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08 11月, 2009

アトリエ・天工人の「YACHIYO」

山下保博さん率いるアトリエ・天工人のリロケーションプロジェクト国内第1弾「YACHIYO」のオープンハウスに行ってきました。
場所は葉山の森戸海岸のすぐ近く。島根県で廃棄されかけていた大正時代の蔵2棟分の軸組みをリロケートし、構造補強+断熱+調湿の機能を併せ持つ現代のパネルで包みこんだ住宅です。

外壁の仕上げはガルバリウム鋼板の一文字葺。この住宅の名前「YACHIYO」は長い年月を表す「八千代」からきています。

玄関扉は古民家の建具を再利用しポリカーボネートの板でサンドイッチしてあります。

中に入ると外光はかなり制限されており、淡い照明と古い木材の幻想的な空間が拡がっています。

1Fの奥から玄関方向を見る。手前側と柱を挟んで奥側は別の蔵の軸組みになっています。これらの古材は15tトラックで島根から運ばれて来たそうです。

照明は琉球ガラスを使ったオリジナル。

軸組みを包み込むのは厚さ59mmの高圧木毛セメント板。木毛には檜を使用したので研磨することで檜の風合いを表面に出しています。この素材は2003年の住宅「Floating Box」から使用しています。

1Fの床には上海の築80年の建築で使われていた古レンガが敷き詰められています。古木材の持つ力強さに負けない存在感から選ばれました。

左がキッチン、右のトイレのさらに右に浴室があります。

キッチンと収納は地松を貼り、弁柄の塗装。ちなみに左に見えるのはArchiworld社から刊行されている「PA」シリーズ、山下さんのモノグラフです。

キッチンからデッキスペースを見る。

トイレにはRが美しいモザイクタイル。

扉のマイナスビスまでもリロケーションされています!

階段、手摺の鉄骨はリン酸処理で使い古したような風合いを出しています。階段の左に見えるのは輻射冷暖房。

2Fの床には蔵の壁材を使用し、柿渋を塗り重ねているので時間が経つほど色に深みを増していくことでしょう。

二つの蔵の軸組は角度を付けて設置されているので、結合部分は柱や梁が複雑に組み合わさっています。

2Fから1Fを眺める。約5mの高さの天井から蛍のような明かりが吊り下げられています。

西側のデッキスペース。デッキは南側にも回り込むように設置。ここから西に50〜60mで森戸海岸になります。

8月8日のブログで紹介したゼロエミッション住宅「A-ring」でも使用したグリーンカーテンをこの住宅でも採用しています(まだツル植物は植えられていませんが)。

「"時間・環境・cross-culture"をキーワードに、100年以上前のものと現代のものを融合させ、価値を再構築した建築です。」また「今後も色々な文化を合わせて昇華させ、次の時代に持っていきたい。」と山下さん。

海もすぐ近くの最高のロケーションにリロケーションされました。

常に新しい素材・構法を模索し続けるアトリエ・天工人の最新刊、ディテール10月号別冊「アトリエ・天工人/素材・構法からの建築」は彰国社より発刊されています。(表紙の写真は同じく島根の古民家をエチオピアに移築したプロジェクト)

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