6月18日にオープンの、寺田倉庫の建築模型に特化した国内初の展示施設「建築倉庫ミュージアム」を内覧してきました。
場所は、天王洲アイル駅からほど近い寺田倉庫本社ビルの1階。
Archi-Depot [The Only Museum in Japan Specialized in Architectural Models]
場所は、天王洲アイル駅からほど近い寺田倉庫本社ビルの1階。
Archi-Depot [The Only Museum in Japan Specialized in Architectural Models]
エントランス。自社デザインしたインテリアで、高さ3.6mほどもある木製扉は倉庫としての機能も持っているため、大型模型の搬出入も可能だ。
レセプション。
ちょうど隈研吾建築都市設計事務所の海外から戻ってきた梱包箱が実験的にディスプレイされていた(オープン時は変わっている可能性有り)
ラック1ユニットは、幅1500mm、奥行き750mm、高さ3800mmが基本サイズ。幅・奥行きがこれに収まらない大きな模型に合わせてサイズが異なる場合もある。模型のサイズにもよるが全体のキャパシティは500点ほど。
陳列室は美術品と同等の温度・湿度で保管されているが様子を見ながら微調整していくそうだ。
日本ではそもそも収蔵品になるという概念がほとんどなく、保管スペースの問題から廃棄されることが多い。本施設はそのような憂慮すべき状況を打破すべく、「日本の建築文化と質」を価値ある資料として捉え直し、後世に残すための “正倉院” になることを目指している。
羽田空港から電車で30分足らずという立地のよさから、すでに海外からのツアー訪問先としてオファーが多くきているという。
建築家がよく"梱包箱からプレゼンが始まる"と言う通り、そこには各建築家の個性が表れてくるため梱包箱も展示の一部だ。コンペに出すために制作したと思われる箱や、海外の展覧会に出展したと思われる箱など、梱包箱を通じてバックヤードを垣間見るようなリアリティを味わうことができる。
実際今後も必要に応じて事務所所員がここに模型を取りに来て持ち出したり、要請によってミュージアム側から発送手配もする予定だそうだ。
現在収蔵さている模型の一部を紹介。
〈飯山市文化交流館 なちゅら〉 隈研吾建築都市設計事務所〈中国美術学院民芸博物館〉 隈研吾建築都市設計事務所
恐らく日本一模型の多い建築事務所である隈事務所の模型が一番多く収蔵され、隈事務所自体も積極的に本館を活用しているのが伺える。
山本理顕設計工場のラック〈ザ・サークル〉 チューリッヒ空港に建設中で2020年竣工予定
〈流山市立おおたかの森小・中学校、おおたかの森センター、こども図書館〉
CAt/シーラカンス アンド アソシエイツ
言わずと知れた2016年の日本建築学会賞作品で、学会での展示後ここに収蔵されている。
模型のベースにはQRコードが刻印されていた。試しにスマホをかざすと、事務所のHP、英語の文字情報、実際の建物のドローン空撮動画が表示される(この画像からもスキャン可能)
〈釜石市立鵜住居地区学校等〉 CAt/シーラカンス アンド アソシエイツ
〈釜石市唐丹地区学校等建設工事設計業務委託プロポーザル〉
千葉学建築計画事務所
古市徹雄都市建築研究所のラック
〈中村キース・へリング美術館〉 北川原温建築都市研究所
マウントフジアーキテクツスタジオ+芝浦工業大学建築学科原田真宏研究室
青木淳建築計画事務所
大型模型ばかりではなくこのようなスタディ模型や、ファサードの検討模型なども貴重な資料だ。
地元の事務所に十分な収納スペースがあるにもかかわらず模型の提供を申し出てくれた。
〈聖イグナチオ教会〉 香山壽夫建築研究所
竣工には至らなかった幻の作品に出会うこともできる。
ギャラリーコーナー。
企画展などのほか月一回程度セミナーを行う予定。出展建築家が大学の講義の場所として使うこともできる。
現在は、2014年ポーラミュージアムで開催されたワンダーウォール(片山正通)の個展で展示されていた模型が陳列されている(見逃した方はこの機会にぜひ)。
〈UNIQLO New York Fifth Avenue〉
別室の〈修復室〉。
寺田倉庫のインハウス模型チームや、出展建築事務所の所員が搬出入時等に修復を行うスペースではあるが、書籍や物販コーナーなども設置されるミュージアムショップ的な役割や、来場者が自由に閲覧できる図書、模型修復の様子の見学、模型製作ワークショップ等を予定しており、9月末のオープンを目指す。
この日も搬入されたばかりで修復を待つ模型がいくつかあった。
建築倉庫館長の徳永雄太さん。
「建築模型こそクールジャパンだと思っています。海外の文化機関と連携して、これら模型を中心とした日本人建築家の展示を世界各地で行うなど、日本の建築文化を普及するさまざまな事業を展開していく予定です。本施設を拠点に、模型が世界中をまわっては戻ってくるというようなサイクルが生まれる日が楽しみです。」
「このような施設は今まで必要だったにもかかわらずなかったものです。ここを寺田倉庫はビジネスとしては捉えず、0だったものを1にして、ものごとを動かす切っ掛け作りとして働きかけています。とてもエネルギーが必要なことですので皆さんのご協力と意識により醸成していけたらと思っています。」
出展団体:青木淳建築計画事務所、阿部仁史アトリエ、北川原温建築都市研究所、隈研吾建築都市設計事務所、クライン ダイサム アーキテクツ、香山壽夫建築研究所、SANDWICH、シーラカンス アンド アソシエイツ、千葉学建築計画事務所、トラフ建築設計事務所、株式会社日建設計、坂茂建築設計、古市徹雄都市建築研究所、MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO + 芝浦工業大学建築学科原田真宏研究室、山本理顕設計工場、Wonderwall (R)など
ミュージアム見学の後、徳永さんより天王洲エリアの楽しみ方も案内していただいた。
〈寺田倉庫本社〉本社ロビー。こちらは社内デザイン。
〈ピグモン(PIGMENT)〉 隈研吾建築都市設計事務所
希少な画材を揃える画材ラボ。建築倉庫ミュージアム(本社ビル)の隣にある。普段から開催されているワークショップに、"模型づくり"を入れるなどコラボレーションを検討しているという。
そして筆、刷毛、硯、墨、膠(にかわ)など、商品やミュージアムとしてのコレクションが並ぶ。海外からの観光客にも人気で、特に岩絵具を買って帰る方が多いそうだ。
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