敷地面積3,113m2、建築面積1,711m2、延床面積2,899m2。RC造+S造、地下1階、地上3階建て。
2013年、5組の指名コンペによって納谷建築設計が選ばれ、元々あった昭和幼稚園を幼保一体の認定こども園として建て替えた
キャンパス内には大学と付属の小中高全ての校舎が建ち並び、その合間を抜けるとこども園が見えてくる。2013年、5組の指名コンペによって納谷建築設計が選ばれ、元々あった昭和幼稚園を幼保一体の認定こども園として建て替えた
既存では2階建てであったが、キャパを多くするため3階建てに。3階建てにすることで南西に建つ園舎によって園庭が陰になりやすいので、園庭を2階に持ち上げた。中央には象徴的な大階段を配し、キャンパスとの連続性を表現。4歳児クラス以上はこの階段より2階の教室に登園する。
園舎の反対側はキャンパスの外で、近隣の生活道路に面している。
通り沿いには高さ2m近いコンクリートの壁が続いていたものを撤去し、金網と植栽で地域との親和性を持たせた。園舎も大きなボリュームが威圧的にならないよう配慮された意匠だ。
キャンパス内に戻ってエントランスへ。既存の植栽を残したり、できるだけ移植して緑豊かな外部園庭。園庭と敷地境界は曖昧で、保育園や幼稚園の常であるフェンスによる囲いがないのは、警備されたキャンパス内にあるという安全が担保された環境にあるためだ。
エントランス側のスラブは大きく湾曲しながら持ち上げられている。
メインエントランス。0歳から3歳児、職員が主に利用する。下駄箱などの家具デザインは藤森泰司アトリエが担当。
中から振り返ると、持ち上げられたスラブは北東の角に光と緑を取り込むためだと分かった。
スッキリとした開口が得られるようRCの耐力壁は建物内側に留め、外側には無垢の鉄柱(φ80~130!)が多用されている。
スッキリとした開口が得られるようRCの耐力壁は建物内側に留め、外側には無垢の鉄柱(φ80~130!)が多用されている。
オープンな教員室と廊下を挟んで0歳から3歳児クラスが並ぶ。
ガラス引戸に描かれるのは「あやめ組」を表すサインで各保育室で異なる。サインはインターオフィス+粟辻デザインが担当。
ロッカーなどの造り付け家具は壁に巻き付くように、カーブを描きながら設えた。ガラス引戸に描かれるのは「あやめ組」を表すサインで各保育室で異なる。サインはインターオフィス+粟辻デザインが担当。
遊び心ある引戸のカギ。(こどもには届かない)
保育室内も家具のコーナー、間接照明で丸みを出している。
照明は岡安泉照明設計事務所が担当。
1階には保育室が6室あるが、引戸を開放し3室ずつ連続させることが可能。照明は岡安泉照明設計事務所が担当。
先に紹介した道路側にはテラスと庭があり、子どもたちの活気を街の賑わいの一部として還元される。
但し、通りの向かいは住宅ではなく付属の体育館。
但し、通りの向かいは住宅ではなく付属の体育館。
教員室の裏側、園舎の中央には中庭が配される。中庭のレベルは数10センチ持ち上げられ舞台のように。
ホールはランチルームや遊戯室、午睡にも利用。
ホールはランチルームや遊戯室、午睡にも利用。
なんと、ペレットストーブが。火は危ないから設置しない、ではなく、火の暖かみや火を囲んだアクティビティを体験。
既存園舎にあったタイル壁画は流用した。
その他エントランス脇に掛けた釣り鐘や、、、
その他エントランス脇に掛けた釣り鐘や、、、
屋上の風見馬、、、
ステンドグラスは壊れないように周囲の壁ごと解体し移設するなど、何千人の卒園児達の記憶も留めている。
2階トイレ。カーテンは安東陽子デザインが担当。4歳、5歳児クラスは各室がオープンだ。
3階遊戯室。床はフラットを考えたが、この広さでは天井高が低く感じるため床を2段下げた。それにより椅子がなくても園児が座ることができ段差が生まれた。また天井もできるだけ上げようと梁を避けて山型の天井にした。
床材はロシアンバーチ、天井はタモ。
3階屋上テラス。梁の上はガラスが張られ、雨天での利用も可能だ。床材はロシアンバーチ、天井はタモ。
屋上テラスから。当初のプログラムでは4階建てを求められたが、園庭に日が当たらなくなることと、このような大学の校舎が建ち並ぶ環境で、小さな子どもたちの園舎では低層で伸びやかなボリュームが望ましいと提案したそうだ。
3階建てに低くして、既存園舎の色彩を再現しつつ、ダークな色調(焼き杉に塗装)の2階に白いボリューム(ガルバリウム)の3階を乗せ、さらに軽やかさを出している。
2階園庭は全面人工芝。よく見ると根元に枯れ芝まで再現してあった。
園庭の片隅には “標高1m” の小山。山頂のカルデラは砂場。この山、スラブごと盛り上がっているそうだが、1階からは天井に隠れ凹んだ状態は確認出来ない。
園庭の反対側にはなだらかな丘になっており、こちらも1mの高低差がある。
そう、この丘はエントランスに見えたスラブだ。よく見るとスラブの厚み1/3程に人工芝を回り込ませ、ぶ厚い梁成を薄く見せる配慮が。
一方は大学のキャンパス、もう一方は地域の人々が行き交う街路に面するという、異なる条件に挟まれながら可能な限り全ての人に優しくあろうとする佇まいだ。
納谷学さん(右)と納谷新さん(左)。
「このビル校舎に囲まれた環境ですが、できるだけ園庭を広く、できるだけ日が当たるように計画し、子どもたちがとにかく元気に活動できるよう、行き止まりのない動線と起伏を散りばめました。3階建てとはいえファサードの幅は50m近くもあるので地域に対しても暴力的にならないように配慮しました。」
【昭和女子大付属 昭和こども園】
設計:納谷建築設計事務所
構造:昭和女子大学 森部康司研究室 + yAt構造設計事務所
設備:設備計画
カーテン:安東陽子デザイン
サイン:インターオフィス + 粟辻デザイン
照明:岡安泉照明設計事務所
家具:藤森泰司アトリエ
施工:東急建設株式会社
「このビル校舎に囲まれた環境ですが、できるだけ園庭を広く、できるだけ日が当たるように計画し、子どもたちがとにかく元気に活動できるよう、行き止まりのない動線と起伏を散りばめました。3階建てとはいえファサードの幅は50m近くもあるので地域に対しても暴力的にならないように配慮しました。」
【昭和女子大付属 昭和こども園】
設計:納谷建築設計事務所
構造:昭和女子大学 森部康司研究室 + yAt構造設計事務所
設備:設備計画
カーテン:安東陽子デザイン
サイン:インターオフィス + 粟辻デザイン
照明:岡安泉照明設計事務所
家具:藤森泰司アトリエ
施工:東急建設株式会社
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