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24 10月, 2015

谷口吉生による「ホテルオークラ東京 新本館ロビー」の意匠

建て替えによる解体工事がはじまったホテールオークラ東京の本館は、建て替え後旧本館に息づく「日本の伝統美」を新本館においても体現すべく進めるという旨のリリースが発表されました。

〈リリースより〉
今般の本館建替計画では、最新の設備、機能への刷新を図りつつ、ホテルオークラ東京が育んできた「日本の伝統美」を継承する為に、旧本館を設計した谷口吉郎氏のご子息であり、東京国立博物館法隆寺宝物館等を手がけた谷口吉生氏を設計チームに起用し、旧本館に息づく「日本の伝統美」を新本館においても体現すべく進めております。
ロビーをはじめとした旧本館のインテリア、装飾などにつきましても、可能な限り新本館に移設、再現をすべく、現場調査を重ねながら設計作業を進めてまいりました。今般新本館ロビーの設計・デザインが概ね固まり、また、現場調査の結果、下記のインテリア、装飾を再利用、再製作した上で、継承していく方針になりました。
ホテルオークラ東京の象徴とも称される照明具「オークラ・ランターン」や、満開の花のように見立てた「梅の花のテーブルと椅子」、六大陸各都市の時を刻み世界の賓客をお迎えしてきた「世界時計」、そして「行燈」などを再利用する予定です。また、色絵磁器の人間国宝 富本憲吉氏がデザインし、西陣の純絹のつづら錦に仕上げた「四弁花紋様の装飾」や「麻の葉紋の木組み格子」などは、再利用が出来ない為、再製作する予定です。その他、夢の架け橋というコンセプトで設計された「メザニン」(中二階)や天井のデザインなども新本館に再現する予定です。なお、新本館のロビーの面積は旧本館ロビーよりも二割ほど大きくなる予定です。
2019年の新本館の開業時には、これまで皆様に愛されてまいりました旧本館のデザインが継承されたロビーにて皆様をお迎えいたします。

ホテルオークラ東京新本館の設計者の一人、谷口吉生氏より
 ホテルオークラ東京の建て替え計画も旧本館と同様に設計者が共同で担当する予定です。
私は、ホテルオークラ50年の歴史を継承すると同時に、次の50年、100年も生き続けることができるデザインを目指します。具体的には、ロビーの中に現在の本館ロビーを復元しつつ、現代にふさわしいロビーとして生まれ変わらせます。また、ロビーの前には、ホテル2棟とランドマークとなる大倉集古館によって構成する新しい広場を設計します。

ホテルオークラ東京の歴史について
ホテルオークラ東京は1962年に、東京オリンピックに向けて「西洋の機能性を取り入れていくと同時に、日本の伝統美を生かしたホテル」を目指し、東宮御所、東京国立近代美術館等を手がけられた谷口吉郎氏を設計委員長として建設されました。同ホテルの建築美としては、派手づくりな桃山様式よりも藤原時代の洗練された優雅さを基調とし、装飾については、同じ日本風装飾画の伝統ながら、光琳の豪華絢爛さではなく、光悦、宗達に見られる優美追求の精神を汲んだものにするというコンセプトのもと、伝統的な和の意匠や素材を館内随所にあしらい、その日本的な華麗さや優美さは各界より評価をいただいてまいりました。

新本館ロビーイメージパース

継承される代表的な本館ロビーの意匠、装飾について
【切子玉型】(オークラ・ランターン)
古墳時代の飾り玉に見られる切子玉型をデザインしたもので、五角形の板を10枚つなぎ合わせて切子型とし、五連つなげて一つとしています。ランターンは別館ロビーでも同じように見ることが出来ます。 

 【梅】(テーブルと椅子)

輪島の漆仕上げのテーブルを梅の花の芯、その周りの五つの椅子を花弁に見立てて、満開の梅の花に見えるよう趣向を凝らしました。椅子は花弁をかたどったデザインとしています。

【四弁花紋】(つづれ織りの壁画)
色絵磁器の第一人者で人間国宝の富本憲吉氏がデザインした四弁花紋様を、京都・西陣の龍村美術織物に依頼して純絹のつづれ織りにしたものです。蘭を見事なふくれ織りで、屏風風に仕立てています。蘭は大倉喜七郎が好んだ花でした。

【麻の葉紋】(木組み格子)
二等辺三角形の組み合わせによって作られた四方連続紋様で、単純でありながら極めて巧みな構成紋様です。釘を一本も使わずに組まれた芸術品。館内の随所に麻の葉のデザインが施されています。

【世界時計】
ホテルオークラ東京を設計した谷口吉郎氏が晩年、当時の社長 野田岩次郎所有の古いオランダ製の海図をもとに考案し、丹青社ならびにセイコー(株)服部時計店の協力のもと、当時としては、最新機能と種々の趣向を凝らして製作されました。


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篠崎弘之、五十嵐淳、エマニュエル・ムホーらが参加の「AnyTokyo 2015」

10月24日から東京・増上寺光摂殿で開催されるAnyTokyo 2015のプレスビューに行ってきました。

 恒例の蛍光カラーで演出されたゲート。


今年は屋外会場があるので、エントランスピロティー脇の階段を上がると、、、

 本殿と東京タワー、そしてエマニュエル・ムホー〈1坪の100色〉というシュールな組合せが現れる。


 100色を使ってまちの様々な空間に展開する「100 colors」の最新作は、1坪の小さな空間に凝縮された100色。


茶室のような小さな舞台に上がって思い思いに色を体感できる。

見上げたり、中に顔を埋めれば見たことのない世界を体験できるかも知れない。

エマニュエル・ムホーさん。「今回は色を凝縮しひとつの塊のようですが、一度風が吹けば柔らかく色がなびき、その様子が一変します。」 


 ピロティーと屋内会場には10数組の作品が展開する。



〈7 COOL ARCHITECTS〉
Fritz Hansen(フリッツ・ハンセン)が製造する、アルネ・ヤコブセンの名作「セブンチェア」の60周年を記念したプロジェクトとして、7組の建築家に、座面のデザインは変えずにセブンチェアの新しい解釈を依頼した。その後ヨーロッパを巡回してきた「7 COOL ARCHITECTS展」が、遂に日本にも上陸。
本展示エリアのインスタレーションを篠崎弘之が担当した。

中央〈ザハ・ハディド〉Zaha Hadid
構造とサポートをダイナミックかつシームレスな形で表現。二本のスチール棒で構成された彫刻的なベースは、流れるように地面に達し、成型合板のアイコン的フォルムのシート部を取り囲みむように伸び上がる。

〈五十嵐淳〉Jun Igarashi
地震による建物の倒壊で、多くの建材が廃棄される。今回のセブンチェアのコンセプトは、廃木材を収集、着色し、家具への使用が可能なボードにすること。

〈ジャン・ヌーヴェル〉 Jean Nouvel
対象式な色使いと横並びの配置 - これはジャン・ヌーベルのデザインの好例だといえる。それぞれの椅子は白と黒で区切られていながらも、フェミニンとマスキュリンという流れで調和。この調和は座面とシェルの背面の曲線を強調している。

〈BIG/ビャルケ・インゲルス グループ〉Bjarke Ingels Group
デザインのインスピレーションは、椅子の構成要素。積層合板という内部構造とスタッキングという機能性。これらをふまえ、セブンチェアの象徴的なフォルムを幾重にも巧みに重ねた椅子が誕生した。

〈カルロス・オット&カルロス・ポンセ・デ・レオン〉Carlos Ott & Carlos Ponce de León
コンセプトはテクノロジカルキャンパスであるソナメリカの旗艦ビルCelebra。使用されるレストラン空間に馴染むもの、地階のオープンルーフ壁面に有機的に成長するバーティカルガーデンと同じような存在にする必要があった。

 〈スノヘッタ〉 Snøhetta
このセブンチェアは固定されているように見えながらも、シェルを軽く押すだけで斜面に、屋外に持ち出すことができる。椅子を束縛から解くことで、多くのプロジェクトにおいて使用することができると考えた。


 〈ネリ&フー〉 Neri & Hu
バリエーションやリメイクといったアイデアは、オリジナルと再設計の二重性に左右される。二重性という考えを完全に受け入れ、実際に「ダブル(二重のもの)」を作成。オリジナルのチェア2脚が互いに向き合うことで新しいバージョンの椅子となっている。個人が複数で社会になるように、椅子も一脚から複数になっている。


篠崎弘之さん(右)と五十嵐さんはこの瞬間が初対面。
「今年ミラノサローネで発表した、12mm角のアッシュ材を使って小屋を組み上げたインスタレーションを基本としています。それぞれの作品の特徴を引き出せるような展示にしました。」と篠崎さん。


〈Bipod Table〉 Dai Sugasawa

 〈DIY CAMERA KIT for OLYMPUS AIR〉 
ユウリスズキ + OPC Hack & Make Project


 〈Embodiment of Fractal〉〈Juhi Tile〉〈Woop〉 森田裕之


 〈Scalar Field of Shoes〉 脇田玲


〈wena wrist〉 went project


【AnyTokyo 2015】
会期:2015年10月24日〜11月3日
会場:増上寺光摂殿

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22 10月, 2015

五十嵐久枝による保育園「ファミリア プリスクール」

五十嵐久枝Hisae Igarash / Igarashi Design Studioがインテリアデザインを手掛けた保育園「ファミリア プリスクール」。ベビー用品で知られるファミリアは、戦後間もない1950年に女性達によって、当時の古い日本式育児習慣を大改革しようと、神戸にベビーショップを開いたのが始まりだ。

 ファミリアは新たに保育事業に参入するにあたり、港区白金台に建つオフィスビルを保育園としてコンバージョンした。
プログラムには "レッジョ・エミリア保育" を取り入れ、創造活動を通して自律を促す保育を実践する。


 外観は既存のまま。無機質なカーテンウォールの外観に、温もりのある木の囲いで覆われたベビーカー置き場を設えた。


 エントランスは丸みを帯びたディテールで、子どもたちを優しく包み込んでくれる。


 各クラスルームは年齢発達に合う色と、ファミリアカラーとも調整を加え選定した。
右側、1歳児の部屋はライトブルーで「優しさ・爽やかさ・清潔」がテーマ。
左側、2・3歳児の部屋はオレンジで「快活・情熱・自発」がテーマ。

 両部屋を分ける壁には丸窓が点在し、異年齢の子ども同士のコンタクトが可能になる。


 また壁の一部はマグネットが使用でき、制作物などが煩雑にならないように掲示することができる。



 上部の丸窓は保育者の “目” を増やすこともでき、空間に圧迫感を与えない働きもある。



 4・5歳児の部屋はパープルで「芸術・思いやり・インスピレーション」がテーマ。


 調理室にも丸窓を設えた。自分たちが食べるものが作られる様子を見ることも大切な食育でもあり、作る側と供される側を結ぶツールでもある。


 アトリエはブルーに加え木調を強調し「青空・知性・冷静」がテーマ。
各フロア共にコルクフローリングだが、アトリエでは色をダークにし落ち着きのある空間になっている。



 図書コーナーには切り株をイメージした書架があり、周囲やうろの中に子供達が自然に集まる。


 ライトテーブルを使い表現や創造の幅を広げる園児たち。



 地下の踊り場にはギャラリーを設け、子どもたちの制作物を展示、待合や交流の場になっている。


屋上には人工芝を張り、山型に切り取られたフェンスにより、街中でも自然を感じられるよう工夫した。

「子どものための空間ではありますが、子どもの好みに寄せすぎず、大人にとっても居心地の良い雰囲気をつくりだすことを心掛けました。」
「子どもたちの生活や行動、活動によって、家具のレイアウトや壁面の装飾が変えられ、その表現をやさしく包み込む場となることや、ファミリアの保育とデザインに対する取り組みなど、実直な姿勢を感じとり、成長するためのベースとなる空間をつくりたいと考えました。」と五十嵐久枝さん
(photo: Nacasa & Partners


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21 10月, 2015

「Under 35 Architects exhibition 2015 / 35歳以下の若手建築家による建築の展覧会」レポート

U-35 Under 35 Architects exhibition 2015 | 35歳以下の若手建築家による建築の展覧会(以下 U-35建築展 )のプレスプレビューに行ってきました。

昨年は石上純也が審査員長を努めたU-35建築展。今年は藤本壮介が審査員長を務め、国内外に拠点を持ち幅広い視野を持つ個性的な以下6組の建築家が選抜された。
植村遥、岡田翔太郎、金田泰裕、北村直也、佐藤研也、高濱史子(五十音順)


U-35建築展のオーガナイザーを務める、建築家・平沼孝啓氏。
AAF(アート アンド アーキテクト フェスタ)が主催する、U-35建築展は、2010年に開催が始まり今年で6年目を迎えました。第6回目の開催は大阪中央口前・うめきたシップホールでの開催となり、建築専門の方に限らずより幅広い分野の方たちに開けた展示となりました。本展では、これからの活躍が期待される35歳以下の若手建築家に発表の機会をあたえ、これからの建築の可能性を提示し、多くの人に向けた展示・発表を行うことを目的としています。


基本となる会場構成は、平沼孝啓氏が手がけている。
照明はパナソニックのテスト用のLEDスポットライト、カーテンとカーペットは丹青社、家具はUSM、テスト用の高照度のプロジェクターはキャノン。若手建築家の発表だけではなく各企業が開発中の製品も会場で試されている展示を計画された。


2010年から2015年までの展示の様子と書籍が並べられ、年代を追って見ると、U-30、U-35建築展が若手建築家の登竜門となってきていることが分かる。


【出展者と作品の紹介】

 <マージュ> 植村遥
2年連続選考され今回2度目の展示となった植村氏の展示は、南アフリカのスリナムの首都であるパラマリボに計画されるアルツハイマーケアセンターのコンペ入選案と、南オランダのゼイランドという人工的な島を自然に還そうとするプロジェクト案。


「Alzheimer Hospital」
昨年の展示に引き続き、人間が持つ感覚を形に落とし込んだコンセプチュアルなアプローチが目立っていた。この模型は、アルツハイマーケアセンターのランドスケープのスタディ模型。

アルツハイマー患者の脳細胞からインスピレーションを受けて出来た屋根の形態のスタディ模型。

「shiwa」
オランダ政府が近年に沈める南オランダのゼイランドという人工島にアートプロジェクトとして島自体をモニュメントとして考えるプロジェクト。植村氏は、その歴史をどのように残すかという問いかけから島の住人のポートレイト写真を集め、人間の歴史として刻まれる「皺」を合成して形を起した。引き潮になると姿を現すというランドスケープのコンセプト模型。

審査員長を務めた藤本壮介氏を筆頭に講評に集まったU-35の一世代上 A-40 (Around 40) 建築家たちに展示の説明をする植村遥氏。


<地方都市に描く夢> 岡田翔太郎> 
最年少の出展者である岡田氏は、卒業設計展で日本一となった石川県出身の建築家。展示は、岡田氏の地元である石川県七尾市のお祭りに登場する巨大な山車「でか山」を中心に置いたまちづくりの計画と、実現はしなかったが、自ら七尾市の老舗温泉旅館のオーナーに提案した別館新築設計計画を展示。地方都市をどのように未来へ繋げていくか地元の七尾市を見直しながら岡田が生涯かけておこなうプロジェクトだという。

でか山のまち構想計画具現化に向けたプロジェクトの模型。

金沢駅前に計画された温泉旅館別館新築設計の模型。


<まだ見ぬ建築> 金田泰裕
金田氏は、パリと東京に拠点を持つ構造設計家。構造家がU-35建築展で初めて選考された。構造家がどのように自身の作品を展示をするのか、注目と期待が集まった出展者のひとりである。
構造家の視点から考えられた展示台は、厚さ1.0mm以下のアルミニウムで加工したテーブル。素材のはっとする使い方には驚かされる。テーブル上には構造についての説明、国内プロジェクト、海外プロジェクト、建築家との共作など、金田氏が全て執筆をした書籍が並べられた。

建築家との共作などを事例に建築家が言葉にしきれなかったことを、構造の視点から「建築」を「言葉」という形で表現することを試みている。金田氏が建築家と設計をおこなう際に大切にしているプロセスは、建築家が抱く内的イメージを共有し、それを金田自身で言語化することでプロジェクトの「骨格」つまり「構造」を考えること。設計した建築家自身もまだ経験していない空間「まだ見ぬ建築」を言語化する展示だ。

谷尻誠氏にプロジェクトの説明をする金田泰裕氏。

金田氏が言語化したプロジェクトをまとめた本は、それぞれ数十ページにわたる。

新潟県で開催された「水と土の芸術祭2015」。建築家・金野千恵氏とのプロジェクト「timeber messager - 山から海へ旅するカフェ-」の過程を、模型を用いて展示。移動の度に木材を小さくし、空間も機能も形を変えていく。最終的には小さな丸太となり、燃料となる。金田が構造家として素材に対する想いを提案したプロジェクトとなっている。


<ビッグスケールな建築をつくる> 北村直也
展示のタイトルとなっている「ビッグスケールな建築」とは、建築の大小のスケールではなく、大きなスケールに連続していく建築を意味している。自然環境、風景、時代、に繋がっていくような建築のスケールを感じて欲しいと考え、発泡スチロールの大きなテーブルに余白をあえて多く作って7つのプロジェクトを並べている。この余白からプロジェクトの大きさを超えたスケールを感じてもらいたいと提案された。
模型は全て発泡スチロールに水彩で着色。背景を含めての立体的な絵となる。

「田園の住宅」
今回の6組の展示の中で北村が唯一、実際に建てた建築を展示している。
田園の住宅は、竣工した作品のひとつである。外壁を一筆書きした中にそれぞれの機能を持った空間ボリュームが母屋にくっついたような住宅を提案。


「Hill of Air」
MILAN World Expo Pavilion の計画案。仮設建築物のため骨組みのない柔らかいトランポリンのような空気膜構造を提案。

「都立家政の住宅」
東京都内の住宅街での戸建住宅の計画。角地という敷地を利用して、かまぼこ型のボリュームを道路側に配置し、家の裏に出来る限り広い庭を作ることで、道路からの視界のもう一方の道路へ視界が抜けるようにした。元々オープンスペースだった場所の性質を失わないように、住人のためでも、街のためでもある住宅を提案。

藤本壮介氏、五十嵐太郎氏、倉方俊輔氏らに展示の説明をする北村直也氏。


<断片としての11のテーブル> 佐藤研也
佐藤氏は建築を学び、オランダの建築事務所を経て、2012年よりオランダのアーティスト Arno van der Mark の事務所のパートナーとなり、パブリックアートから建築、ランドスケープ、都市スケールのリサーチまで幅広い活動をしている。現在はアムステルダムと東京を拠点に活動している。

展示は、具体的なプロジェクトを展示しているというよりは、現在、佐藤氏自身が興味を持っている断片的な11つのものを展示。コントロールと偶然性を繰り返して造形されたオブジェは必ずしもひとつの答えを持っているわけではなく、出来たものを見て一度立ち止まって考えるというプロセスを大切にし、その時に最善と思われるものを選択をしていく手法をとっている。

「デジタルトポグラフィー」
約2.5mmの薄い板を張り合わせて作られている18mmの構造用合板の木目をトレースして、ミリングマシンで深度を設定して削り出すと露になる重なっていた部分の木目を更にトレースして削るという、システムと非システム、アナログとデジタルの行き来をし、その繰り返しをすることで出来てくる三次元的な表情を読み取る。ここからランドスケープや住宅などの構想の材料となる。

「考える手」
ものづくりの時に色々なマテリアルを実際に触りながら試行錯誤して自分が何をやったのか素材と対話しながら制作する佐藤の頭の中を垣間みるようなものたちが並べられている。目的を持ってつくったものや目的がなく作ったものをごちゃ混ぜにして展示している。

「オープンスケール」
地図に色のフィールドを重ねてオランダの街の橋の色を決めるひとつの道具として、または住宅の配置図を重ねて壁の色を決めたり、都市のスケールから住宅、プロダクトと自由にスケールを行き来し、また自由に制御が可能な色のフィールドを提案する装置のようなものを考えられた。


<shelf museum @ +ft+ tokyo office> 高濱史子
建築家は自分自身が様々なスケールの人間になって空間を疑似体験することを意識して生きている。日常で目にするものたちの中で 1 / 20 のスケールの人間になったつもりで空間を体験するという行為を建築に携わっていない人たちにも楽しんでもらえるような展示を考えられた。

U-35建築展の展示空間のスケールを自身の事務所で測定してみるとほぼ同じ大きさであることから、事務所をそのまま移設し、事務所で使っている棚を「shelf museum」として、ミュージアムプロジェクトの1 / 20 の模型空間に見立てた展示と、最新プロジェクトをいくつか紹介している。

「shelf museum」

オフィスにあるプリンターやノートパソコン、本などを実測し、スタイロフォームで制作。

「Boutique in Singapore 2015」
シンガポールで進行中のブティックのプロジェクト。香川県出身のメンズファッションデザイナーのブティックの計画。日本的なものをテーマに、抽象化した枯山水を要素として取り入れている。


【U-35 記念シンポジウムの様子】
毎年恒例となった記念シンポジウムでは、若手建築家6組に加え、一世代上のA-40 (Around 40) 建築家達をゲストに熱いトークが繰り広げられました。
ゲスト建築家 : 芦澤竜一、五十嵐淳、石上純也、谷尻誠、平田晃久、平沼孝啓、藤本壮介、吉村靖孝
進行 : 五十嵐太郎、倉方俊輔  


【U-35 Under 35 Architects exhibition 2015 | 35歳以下の若手建築家による建築の展覧会】

会期:2015年10月16日(金)~31日(土) 12:00~20:00 開催期間無休 
            最終日 10/31(土)は17:00最終入場 18:00閉館
入場:¥1,000
会場:グランフロント大阪 うめきた広場 2F うめきたシップホール
   〒530-0011 大阪市北区大深町4-1
詳細:http://u35.aaf.ac/

【関連記事】
● U-35 2014
● U-30 2013
● U-30 2011

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