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10 9月, 2019

「突然ですが、納谷建築設計事務所 2019年9月7日から19日まで丸の内に引越します」展

納谷学+納谷新/納谷建築設計事務所による「突然ですが、納谷建築設計事務所 2019年9月7日から19日まで丸の内に引越します」展をレポート。会場は丸の内のASJ TOKYO CELL。
[NAYA architects exhibition]


1993年事務所設立から26年間の活動をダイジェストにした展示で、存在感のある無垢の展示台に模型、両側の壁にビジュアルが並んでいる。


事務所のターニングポイントとなった作品の模型が並んでおり、会場をぐるぐる回りながら、どの側からでも模型が見られるように構成されている。


そして作品の模型もさることながら、展示台にも目がいってしまう。ずっしりとした木毛セメント板に、、、


こちらは軽い断熱用のスタイロフォームと、、、


そして黄色のコンパネが無加工で積み上げられた展示台。総重量は6tあるとか。これらは協賛の建材会社がここに "仮置き" しているもので、展覧会終了後には実際に現場に運ばれ使われるものだ。(納谷設計の現場とは限らない)
ちなみにフォークリフトなどは使えないので、人力で1枚ずつ搬入し積み上げたそうだ。


展覧会のタイトルにあるように、事務所機能の半分が期間限定で会場に引っ越してきた格好で、スタッフがMacで製図していたり、横では進行中のプロジェクトのスタディ模型を作っていたりする。
納谷兄弟も毎日ここに "通勤" するので、必要に応じてクライアントとのミーティングも行うそうだ。


エントランス付近の有孔ボードに掛けられているのは、今まで手掛けてきた作品のファーストプレゼン模型の一部。これらの模型は場所を取るため多くの設計事務所では廃棄されてしまうが、このようにパッケージ化することで、壁に掛けたり、積み上げて保管できる。また台紙にあえて蛍光カラーを使うことでオブジェクト化しているという。


〈京都の住宅〉京都市/1995
兄弟で事務所を立ち上げ、最初に竣工した作品。模型は弟の新さんが制作した。


〈尼崎パーキングエリア〉 尼崎市/2019


パーキングエリアの設計者をコンペにより選定するという珍しいプロジェクトを手掛けた。


〈野辺山の住処〉 長野県/2019
6月に竣工したばかりの最新作。バイク好きの施主のための別荘で、バイクのアプローチを中心に計画されている。


他にも本展の為に新たに制作した模型が多数あるので是非会場でご覧頂きたい。


左からスタッフの太田諭さん、納谷新さん、納谷学さん、スタッフの高野健太さん
「事務所開設当初は何一つ確かなものはなく、時々舞い込んでくる小さい店舗の設計からスタートしました。何度も住宅設計の話は立ち消えし、初めて建ち上がったのが〈京都の住宅〉です。この住宅を切っ掛けに少しずつ仕事が増え、今までにおよそ200のプロジェクトが形になりました。今回の展覧会では全てをお伝えできませんが、我々が26年余りの中で節目となったいくつかの作品を中心にご覧いただけるようにしました。」

【突然ですが、納谷建築設計事務所 2019年9月7日から19日まで丸の内に引越します】
会期:2019年9月7日〜19日
会場:ASJ TOKYO CELL(東京都千代田区丸の内3-4-2新日石ビル)
https://special.asj-net.com/Naya-hikkoshi
納谷建築設計事務所


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13 8月, 2019

前田圭介による浅草の旅館「茶室ryokan asakusa」

前田圭介(UID)による浅草の旅館「茶室ryokan asakusa」を訪問。
主にインバウンドをターゲットにした旅館で、浅草駅から徒歩8分程の場所に位置する。


敷地面積85m2、建築面積56m2、延床面積336m2。S造、6階建て。9m2〜23m2の全11室からなる。


浅草寺の裏手に位置し、本殿までは歩いて3分程。下町の雰囲気が色濃く残り、周囲には飲食店や宿泊施設が点在するエリア。


下から見上げると、グレーチングを張ったバルコニーが覗く。庇と裳階(もこし)が連続する日本の伝統建築をイメージした。このような帯状の外壁は前田さんの建築でしばしば採用されている。


エントランスは荻野寿也が手掛けた庭。旅行客や通りを行く人を出迎えるようだ。脇には縁側のようなベンチが設えてあり、ちょっと座っていきたくなる雰囲気。


苔むした石がわざわざ大阪から運び込まれ、できてから既に何年も経過しているかのような庭だ。


ロビーは食堂にもなっている。外国からの宿泊客に和食を中心とした朝食を楽しんでもらう。囲みのオープンカウンターで、客同士のコミュニケーションも生みやすくしている。
この日は神職による祝詞が上げられる神事が行われた。


かなりタイトな間口だが、庭を介して通りへ連続させることで出来るだけ開放感を持たせている。
右側は2mの避難経路で、上部に防火シャッターが見える。この間口でロビー、食堂、避難経路を満たすのは容易ではなかったという。


ロビーから奥に進んで玄関。下足を脱ぎたらいで足を洗いを洗ってもらい、足袋に履き替える。昔の旅籠(はたご)での習慣を導入し、日本の伝統を体験してもらう。


廊下へ上がると床は畳。


エレベーターの床も畳だ。壁は銀箔風ダイノックフィルム、天井の照明は一つだけ点け、カバーには和紙まで貼り、ほの暗い日本の旅館を細かく演出。

客室階の廊下はサイザル麻に変わる。玉砂利、土壁、竹、和紙。にじり口の如く低い出入り口、抑えた天高は独特だ。


廊下の突き当たりには床と一輪挿し。


テーマは茶室。客室は9m2〜23m2まであり、トイレ・浴室なし、トイレ・シャワールーム付き、露天風呂付きまで様々なタイプを用意し、旅人のスタイルに対応する。
敷き布団は全室テンピュール。この客室ではヴェルナー・パントンによるTatami Chairが置かれている。


この一番広いスイートでは二間の続き部屋と簾(すだれ)の仕切り。さらに風呂先屏風、なぐりの框、唐紙や土壁、網代天井などの伝統的な仕上げ、雪見障子、掛け障子、欄間などの開口と、日本建築・茶室を想起させる設えが徹底的に施されている。
出入り口はにじり口の高さでは低すぎるので、茶室の給仕口をベースにした高さとした。


床面積が非常にタイトなため、限られたスペースでの水回りの使い勝手を検討するのは苦労したという。この客室の水回りはオーナーの自宅に実物大のモックアップ、というより、実動する同じものを施工して検討したそうだ。


ミニマルな客室は正に茶室サイズ。その中でも床の間や床柱、書院を模した洗面台などをしっかり設えた。雪見障子からは枯山水まで眺められる。
照明は客室でも出来るだけ抑えられており、右下の障子越しと、右奥の小さな障子からロウソクのようなささやかな灯りになる。(左上にあるスポットは清掃作業時のみ点灯する)
天高も2.1mとかなり低く、寝室は実質3.5畳程。このサイズの客室もオーナーのオフィスに実物大モックアップを作り、サイズや仕上げを入念に検討した。


障子を開けるとバルコニーが現れる。非日常と日常と、内と外の中間領域をこの奥行きでつくり出している。


11m2の少し広い客室。


統一されたイメージの中で、少しずつ仕上げが異なる。
畳は通常よりかなり小さく、襖や押入も低い。


こちらにはトイレ・シャワールームが備わる。


6階最上階には、露天風呂付きスイート、共用のシャワールーム、予約制の貸し切り露天風呂がある。


貸し切り露天風呂は十和田石の浴槽。3方に開き、スカイツリーを望む。


露天風呂付きスイート。


寝室は広くはないが、シャワールームと露天風呂が付く。


これらの植栽も荻野寿也によるものだ。






ブランディングやグラフィックデザインは北川一成のGRAPHが担当し、その旅館のマークをあしらった浴衣を着る前田圭介さん。「3年以上かけて宿泊施設の種類やコンセプトなどからじっくり検討を進めてきました。その中で浅草ということからも、外国の方々に日本の伝統的な作法や、佇まい、空間などはもちろん、人と人の距離感、サイズ感を感じて貰えることを大事にした、現代的で伝統的なスタイルの旅館を目指しました。」

【茶室ryokan asakusa】
設計・監理:前田圭介/UID
ブランディング(VIデザイン、アートディレクション): GRAPH/北川一成
内装プロデュース: kaland/川村裕文
造園・ランドスケープ: 荻野寿也景観設計
照明デザイン: ぼんぼり光環境計画/角館まさひで
施工:慶成建設
企画開発及び経営主体: レッドテック
運営主体: レッドテック


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17 5月, 2019

シーラカンスK&Hによる東京の「北区立田端中学校」

工藤和美+堀場弘/シーラカンスK&Hによる東京の「北区立田端中学校」を見学。
2008年、田端中学校と新町中学校が統合され田端中学校となるも、校舎の老朽化により新校舎建設の必要性があった。その後近隣の小学校の統廃合によって空いた旧滝野川第七小学校の跡地を利用して、新しい田端中学校を造る計画としてスタート。そして2015年、新しい田端中学校設計のプロポーザルによってシーラカンスK&Hが選ばれた。
プロポーザルでは地域防災拠点としてのプログラムも組み込みながら、校舎やグラウンドの配置、ボリュームや工法なども提案した。
(※許可を得て外観のみ掲載)


敷地面積7,222m2、建築面積2,312m2、延床面積8,256m2。
校舎棟:PCa・PC造+一部S造・RC造 8階建。
体育館棟:RC造+一部S造・SRC造 2階建。
付属棟:RC造1階建。
生徒数は300人足らずとは言え、元々広くはない小学校の跡地に中学校をつくるのは容易ではなく、できるだけグラウンドを広く、体育館も小学校以上の広さが必要で、そのためには8階建ての校舎、かつプールは8階にあるという公立の中学校では殆ど前例のない建物となった。
手前が校舎棟、奥が体育館棟と呼ばれる。付属棟はグラウンド側の体育倉庫や防災用倉庫のこと。

工事の際、近隣への騒音削減と工期の短さも求められ、躯体はPCa・PCを用いた工法が選ばれた。(PCa・PC=プレキャスト・プレストレストコンクリート。通常の鉄筋コンクリートより強度や耐久性、精度が高い)。
ただし、この工法では巨大なコンクリート塊が搬入されるため、現場へトラックが入れるか、荷下ろし場所や方法、クレーンの配置などを計画し、それによって部材の大きさも変わるため、部材の構造計算、金具の設計など全て事前に把握する必要があるそうだ。

高精度のプレキャスコンクリートが太陽光を鈍く反射させる。
校舎棟の1階に家庭科室、保健室、調理室。2階は昇降口、図書室、職員室、事務室。3階〜5階は普通教室。6階は音楽室、理科室など。7階は美術室、技術室、和室など。8階(屋上)はプール。


体育館棟は現場打ちのRC造。1階はランチルーム、武道場など。2階は体育館。屋上には広場。周囲は木が沢山植わる公開空地として開放される。
体育館内は、軒桁まである掃き出し窓から自然光がルーバー越しに差し込む。

体育館棟はロッジアによって内外の中間領域を設けている。避難所としてもこういった空間は重要になるだろう。

西に面したファサード。変形敷地のため校舎棟と体育館棟が割れるように建っており、その間に各所へのメイン動線を配した。
校舎棟は柱梁が外に現れ、室内はすっきりした空間となり、梁は庇にもなる。

大階段からは生徒や教職員の昇降口へ、その下ピロティーからは、地域にも開くパブリックスペースとしてグラウンドや武道場へ通じる。

大階段をあがって昇降口。校舎内は体育館を除き、中学校では珍しい下足のままという運用。玄関土間や下足入れを廃しスペースを確保するためだ。

「住宅密集地において、隣接するお寺と共に貴重なオープンスペースをもちながら、地域の昔ながらの雰囲気を残す場所です。接道面の敷地を開放し、街角の森として当時の面影を少しでも再現しました。8階建ての高層校舎にはX型の緩やかな階段を配し、階段が単なる移動経路ではなく、留まり立ち話ができる生徒同士の出会いや交流のきっかけとなることを意図しました。外観はプレキャスト・プレストレストコンクリートの構造体がそのまま現れ、この高品質な躯体そのものが地域の新しいシンボルとなることを願っています。」と堀場弘さん。

【北区立田端中学校】
設計監理:シーラカンスK&H
構造設計:KAP
施工:越野・川田・髙山異業種特定建設共同企業体


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