廣部剛司 (Takeshi Hirobe Architects) が手掛けた目黒区上目黒の住宅「Gray ravine(グレー・ラヴィーン)」の内覧会に行って来ました。
外観は主張せず、周辺環境に馴染むようなグレー。
カーブした壁は、必要な寸法を調停するためでもあり、また外光をバウンドさせながら淡いグレーの壁に柔らかな陰影をつくり出す装置でもある。
この住宅では外壁、内壁、坪庭の壁、階段室などほぼグレーにしており、素材やものの振る舞いに合わせて微妙に濃度を変えている。
階段室は東西に抜け、日の光を敏感に映し出す「外部」に見立て、各居室はその「外部」に開くように面する。
この構成を考えたとき、かつて廣部さんが訪れたアメリカの世界遺産、渓谷の集落遺跡「メサ・ヴェルデ」を思い出したそうで、そこで名付けたのが「Gray ravine=グレーの峡谷」ということだ。
LDKの床レベルは36cmほど下げた。北側斜線の影響を受ける左側の天井高を取る目的でもあるが、同時に自然に座る場所となり、居場所ができた。
「こういった居場所が絶対的な空間の小ささを補完してくれます。」と廣部さん。
段差は境界の役割も果たす。間に見える耐力壁が丁度サッシュを隠してくれることもあり、坪庭から連続する階段室を不思議と屋外のように感じさせ、空間の広がりを生み出す。
天井のライティングは星空のよう。一見ランダムに見えるが、ソファー、ダイニングテーブルが置かれる位置の真上にくるよう計算されている。
坪庭にはヤマボウシが植わる。見上げると庭に面して様々な性格の開口が面しているのが分かる。
左下は浴室。
水回りもグレーのグラデーション。
浴室からはヤマボウシと、プライベートな空が望める。
2階から表情豊かな階段室を見る。右側が書斎、左側は寝室など。
書斎側にはトイレと奥に納戸も備わる。
書斎は一面が書棚。蔵書家のクライアントのために可能なかぎり書棚を設えた。
見上げるとグレーチング越しのロフトまで書棚が続く。
ロフト階。法定で可能な開口を設け、読書ができる籠もりスペースもある。右の開口は階段室に通じる。
階段室の見下ろし。まさに渓谷のようだ。
寝室側へ。手前から子供室、ウォークインクローゼット、主寝室へと続く。
床はカバの無垢材。
お子さんが二人いるので将来は分割も可能。
ウォークインクローゼットから。
主寝室。トイレと主寝室には有彩色でアクセントを付けた。奥のビンテージ照明は施主が用意したもの。
廣部剛司さん。路地を挟んで隣の家にいるように見える。
「グレーの空間は、見かけ上の光とは違う光で満たされています。そこに人が入り、大切にしているモノが置かれ、、としていくうちに、その光を受け止め、柔らかさが出てくるだろうと思っています」
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