吉村靖孝建築設計事務所による千葉県市原市、「フクマスベース/福増幼稚園新館」の内覧会に行ってきました。
徒歩1~2分程離れた場所に本園があり、幼稚園に上がる前の乳児や、卒園児、その家族、或いは地域のコミュニティ拠点を目指した施設。
(※発売中のGA Japan 140号、新建築5月号に掲載されている作品)
外観は大きなテント倉庫。アルミサッシュをはめ込んだ開口から木造の構造物が覗く。
外構には今後植物がもっと植わる予定。
敷地の奥には、テント内に見えていたような木造の構造物。
斜めに大きく切り取られた構造物を覗く。水盤にもなる〈水たまりエリア〉を囲んで調理室と、右手にカフェが見える。
外壁は近付くと全面FRPで防水されていることが分かる。
「テント倉庫の中に構造物が挿入されている」と事前に聞いていたが、その二つは見たこともない納まりをしていた。隙間はアクリル板で塞ぎ、あえてこの不思議な建物の境界が見えるようになっている。
テント倉庫の裾仕舞いはこのようになっているのかと初めて観察した。
メインエントランスから中へ。外観で見えた合板の仕上げで囲まれている。そのまま正面に進む。
建物中央の〈広場〉は白く仕上げられた壁と、最高部約8mの高さの吹き抜け空間が現れた。正面は先ほどの〈水たまりエリア〉へ。
右には子育て支援室が2室、〈園庭口〉やこども用のトイレなど。 〈子育て支援室〉と呼ぶのはこの施設は保育所などの児童福祉施設ではないからだ。
トイレと一体になった昇降口。
〈園庭口〉も合板ままの仕上げに。この後2階に上がるとどのような構成なのかが見えてくる。
〈子育て支援室〉。本園 福増幼稚園の教育方針は人気があり、遠方から時間を掛けて車で送迎する家庭も多いとのこと。子供を送った後、自宅に戻らずにこのフクマスベースで入園前の乳児と親が一緒に過ごすことが出来るように、というのも目的の一つ。
また近隣の保育施設として、小学校に上がった子の児童保育施設として、地域のイベントスペースとしてなど様々なプログラムを想定しているそうだ。
テントの鉄骨構造と、本体の木構造は基礎も含めて接しておらず、混構造ではない判断で適合判定が下りた。
両構造の隙間は特に人が入るスペースではなく、設備の配管や配線のスペースだ。
2階へ上がり、エントランスを見返す。頭上に不思議な梁が通っている。
2階はテントの天井までフルオープンだ。テントの上部のみ60cmのふかしで二重になっており、日差しや雨音を和らげる。配線は裏側を通り、もちろん換気扇も備わる。
この位置から見るとお分かりになるだろうか。合板現し仕上げと石膏ボード白塗装仕上げが交互に見えるが、右がエントランス、左が職員室。壁は折れ曲がりながら一筆書きで内側と外側の空間を形作り、それをテント倉庫がすっぽりと覆っているのだ。
模型を見るとこのように。
職員室。
所々頭上をかすめるのは “火打梁” だ。2階の壁は構造ではない手摺壁なので実は構造的には平屋、壁を支えるためにこの梁が働いているのだが、「あえて目立たせ『これは何だろう?』と、子どもたちが意味の分からない物事に対して考える切っ掛けになることも意図した。」と吉村さん。梁は130角で、最大11mある。
この火打梁、角度が曖昧なため現場で接合が容易になるよう新しく金物を開発・製作した。
広場の吹き抜けを囲んで左に和室、正面奥にルーフバルコニー、右に雛段。
〈和室〉。プログラム上求められなかったが、何か使い道が広がるだろうということで設置。
〈雛段〉。発表会や催し物、映画上映、図書スペースとしてマルチに利用可能。
ルーフバルコニーへ。
よく見えないがアクリルの手摺があるのでご安心を。オープンでのびのびと、少々のケガは良しとする理事長の考えの元、大らかな建物になっている。これを認可保育所とするためには不可能なデザインが目白押しだ。
吉村靖孝さん。「この敷地には同じような大きさの古い倉庫がありました。当初それを使って施設を作れないかという依頼でしたが、様々な問題でできませんでした。建て替えるになりましたが、かなりコストを抑えなければならなかったがので、テント倉庫でいくことにしました。既製のコンテナを使った建築をいくつか手掛けていますが、ここでも既製のプロダクトであるテント倉庫を使った新しい表現を試みました。」
【フクマスベース/福増幼稚園新館】
建築設計:吉村靖孝建築設計事務所
構造設計:満田衛資構造計画研究所
監修:日比野設計+幼児の城
施工:平井建設
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