1月28日よりTOTOギャラリー・間で始まる岸和郎の個展「京都に還る_home away from home」のプレス内覧会に行ってきました。
ギャラリー・間では2000年以来2回目の展覧会になる。
[WARO KISHI:京都に還る_home away from home]
[WARO KISHI:京都に還る_home away from home]
‘80年代(30代)、現代建築家を標榜していた頃、京都にとらわれず、どう京都と距離を取るかを考えていた。しかし周囲には「自分の建築は何てちっぽけなんだ」と打ちのめされるような名建築が立ち並ぶ京都。そんな中、自分では現代的と思って設計した〈日本橋の家/1992〉が、ヨーロッパの人々に「日本的だね」と褒められ愕然としたという。
それを期に「もがいてもしょうがない、京都に還ろう」(=京都を受け止め関わる)と決心した。
「この展覧会はそんな『京都』から時に逃げたり、時に利用したりしながら建築に関わり続けてきた私の現在であり、作品を展示するだけではなく、私という建築家のアクティビティの有り様全てをここに持って来ようとした。」
建築家であり、教育者であり続けた岸和郎。左から教鞭を執ってきた京都芸術短期大学(現京都造形芸術大学)、京都工芸繊維大学、京都大学という3つの大学内に設計した建築が並び、それぞれの大学の岸さんと縁の深い研究室が制作協力を買って出た。
ちなみに会場には作品名も作品の解説も掲示されていないので、受付でリーフレットをいただいて、それを見ながら回ることになる。
デビュー作としてはかなり大きな建築を手掛けた。
京都造形芸術大学 城戸崎和佐研究室、大阪工業大学 朽木研究室が担当。
校舎でのアクティビティの様子を伝える写真や、ディテールの図面などで構成されている。
食堂や生協が入る建物。
京都工芸繊維大学 木下研究室が担当。
「いつも見慣れた学食でしたが、図面を見ると中には非常に工夫された構造があることが分かり、このような架構模型を作りました。」と木下昌大さん。
景観条例により勾配屋根であることや、屋根・壁の形式、素材、色まで限定されている。
京都大学岸研究室が担当。
スチレンボードで精密に再現されたH型鋼。
前述した「京都に還る」決心をするきっかけになった住宅。
〈下鴨の家〉 京都府/1994
近代住宅の標準化を目指し、平面計画と架構を重視し設計した。
和紙に描かれた〈和歌山の家(松が丘の家)〉 和歌山県/2002年
中庭は京都の碁盤を模した展示。
アクリルキューブに焼き込まれた作品は、概ね京都での所在地に配置されている。
中央には京都御所を苔で表し、右奥の石を比叡山に見立て、その向こうに配置されたキューブは滋賀県の作品を表す、言わば枯山水になっている趣向だ。
プラズマ切断機で精細に作られたアルミ製の模型は〈京都大学 北部グラウンド運動部部室棟〉 。
3階展示室は最近の仕事の数々。
空間を仕切るように吊り下がる〈テキスタイルウォール〉 は岸さんの教え子で現在はストックホルムに拠点を置くテキスタイル作家 森山茜による。
岸さんが敬愛する倉俣史朗へのオマージュとして森山さんに依頼した。
昨年自身が監修した展覧会「丹下健三が見た丹下健三」を彷彿させる。
2015年のプロポーザルコンペでのプレゼンテーション模型。地下部分に増床するプロジェクト。
(※採用案は青木淳・西澤徹夫設計共同体)
ゴーグルを装着してバーチャル映像を見ることができるものがあるが “酔う” 方が多いため開発された。実際会場で自由に体験でき、地上、地下、平面、断面がどんな角度からでも見ることができる。
(※正面の発光部分は西日が当たっているため)
この日は、裏千家 茶道芳心会を主宰する木村宗慎(きむら・そうしん)によってお茶が振る舞われた。
木村さんは2月14日開催のギャラリートークのゲストだ。
展覧会に協力した卒業生達の作品がタブレットで閲覧できる。
岸さんから協力者達への感謝は絶えなかった。
岸和郎さん
「展覧会は私自身の展覧会であると同時に、私に関わった人達の協働の成果でもあります。」
2016年3月をもって京都大学を退官する氏の講演会が1月29日に開催されますが、これが京都大学最後の講義という位置付けだそうです。
【岸 和郎:京都に還る_home away from home】
会期:2016年1月28日 ~ 3月20日
会場:TOTOギャラリー・間
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