敷地面積1,782m2、延床面積463m2。木造、一部2階建て。
郊外型の広大な幼稚園の敷地の一画に保育園を新築した。
郊外型の広大な幼稚園の敷地の一画に保育園を新築した。
既存のこばと幼稚園。1971年の開園以来4回ほど増築を重ねながら、園庭を囲むように軒下のある、幼稚園の原風景とも言える佇まいを継承しているものの、所々に無理が見られる。幼稚園や保育園は、園児の増加はもちろん、その時々のニーズやカリキュラム、或いは法律の変更によりそれぞれに適応した増改築がしばしば必要となるためだ。
そして現在は「幼保一体」という時代のニーズに応えるため保育園を新築した。
園へのヒアリングや検討の結果、今後も様々にニーズが変わっていくことが避けられないことから、大きなボリュームの建物を建てず、いくつかのボリュームに分節し、“予測不能な将来” に対してフレキシブルな対応をできるようにした。外観は既存園舎の切妻を継承しながら “家” をイメージし、園児にとって違和感のない親しみの湧く存在を目指した。
今回の計画では保育園として3棟、幼稚園付属の屋内遊戯場と、調理室の2棟の計5棟を建てた。しかし計画中も少しずつニーズが変わり、竣工段階で早くも次なる計画が上がっているという。そのため外構ももう少し計画が固まってから仕上げるそうだ。
保育園エントランス。土間は真砂土で、植栽や水飲み場まであり小さな公園のようだ。19名と少人数の保育園にとって大きなエントランスだが、保護者にとって送り迎え時のストレスフリー化に多いに役立つ。
“公園” の周囲には縁側の雰囲気。内と外を繋ぐ緩衝地帯として働きながら、幼稚園で見られる軒下でのコミュニケーションの場としても機能するのだ。
左には下足入れや、主に保育士が使う多目的室やトイレがあり、上に施設唯一の2階となる事務室がある。
左には下足入れや、主に保育士が使う多目的室やトイレがあり、上に施設唯一の2階となる事務室がある。
植栽はちょうどトップライトの下になるように。
2階事務室。保育中はほとんど人がいないので、必要最低限のシンプルな作りに。
天井の垂木梁はLVLを用いた。
天井の垂木梁はLVLを用いた。
エントランスから右に進むと2歳児保育室のある棟へ。棟同士は短い渡り廊下で接続される。
2歳児保育室。左のロッカーの反対側から保護者が着替えやオムツを入れ替え、保育室側から取り出すことができる。
テーブルはオリジナルデザインで制作。組合せにより様々に変形できる。
エントランスから左側は0・1歳児の保育室、さらに奥は一枚ドアを介して幼稚園付属となり、調理室と屋内遊戯場へ接続する。
この渡り廊下も幼稚園での軒下・渡り廊下という一つのアイデンティティーとして継承した。
この渡り廊下も幼稚園での軒下・渡り廊下という一つのアイデンティティーとして継承した。
渡り廊下はt=10mmのポリカ板段で外の気配を感じることができる。
一見簡易的ともいえる仕上げだが、前述の “予測不能な将来” に対する備えといえる。
一見簡易的ともいえる仕上げだが、前述の “予測不能な将来” に対する備えといえる。
外からはこのように。
0・1歳児の保育室。構成は2歳児保育室と同じ。
保育園の建築では大開口を設けることが多いが、昼寝時にはカーテンで閉める必要があることや、窓に近寄ったときに外が見える、といった視界に緩急をつけるため、また "家っぽさ" を演出するためにもこのようにした。
保育園の建築では大開口を設けることが多いが、昼寝時にはカーテンで閉める必要があることや、窓に近寄ったときに外が見える、といった視界に緩急をつけるため、また "家っぽさ" を演出するためにもこのようにした。
掃き出しの開口からはテラスを介してそのまま外に出られる。
幼稚園付属の屋内遊戯場。この場所には以前屋外プールがあった。夏期にはこの空間にプールが展開できるよう、排水可能なデッキ張りとなっている。
子どもたちが大好きなプール「夏、雨天や気温が低い時にプール遊びをさせてあげられないのが心苦しい。」という理事長の強い思いで、どんなときでもたっぷりと水遊びができるようにと屋内型にした。
そのため片隅には大口径の水栓が備わり、温水も供給できる。
スパン9.1m、高さ7.6mの切妻ボリュームを無柱で実現するために、厚さ50×梁成400を2枚抱き合わせ、金物を挟み込んだ垂木梁とした。(KES構法/株式会社シェルター)
壁は仕上げ用ラーチ合板、天井は構造用ラーチ合板。床は樹脂製デッキ材を選んだ。滑らない・ささくれない・腐らないといった幼児にとっては重要な要素を優先した。
それぞれの垂木梁はタイバーで引っ張り、開きを抑制している。これにより軒桁や壁をコンパクトに保つことができた。
土田拓也さんと、担当の佐久間悠さん。
「将来的に読み切れない変化に対応すべく、意図的に規則性を排除しました。規則性が、予測できない変化の足かせになると考えた上であり、建物のサイズ、平面的な角度、屋根の角度などをバラつかせることで、将来計画されるものがどのようなものであっても、この『バラツキ』が吸収してくれるという逆転の発想です。」
【こばと夢ナーサリー】
建築設計:no.555一級建築士事務所
構造設計:シェルター
施工:高塚建設工業
こばと夢ナーサリー:https://kobato.ed.jp/nursery/
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