4月15日よりTOTOギャラリー・間で開催の「三分一博志 展 ― 風、水、太陽」のプレス内覧会に行ってきました。
[Hiroshi Sambuichi ―― Moving Materials]
何年も前から開催の依頼をしていたが、1年ほど前、ようやくタイミング合い開催の運びとなった。
「建築に対する巨視的な視点、そこから生み出される建築はモダニズムに対する鋭いクリティークにも感じる。」とTOTOギャラリー・間 代表の遠藤信行さん。
会場に掲示される三分一さんのメッセージより:
「本展覧会では設計のプロセスにおける『動く素材』をテーマにしています。なぜなら風や水、太陽といった『動く素材』は地球全体を考える軸となりうるからです。私の設計の過程はつねに『動く素材』への探求です。
(中略)長い年月、自然にさらされる建築の宿命において、『動く素材』をないがしろにし、地球を欺き続けることは難しいでしょう。一方で地球は『動く素材』に丁寧な建築に対しては、さらに美しい形へと仕上げてくれます。『六甲枝垂れ』で樹氷が白く美しく建築全体に着氷したとき、私は改めてそのことを実感しました。地球は私にとって師であり、永遠のパートナーなのです。」
瀬戸内を中心に活動する三分一さんのマニフェストは、「建築は地球の一部であり、建築を考えるという事は、地球のディテールを考えること。」
3階会場は吊り下げられた2枚のスクリーンに映し出される4つのコンセプチュアルな映像と、壁面に設置された複数のモニターには作品画像のスライドショー。
瀬戸内の美しい写真。
リサーチのために1、2年時間を掛ける、時には空から。
〈宮島弥山展望台〉 広島県/2013 ©新建築社写真部
「宮島は子どもの頃から数え切れなほど訪れている。言うなればリサーチ期間は40年です。」山頂からの宮島や瀬戸内の美しい景色を見てもらう手段として展望台を設計したのであって、建築を見てもらうものではない。
ミシュランガイドの三つ星を獲得している景色だそうだ。
〈犬島精錬所美術館〉 岡山県/2008 ©三分一博志建築設計事務所
美しい景色ばかりと思っていた瀬戸内で初めて破壊され尽くした自然を見た島。江戸時代より石材が掘り出され、その役目が終わった後明治・大正期には銅の精錬所として創業したがわずか10年で閉鎖。経済活動によって切り刻み搾取されてきた島を、経済に価値を見ない新しい価値を与え再生しようと試みた。
犬島精錬所美術館内の動画。リサーチと実験を重ねた煙突効果によって館内の通路に空気が動き、地下で冷やされた空気が自然の冷房によって館内の空調を果たす。外気温が36度あっても館内は27度まで下がる。
〈直島ホール〉 香川県/2015 ©三分一博志建築設計事務所
様々な使い方が出来るホール兼地元の集会所で。入母屋の開口を抜ける直島特有の風を利用し、負圧によってホール内の熱を排気できる。
スクリーンでは風のリサーチの様子が映し出されている。
〈風と水のコクピット〉屋根の実証実験のために現地に作った大型のモックアップ。
吹き流しが入母屋に吸い込まれている様子。モックアップは瀬戸内国際芸術祭2013でパビリオンのひとつとして公開された。
中庭展示は動く素材「風、水、太陽」をテーマとした水の循環の実験装置のインスタレーション。
多数の吹き流しは、この小さな中庭に均一な風が吹くことがないことが分かる。どのプロジェクトでも、吹き流しを使って季節や時間帯を設定し風向の定点観測を行い、観測データをコンピューター解析(CFD)に反映し、設計を進めていくという。
5つの透明な箱はそれぞれガラスやアクリル、底面が白や黒、内部条件が異なることで水蒸気の出方に違いがあることが水滴によって確認出来る。
「我々は、この小さな地球という器の中で動く素材を共有していることを理解し続けなければならない。」
飛び石は犬島産のもの。
4階展示室はリサーチに使われたモックアップ、模型、実験の様子を伝えるビジュアルなど。
リサーチ、シミュレーション、エクスペリメント、モックアップとテーマに分けられた展示物。
〈犬島精錬所美術館〉 気流模型。線香の煙を使って、煙突効果と太陽熱による館内の気流をリサーチした。3階のスクリーンでは実際の館内でシャボン玉が操られているように奥へと泳いでいく様子が見られる。
〈風洞実験器 - 初期型〉
前方の扇風機によって空気を吸い出し、後方のハニカムで整流された線香の煙が風洞内を抜けていく。
主に1/100から1/50のモデルを確認するもの。「このシンプルな実験器での検討プロセスが新しい地球のディテールを決めていく。」
〈直島ホール〉風洞用のモデル。屋根形状により気流の違いを検討。
シミュレーション動画。
〈六甲枝垂れ〉 兵庫県/2010 ©三分一博志建築設計事務所
瀬戸内や神戸の街並みを望む六甲山の展望台。枝垂れをモチーフにした殻には厳寒期 “樹氷” が着氷すように設計された。
素材や太さなどのリサーチを重ね、樹氷ができる条件を見つけ出した。
三分一博志さん。「瀬戸内は、人々の生活、文化、産業が “動く素材” によって育まれ、一体となっています。これ程豊かな地域は地球上にはないのではないでしょうか。美しい瀬戸内を伝え残していくために、私は建築を手段とする事しか出来ませんが、 “動く素材” に丁寧であればきっと自然に大切にしてもらえ、永くあり続けらると思っています。」
【三分一博志展 風、水、太陽】
会期:2016年4月15日(金)~6月11日(土)
会場:TOTOギャラリー・間
詳細:www.toto.co.jp/gallerma/ex160415/index.htm
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