(ベンチは仮)などがとりあえずできたので、2階から事務所機能を降ろしてきた。
筆者が立っている位置にキッチンカンターを取り付ける予定。引越後、近隣にパン屋がないことが判明し困っているので、ここでパンを焼いて販売しながら地域との接点を設けるというアイデアも温めているそうだ。


仕上げ用のフローリングが片隅に積んであるが、これは展示会場で使われた廃材利用。コンプレッサーも購入したので吹き付け塗装などもDIYする。
床と天井に穴が空いているが、床は既存の地下室に通じており、模型やサンプルの収納に重宝する。そして天井が「西大井のあな」だ。


見上げると4階まで通じており、光が落ちてきている。この「あな」を中心に本リノベーションプロジェクトは形作られていく。


2階へ。


2階では「あな」がその全貌を現しはじめる。


和室と解体痕のコントラスト。
玄関のタイルや上がり框、廊下の床板を剥がし "土間" として拡張。廊下と階段の境に壁があったが取り払い、広くなった床に「あな」を空けた。


リノベーションやリフォームの現場でよく目にする壁や床と乱れた配線だが、通常と大きく異なるのは天井に穴が空き、ブレースが姿を現していることだろう。


下は事務所とダイレクトに通じている。当然誤って足を踏み外せば落下することになるため手摺を設置する予定だが、既にこの状態で数ヶ月経過している。


二間続きの和室はまだ既存まま。海外の友人が遊びに来た際に既に泊まってもらったそうで「面白い!」と好評だったそうだ。
いずれAirbnbで民泊にすることなどを計画。左奥(玄関入って左手)にシャワー室を設ける。


階段を見上げると4階のトップライトが見えた。薄暗い2階に光や空気が通り抜けるという意図は良く伝わる。


3階へ上がる途中、床の断面がよく見える。床スラブはデッキプレートにコンクリートを流したコンクリートスラブ。隙間に新聞紙(中空材の代わり?)や、二重床の施工は当時の職人の愛嬌だろうか、、、


ここまで見て、この建物は施工中で1階の事務所のみが機能していると思ったら大間違いだ。能作・常山夫妻は完全にここで生活し仕事をしているのだ。


4面に開口がありとても明るい。剥がした天井から配線やシーリングライト、コンセント、ブレーカーパネルまでもがぶら下がり、カーテンもないが、すっかり慣れてしまい特に不便を感じないという。
ただし、これで完成ではなく徐々に仕上げている途中だ。(いつ完成かは分からないが)


この辺り既存では、2階同様階段に接して壁が立ち、キッチン横の床が広く、洗濯機の向かい側に水回りを仕切る壁があった。施工図がきちんと残っていたのでブレースの位置が正確に分かるためそこを狙って「あな」を空けた。


そうして垂直方向に空間が広がり、光と空気、気配の全てが連続する開放的な空間に生まれ変わった。


およそ居住中の住宅とは思えないカット。階段室にあった小窓からも光が注ぎ込んでいるが、既存では壁で遮られ光は階段室だけのものでしかなかった。
壁はALC板で比較的断熱できているそうだが、今後天井、壁共にセルロースファイバー断熱材と、内窓を取付け二重サッシュにすることで断熱性能を上げていく。


4階寝室もすごい。こちらも4面開口で非常に明るいが同じくカーテンがないので、朝は早くに目覚めてしまうのではと思うが、二人とも慣れてしまい全く問題なく “定時” まで寝られるそうだ。
問題は4層吹き抜けを通じて、1階から蚊が自由に上がってくること。そのため蚊帳だけは取り付けた。


右手が南で電車も通る側になるが、今後の計画では右手にサンルームを設け、洗濯乾燥室兼防音のためのバッファーとする。


日射を遮るものがない4階と、隣家の陰になる2階では熱環境が大きく異なる。実際各階に湿温度計が取り付けてあり、訪れた際3℃以上の違いがあった。この吹き抜けに熱交換用のファン付きダクトを通し、季節によって空気を交換できるようにもする。
エアコンがロープで縛り付けられているが、もはや筆者も驚かなくなっていた。


屋上には太陽光集熱器で温水を作り、1階事務所の熱交換器に送り、そこで温められた高効率の不凍液とペリメーターヒーターで窓際を温める。また太陽光発電も行い蓄電池に充電することなど、屋上では様々なことを計画しているが、斜線によってすぼまっているため床面積が限られている。何をどのうように設置していくか悩みどころだそうだ。


「SDレビュー2017 入選展」


常山未央さんと能作文徳さん。「最終的にはオフグリッド(送電インフラから家を切り離す)を目指しています。お金を掛ければ一気に出来るかもしれませんが、廃材を利用したり、できるだけ環境負荷の少ない素材や設備を検討しながら進めているので、少し時間が掛かりそうです。都会でも享受できる太陽光を利用し、自分たちで実験しながら作り上げていく『都市のワイルドエコロジー』がテーマです。」

【関連記事】
「SDレビュー2017 入選展」レポート(当作品が出展)
「en [縁] ―ヴェネチア・ビエンナーレ帰国展」レポート
「SDレビュー2013 入選展」レポート
「ユメイエ展:日本の若手建築家」と「A&A展」レポート


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07 6月, 2018

中川エリカによる「新宿パークタワーラウンジ」

中川エリカ(中川エリカ建築設計事務所)による「新宿パークタワーラウンジ」を見学してきました。
新宿パークタワーは西新宿三丁目に位置し、リビングデザインセンターOZONEや多くの会社、ホテルなどが入居する東京ガス所有の超高層ビルで、丹下健三による設計で有名だ。
その新宿パークタワー8階に新設した、テナント入居者専用ラウンジを手掛けた。
[Shinjuku Park Tower Lounge by Erika Nakagawa]


ビルには約1万人近くが務めており、弁当派がランチタイムに過ごすスペースが圧倒的に不足しているという。
ラウンジは入居者専用のため入室にはIDカードが必要。手前のエントランスにはベッド3台分はあろうかというベンチが置かれている。


532m2のラウンジには、大小、長短、高低様々なテーブルが配置されている。
既存では雑壁で仕切られた会議室や、OZONEのセミナールームなど幾つかの部屋があったそうだ。それらの雑壁を全て取り払い、天井も剥がし大きなワンルーム空間を作った。


1994年の竣工以来初めて雑壁を取り払う、新宿パークタワー初の “大工事” を行ったという。
そうしてできたワンルーム空間に、同じテーブルをただ並べただけでは空間が間延びし、オフィスと変わらないし、喫茶店のように二人掛けの小さなテーブルを配置しても一人で座るときには二人分を使ってしまう。
そこで基本大きめで様々なサイズ・高さのテーブルを島のように配置し「水平のパーティション」に見立て、集まる人を緩やかに分節、或いは繋げるよう建築的なアプローチを取った。


12種類の椅子と座席で220席を設定。1人当たりの面積は通常の喫茶店と変わらないはずだが、 “むら” を作りだしていることでゆったりと低密に見える。
床はサペリ材。


奥行きは30m近い空間のため、内側と外側で空間の質を分けた。
(※画像をクリックで拡大)


内側(エントランス側)は「セミナーゾーン」と呼び、イベントやセミナーなどに対応。テーブルは動かせるよう分節可能で、プロジェクターが投影できる白い壁、そしてカーテンで仕切ることもできる。照明はダウンライトのみ。


窓側は「リフレッシュゾーン」と呼び、グリーンも置かれ、個別の席がありながらも大きな島が目立ち、スポットライトのほかペンダントライトも備わる。
ちなみにハイチェアには男性が多く、通常の椅子には男女共同じ、低い島型ベンチには女性が集まる傾向があるという。


窓辺には展望席。鉄板で仕上げられていた柱はタイルに張り替えた。内側からテーブルが延長しL字になったタイプや、、


ベンチが延長しそのまま展望席になる箇所もある。


窓からは遠くに明治神宮と代々木公園の緑越しに渋谷方向が見渡せる。
やはり昼時はこの席から埋まっていくそうだ。


高低差のある席は目線が直接交差しにくく他者が気にならない工夫だ。当日見学に訪れていたMARU。architectureの森田祥子さんと高野洋平さんや、、


針谷將史さん、藤奏一郎さん(元中川事務所)などにご協力頂いて撮影。


ラウンジはランチタイムはもちろん、フリーアドレスのワークスペース、打合せにも利用できる。


今回もう一つの建築的なアプローチとして特注の家具がある。
テーブルの天板は厚さ24mm、島型のベンチは30mmのシナ合板で、かなり大きなものばかりなので、曲げモーメントの和を計算するエクセル表を小西泰孝さんにつくってもらい、脚の太さや材質、数を決定。それだけでは揺れや振動などの使用感に対応できないので、フットレストや荷物置きを兼ねた水平な面材や線材を補足して脚をつなぎ、使用感や集まりかたのくくりを検証するスタディを1/10模型で並行させた。
例えば、高いテーブルの振れ止めとして荷物置きを兼ねた面材があるが、この高さを隣接する低いテーブルの天板と揃えることで、低いテーブルの一部としても連続的に使えるようにし、立体的なパーティションとなっている。


揺れ止めは足掛けでもあり、人が集まる “くくり” の目安でもある。


トラス状に交錯したもの。


スチールと木の脚を混在させ、曲線で繋いだもの。


林立する脚と揺れ止めを兼ねた荷物置きや、足掛けを兼ねた木板のタイプ。


足を逃げた脚などもある。普段入れない場所なので何かの機会に訪れることができたらぜひ天板の下にも注目して欲しい。


中川エリカさん。「1つとして同じではない水平なパーティションの様々な脚、座り心地が異なりバラバラに配置された12種類の椅子、天板にあえて明暗の差をもたせている照明など、ささやかなムラを幾重にも重ねることで、『まだらなワンルーム』を目指しました。休憩をする時はココ、打ち合わせをする時はソコ、というように、気分や使い方、集まる人数によって、毎日異なるお気に入りの場所を発見できるようにしています。」

【新宿パークタワーラウンジ】
・設計:中川エリカ建築設計事務所+リビングデザインセンターOZONE
・什器構造:小西泰孝建築構造設計
・施主:東京ガス都市開発株式会社
・施工:東亜ビルテック株式会社(建築)
    株式会社ウェイズ 東京支店(建築)
    株式会社関電工(強電)
    多摩川電気株式会社(弱電)
    新菱冷熱工業(機械)
・什器施工:株式会社E&Y


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