japan-architects.com
ラベル テナントビル の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル テナントビル の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

12 3月, 2018

小山光/キー・オペレーションによる「神田テラスビル」

小山光/キー・オペレーション(KEY OPERATION INC. / ARCHITECTS)による千代田区の「神田テラスビル」を見学してきました。場所は千代田区神田錦町、新御茶ノ水や小川町駅から数分の場所。


敷地面積155m2、建築面積117m2、延床面積986m2。S造+一部RC造、地下1階、地上9階建て。
靖国通り、本郷通りから1本入った、周囲は大小のオフィスビルと路面に店舗が点在するエリア。


施主からは飲食店が多く入居するレストランビルを依頼された。各階にテラス(バルコニー)を設け、ガラス張りの外周と合わせ、店の賑わいが街にも現れる仕掛だ。


日が暮れるとテラスの天井が暖かく照らされる。


夜空に浮かぶテラスはかなり目を引く。側面には店舗のサインが入れられるよう行灯の看板が用意されている。


1階以外は裏手のエントランスよりアプローチする。地下1階にはスポーツ用品店が既に入居している。


地下1階「ロンドンスポーツ」。インテリアはキー・オペレーションがデザインを担当した。現在はもちろん商品で一杯の空間だ。
(photo: Key Operation)


細長い建物だがエントランスは裏手に寄せ、人通りのある前面道路側を積極的に街に関わりを持たせるようにした。


9階。2面(先端部は3面)の全面開口から東京の街並みと同化するような雰囲気だ。隣はガソリンスタンドなので上階では視線が抜ける。
グリッド状のサッシュは入居テナントが大面積のPOPを出しにくくし、ある程度のデザインコードとする効果を持たせた。


7階。外観から見えた屋内・屋外二つのテラスを持つフロア。


贅沢な屋外個室を楽しめる。


テラスの間からは下階の様子も伺える。ほかの店舗も見えることで「次回はあちらの店に行ってみよう。」といったリピート効果を狙った。


一つ下の6階からはキャンティレバーで3.6m突き出すテラスがこのように見える。広いテラスではプランターで植栽も設え、ガーデンテラスの雰囲気だ。


天井は燻製ホワイトアッシュ張り。


フロア毎で完結しない、立体的な関係性を大事にした。
今まで幾つものテラス(バルコニー)を持つ建物を手掛けた小山さんは、経験から広すぎず、狭すぎずの絶妙な広さに設定した。広すぎるのは裏を返せば室内が狭い、狭すぎると活用してもらえないという。


4階、3階では隣のガソリンスタンドの看板が "借景" となり、都市のアウトドア空間として敢えて楽しむことができる。
なお、スタンドは日曜は休業で、平日も20時には閉店し消灯されるそうだ。


大通りから見ると「何かあるぞ」と人を吸い寄せるようなキャッチーなファサードがよく分かる。

「飲食テナントビルの設計では、それぞれ全く異なる個性のテナントをどのように集合させて、どのように街並みに関わらせていくべきか考える必要があると思います。レストランが集合した建物のイメージを作り、このビルに来れば、いつも異なる食事が楽しめるというアピールができるようにしました。」と小山光さん。


【神田テラスビル/Kanda Terrace】
東京都千代田区神田錦町1-14-13


**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. Copyright: japan-architects.com

15 12月, 2016

中佐昭夫/nafによるパナマ領事館も入居のオフィスビル「Village on the Building」

中佐昭夫/ナフ・アーキテクト&デザインによる東京 港区のオフィスビル「Village on the Building」を見学してきました。
大江戸線赤羽橋駅、南北線麻布十番駅から数分の場所。

 敷地面積334m2、建築面積232m2、延床面積963m2。RC造地下1階、地上5階建て。
1~2階にはパナマ領事館が入居し、3~5階にはオーナーの弁護士事務所や司法書士事務所などが入居する。

 でこぼことユニークな外観は、2色のタイルといくつかの切妻ボリュームがつくりだしている。
通常、道路や北側などの斜線規制に掛からないように、水平・垂直ラインで建てると薄茶色の階段状のボリュームのみになるが、斜線の内側に勾配屋根のボリュームを作られることを「発見した」と中佐さん。

 切妻ボリュームの中はもちろん角形の “本体” と繋がっているが、敢えて屋外階段をいくつか設け、バルコニーを繋ぎながら離れのような存在で建物内でも少し性格の異なる空間としている。


 敷地の角に面したエントランス。右側にオフィスビルではあまり見掛けないシルバーのポールが据え付けられているのは、領事館としてパナマ国旗を掲揚するためだ。


 エントランスホールは2層吹き抜け。左にエレベーターや階段室へ。1階奥と、右の階段をあがるとパナマ領事館へ。壁面のサインが建物のシルエットになっている。


 パナマ領事館のエントランス。この扉の向こうは治外法権だ。領事館内のインテリアは特に中佐さんは手掛けていない。


 2階からエントランスホールを見返す。


 外観で見えた屋外階段で3階へ。


 3階バルコニーからさらに屋外階段で4階、5階へと続く。
右の切妻ボリュームの3階部分は弁護士事務所の所長室。その上は予備室。

 3階、沙門外国法事務弁護士法人のオフィス。スペイン人のオーナーであり所長の依頼によりアイストップにビビッドな太陽の差し色が入る。


 躯体に埋め込むことが出来なかったエレベーターのパネルは、外付けになるならとしっかり家具のように製作した。


 所長室。ここにもオレンジや赤の差し色。


 ここが3階のバルコニーだと忘れてしまいそうなカット。


 4階。一層ずつシーンが切り替わる。
4階は関連の会計事務所、司法書士事務所、行政書士事務所とミーティングルームが入る

 都心でビルが多いため、少し場所を動くだけで街の見え方も変わってくる。わざわざ屋外階段で移動することで得られる小さな都市体験だ。


 5階。中佐建築特有のカーブした壁はここに現れた(!)


 中は、応接や会議のほかパーティーなどのにも使える多目的空間。
ここも切妻ボリュームで、
斜線に掛かる部分を弧を描きながらナイフで切り取った格好だ。



一角は樹脂モルタルでテクスチャーをつけ、空間が単調にならないように。

このビル唯一の南側開口はリビングのような空間。オフィスの南側に開口を設けても熱環境的に良い事はない上に、結局殆どブラインドを締め切ってしまう。それならいっそ階段室やエレベーターホール、設備を全て南側に寄せた。

ガス暖炉、ベイマツのフローリングと家庭的な雰囲気。
右はラーセンによるデザインの “エリザベスチェア”。滑らかな革に、包み込まれるような座り心地が最高だった。

最後に地下へ。

領事館が入居することが前提であったため、駐車場のスペックは「メルセデスのSクラスが5台停められること。」が条件だった。
そして奥の扉もカラフルで、特注塗装してもらった変電ボックスが目を引く。

オーナーのモントロ・ミゲルさんを挟んで中佐昭夫さん(右)と、担当の天野徹平さん(左)。
モントロさんは「2年前いくつかの気になる建築事務所に連絡をしました。私の日本語があまり良くなかったのか皆相手にしてもらえませんでしたが、中佐さんだけは誠実に対応してくれました。タイトなスケジュールでしたがとても丁寧に私の話聞いてもらい、素晴らしいアイデアの建物が出来ました。」と話す。
「モントロさんからはどこにでもあるような箱型の建物は避けて欲しいとお願いされました。法規の厳しい都心部では規制によって外観がほぼ決まってしまいます。斜線で使えなくなるようなスペースを隅々まで利用することで立体的に構成し、山に根ざした村のような建物が生まれました。」と中佐さん。

【Village on the Building】
設計:中佐昭夫・天野徹平/ナフ・アーキテクトアンドデザイン
構造設計:なわけんジム
設備設計:EOS plus
施工:田久保工務店

沙門外国法事務弁護士法人www.samon.jp/jpn



**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. 
Copyright: japan-architects.com


01 6月, 2016

新関謙一郎による「元代々木プロジェクト」

新関謙一郎/NIIZEKI STUDIOによる「元代々木プロジェクト」の内覧会に行ってきました。小田急線・代々木八幡駅、千代田線・富ヶ谷駅から7~8分の場所。

 敷地面積29m2、建築面積17m2。木造1階建て。ビルの谷間に生まれた今のところ “謎の建築” 。


 歩道を歩いて近付くとこのように見えてくる。敷地はほぼ直角二等辺三角形で、敷地なりに三角形の平面を持ち、壁2枚、天井1枚だけで成立している建築。


 山手通り沿いで、歩道の拡幅で生まれた変形地と思われ、使い道がなく長年放置されていた敷地を施主が購入し、「何か建てられないかな?」と新関さんに依頼があったそうだ。

建物の間口は約9mあるものの全面ガラスで、軒高は1.8m程と低め、かつ屋根が後ろへ傾斜しているので物理的には控えめ、なはずだがこの存在感。
敷地目一杯に建っているように見えるが建蔽率は60%。

 中へ入ると直方体の箱がひとつと、背後にハイサイドライトが一筋。以上だ。
照明も空調も見当たらない。

 察しの通り箱の内部はトイレで、その上部にエアコンとサーキュレーター、そしてアップライトが設えてある。エアコンの配管、トイレの換気ダクトは床下を通って外構に通じている。
天井の頂点高さは6m。

階段状に整然と組み上げられた木材はツーバイ材、壁が2×8、天井が2×10。

 壁2面、天井1面に各100本ずつ、計300本のツーバイ材が積層され、そのまま構造になっている。強度的に相当なスペックだろう。


 軒は30mm角の無垢鉄柱が2本支持している。柱なしでも十分持つが、クリープでほんの少したわんでくることが予測され、そうすると中央のエントランス部分に集中して雨が流れてくることを避けるため。


 軒下には縁側を設けた。周囲には全く腰を掛ける場所はないが、突然街に居場所が生まれた。
ガラスファサードは新関さんにとって初めてだそうだ。




街を切り取る全面開口。縁側のデッキ材はしばらくすれば退色しグレーになるので、内部がそのまま連続して見えるよう想定されている。

緊張感のあるディテールをいくつか。
 外壁の仕上げはスサが練り込まれた樹脂モルタル(ジョイントV)。





 新関謙一郎さん。「形を決めて直ぐに、構造を長谷川大輔さんと検討しました。単なるパネル構造では面白くないので、汎用のツーバイ材を使ってコストを抑えながらユニークなものができました。 "小さいのに大きい” 、 "目立たないが存在感がある” 建築を目指しました。」


徒歩15分程離れた井の頭通り沿いには、新関さん設計の「OYM」があるので行ってみた。

【元代々木プロジェクト】
設計監理:NIIZEKI STUDIO(新関謙一郎、上島直樹)
構造設計:長谷川大輔構造計画
施工:株式会社 青

【関連記事】
世田谷の住宅「WKB」


**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********

Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. 
Copyright: japan-architects.com