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13 8月, 2019

前田圭介による浅草の旅館「茶室ryokan asakusa」

前田圭介(UID)による浅草の旅館「茶室ryokan asakusa」を訪問。
主にインバウンドをターゲットにした旅館で、浅草駅から徒歩8分程の場所に位置する。


敷地面積85m2、建築面積56m2、延床面積336m2。S造、6階建て。9m2〜23m2の全11室からなる。


浅草寺の裏手に位置し、本殿までは歩いて3分程。下町の雰囲気が色濃く残り、周囲には飲食店や宿泊施設が点在するエリア。


下から見上げると、グレーチングを張ったバルコニーが覗く。庇と裳階(もこし)が連続する日本の伝統建築をイメージした。このような帯状の外壁は前田さんの建築でしばしば採用されている。


エントランスは荻野寿也が手掛けた庭。旅行客や通りを行く人を出迎えるようだ。脇には縁側のようなベンチが設えてあり、ちょっと座っていきたくなる雰囲気。


苔むした石がわざわざ大阪から運び込まれ、できてから既に何年も経過しているかのような庭だ。


ロビーは食堂にもなっている。外国からの宿泊客に和食を中心とした朝食を楽しんでもらう。囲みのオープンカウンターで、客同士のコミュニケーションも生みやすくしている。
この日は神職による祝詞が上げられる神事が行われた。


かなりタイトな間口だが、庭を介して通りへ連続させることで出来るだけ開放感を持たせている。
右側は2mの避難経路で、上部に防火シャッターが見える。この間口でロビー、食堂、避難経路を満たすのは容易ではなかったという。


ロビーから奥に進んで玄関。下足を脱ぎたらいで足を洗いを洗ってもらい、足袋に履き替える。昔の旅籠(はたご)での習慣を導入し、日本の伝統を体験してもらう。


廊下へ上がると床は畳。


エレベーターの床も畳だ。壁は銀箔風ダイノックフィルム、天井の照明は一つだけ点け、カバーには和紙まで貼り、ほの暗い日本の旅館を細かく演出。

客室階の廊下はサイザル麻に変わる。玉砂利、土壁、竹、和紙。にじり口の如く低い出入り口、抑えた天高は独特だ。


廊下の突き当たりには床と一輪挿し。


テーマは茶室。客室は9m2〜23m2まであり、トイレ・浴室なし、トイレ・シャワールーム付き、露天風呂付きまで様々なタイプを用意し、旅人のスタイルに対応する。
敷き布団は全室テンピュール。この客室ではヴェルナー・パントンによるTatami Chairが置かれている。


この一番広いスイートでは二間の続き部屋と簾(すだれ)の仕切り。さらに風呂先屏風、なぐりの框、唐紙や土壁、網代天井などの伝統的な仕上げ、雪見障子、掛け障子、欄間などの開口と、日本建築・茶室を想起させる設えが徹底的に施されている。
出入り口はにじり口の高さでは低すぎるので、茶室の給仕口をベースにした高さとした。


床面積が非常にタイトなため、限られたスペースでの水回りの使い勝手を検討するのは苦労したという。この客室の水回りはオーナーの自宅に実物大のモックアップ、というより、実動する同じものを施工して検討したそうだ。


ミニマルな客室は正に茶室サイズ。その中でも床の間や床柱、書院を模した洗面台などをしっかり設えた。雪見障子からは枯山水まで眺められる。
照明は客室でも出来るだけ抑えられており、右下の障子越しと、右奥の小さな障子からロウソクのようなささやかな灯りになる。(左上にあるスポットは清掃作業時のみ点灯する)
天高も2.1mとかなり低く、寝室は実質3.5畳程。このサイズの客室もオーナーのオフィスに実物大モックアップを作り、サイズや仕上げを入念に検討した。


障子を開けるとバルコニーが現れる。非日常と日常と、内と外の中間領域をこの奥行きでつくり出している。


11m2の少し広い客室。


統一されたイメージの中で、少しずつ仕上げが異なる。
畳は通常よりかなり小さく、襖や押入も低い。


こちらにはトイレ・シャワールームが備わる。


6階最上階には、露天風呂付きスイート、共用のシャワールーム、予約制の貸し切り露天風呂がある。


貸し切り露天風呂は十和田石の浴槽。3方に開き、スカイツリーを望む。


露天風呂付きスイート。


寝室は広くはないが、シャワールームと露天風呂が付く。


これらの植栽も荻野寿也によるものだ。






ブランディングやグラフィックデザインは北川一成のGRAPHが担当し、その旅館のマークをあしらった浴衣を着る前田圭介さん。「3年以上かけて宿泊施設の種類やコンセプトなどからじっくり検討を進めてきました。その中で浅草ということからも、外国の方々に日本の伝統的な作法や、佇まい、空間などはもちろん、人と人の距離感、サイズ感を感じて貰えることを大事にした、現代的で伝統的なスタイルの旅館を目指しました。」

【茶室ryokan asakusa】
設計・監理:前田圭介/UID
ブランディング(VIデザイン、アートディレクション): GRAPH/北川一成
内装プロデュース: kaland/川村裕文
造園・ランドスケープ: 荻野寿也景観設計
照明デザイン: ぼんぼり光環境計画/角館まさひで
施工:慶成建設
企画開発及び経営主体: レッドテック
運営主体: レッドテック


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14 5月, 2018

大田聡による横浜の複合施設「Tinys Yokohama Hinodecho」

大田聡(office OTA.)による横浜のトレーラーハウスを用いた複合施設「Tinys Yokohama Hinodecho(タイニーズ横浜日ノ出町)」を見学してきました。
動産・タイニーハウスのメディア運営や企画・開発を手がけるYADOKARIと、京浜急行電鉄が連携し、高架下でタイニーハウス(ちいさな家)を活用し展開する複合施設で、カフェ・イベントスペース、ホステル、水上アクティビティステーションからなる。
大田聡さんは、成瀬・猪熊建築設計事務所へ務め、2015年に独立した。

 日ノ出町駅から数分の京浜急行の高架下を利用。

 Y-GSA飯田善彦スタジオと、SALHAUSが協働で手掛けた「日ノ出スタジオ」の隣だ。

高架下左から、水上アクティビティ「Paddlers+」、カフェ・イベントスペース「Tinys Living Hub」、ユースホステル「Tinys Hostel」が並ぶ。

 目の前には大岡川が流れる。水上アクティビティを楽しむ場合はこの桜桟橋からSUP(スタンドアップパドル・サーフィン)などで繰り出すことができる。

高架下に納まるタイニーハウス。

 タイニーハウスは全てトレーラーハウスで、車台に既製の貨物コンテナを載せて造られた。つまりトレーラーハウスが “駐車” されている状態なので、建築物には当たらず建築確認を必要としないのだ。

 Tinys Living Hub(タイニーズリビングハブ)。カフェ&バーであり、イベントスペースで、タイニーズ横浜日ノ出町の中心となり、街に開かれたコミュニケーションスペースとして誰でもご利用できる。

 またトークセッションやワークショップ、マルシェなどユニークなイベントを開催。
5月24日には世界中で展開している「ペチャクチャナイト」の横浜版、「ペチャクチャナイト横浜 vol.10」も開催され、設計者の大田聡さんも登壇し本件についてプレゼンする。
https://www.facebook.com/pkyokohama/

 オフィス兼厨房兼バーカウンターも、コンテナの側面をくり抜いて作られている。

 Tinys Hostel(タニーズホステル)。バーカウンターと同じコンテナの反対側がフロントになっている。

宿泊用のタイニーハウスは3棟(台)で、それぞれ異なるデザインとなっている。1棟につき4人宿泊できる。

 1棟目はウロコ張り。

 20フィートサイズのコンテナは6m×2.4mだが、断熱や仕上げで内寸は2.2m。ドミトリータイプで2段ベッドが2台。
男性だけ、女性だけの4名でシェアするか、仲間や家族だけで1棟を借り切ることもできる。

 反対側にはミニキッチン、トイレ、シャワー。切妻屋根の小屋のような雰囲気だ。

 コンパクトな空間であるため、各棟は両サイドに大きめの開口を設けた。隣も見えるが互いの雰囲気が分かり楽しい。もちろんロールスクリーンも降ろすことができる。

 2棟目は下見張り、3棟目は焼き杉の縦張り。

 こちらは両棟がデッキで繋がっているのでグループで借りると面白そうだ。

 明るくカジュアルな雰囲気と、、


 ダークで落ち着いた雰囲気だ。



左から京浜急行電鉄の小林雄大さん、大田聡さん、YADOKARIの相馬由季さん。
「トレーラーハウスでの宿泊施設は法的なハードルがある一方で、外装材が自由になるといったメリットもあります。木や砂舗装などの素材を多く使用し、樹木を配置することで、高架下の独特な雰囲気を変え、地域にひらけたスペースになるように設計しました。」と大田さん。

【Tinys Yokohama Hinodecho(タイニーズ横浜日ノ出町)】
設計監理:office OTA.
施工:DDD inc.
URL:http://tinys.life/yokohama/


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